宮部みゆき著"おまえさん 上・下"を読みました。
一度で書いてしまいますので長くなります。
記憶力が悪い自分の覚えのために書いておこうというのが
主目的ですので話が前後したり、あるいは間違っていたり、
ねたばれになったりしますがお許しください。
"
ぼんくら"、"
日暮し"のシリーズです。
平四郎、弓之助、おでこ、お徳、政五郎などお馴染みの
人たちにまた会えてうれしいです。
このシリーズの中でこの本が一番わかりやすく、
すらすらと読めます。
上下あって長いのですがいっきに読みました。
新しい登場人物は間島信之輔で平四郎の朋輩です。
定町同心になりたてほやほやの若者です。
本宮源右衛門は間島の遠い親戚で間島は大叔父と
呼んでいます。
源右衛門は親戚をたらい回しにされたあげく今は間島の
家に居候しています。
下巻の最後の方には弓太郎の兄の淳三郎が登場します。
お徳の店の近所で人が斬り殺されました。
病人のような感じの人です。
誰だかわかりません。
お徳の店の近所の八百源のおひでを目当てにしげしげと
店にやってきていた仙太郎がおひでを抱えて暴れ
まわっています。
間島がみごとな十手さばきで取り押さえました。
かゆみ止めの薬の王疹膏がひょうばんになって栄えて
いる生薬屋瓶屋の亭主の新兵衛が家の中で斬り殺されて
いるのが見つかりました。
店の戸締りは中からされています。
間島についてきた源右衛門は前に見つかった被害者と
同じ傷跡で犯人は同じと言い切ります。
瓶屋には十五歳の娘の史乃と後妻の佐多枝がいます。
佐多枝は裏に住んでいた医者栗原の妻でしたが栗原は
酒に酔って川に落ち五年前に溺死しました。
その数ヵ月後に瓶屋新兵衛と再婚しました。
娘は父が佐多枝と結婚したいために栗原を殺したの
ではないかと疑っています。
前に殺されたのは久助とわかりました。
ざくといって薬の調合をする職人でした。
大黒屋藤右衛門は一代前の主人の妹の子供です。
里子に出されて甥とは知らずに店で働いていました。
大黒屋藤右衛門と瓶屋新兵衛と久助は同じ時に大黒屋で
ざくとして働いていたことがあります。
同じざくに吉松がいました。
藤右衛門と新兵衛は吉松に新薬の開発を進めました。
新薬はできました。
吉松は仲間と打ち解けようとはしませんでした。
風呂で会った時に二人にかっとなる言葉を浴びせかけ
ました。二人は湯の中に吉松を沈めました。
ちょうどその場にいた久助に手伝わせました。
吉松は死んでしまいました。
事故死として処理されました。
藤右衛門は大黒屋の跡取りになり新兵衛は瓶屋を起こしました。
王疹膏は吉松が開発した薬です。
新兵衛は欲のため売り出したわけではなくかゆみに苦しんで
いる人達を助けるために売り出しました。
久助は村田という医者の元で何年かざくをしていましたが
辞めて出て行き殺される数ヶ月前にまた医者をたよって
やってきました。
吉松にはつきあっていた女がいて彼女は妊娠していました。
何度も吉松を殺したのはお前たちだろうと押しかけて
きていました。
おでこは政五郎とお紺夫婦の子供のように育てられました。
おでこの本当の母親はおきえといいます。
おでこが5歳の時亭主に死なれ、子供が5人いました。
そのうちのおでこだけをいらないとがんとしてゆずりません。
おでこはそのような経緯で政五郎に引き取られました。
政五郎はおきえと偶然出会います。
空樽問屋玉井屋の主人千蔵の妻に収まって若々しく
幸せそうに暮らしています。
しばらく後におきえが取り乱して政五郎に問題を
持ち込みます。
亭主の千蔵に飽きたからと離縁されそうなのです。
追い出されるという間際の千蔵が病に倒れて問題は
解消しました。
おきえはしっかりした女性で泣き叫んではきましたが
ずっと店の経営方法を学んで今後に備えていました。
政五郎は彼女を見直すことになりました。
おでこを捨てたのはおでこだけが好きだった男の子で
その男が逃げてしまったため、おでこといっしょに
いるのが苦しいというのが理由でした。
弓太郎の家でもごたごたは起きています。
長男が結婚したいという女は父親の妾が産んだ娘です。
もしかしたら異母妹に当たるかもしれません。
弓太郎と長男も喧嘩になっています。
父親の妾と娘が店に乗り込んできたときの様子を見て
長男はいっきに熱がさめてしまいこの件は収まりました。
大黒屋が告白した内容から吉松の女と生まれたかも
しれない息子が復讐をしているのではないかとの
想像されました。
しかしようやく訊ね当てた消息は、二人とも亡くなって
いるのではないかというものでした。
お継という夜鷹が同じ犯人によって斬り殺され川に
投げ込まれました。
間島は瓶屋の娘の史乃が好きになってしまいました。
しげしげと瓶屋に出入りするようになりました。
間島は純情で女性とのつき合いになれていません。
下巻で弓之助が関係者を集めて謎解きをして犯人を
指摘します。
犯人は佐多枝の前の夫の医者の栗原の弟子の松川と
瓶屋の娘の史乃です。
新兵衛は栗原を訊ね自分の罪を打ち明けたことが
あります。
松川はそれを聞いていました。
松川は新兵衛が栗原を殺したと思い込んでいます。
史乃は佐多枝を嫌い、父の過去の罪と栗原殺しを
信じて松川に加担して父親殺しをします。
間島は恋で判断ができなくなり犯人に、真実が
暴かれたとわかってしまう発言をしてしまいます。
史乃は姿を消してしまいます。
間島の失敗は大叔父の源右衛門がかぶってくれます。
間島の母親は源右衛門を邪魔にしていますが家の
対面のために源右衛門が家を出て行くことに反対
していました。
間島の家を出てお徳の家の二階で塾を開きたいと
思っている源右衛門はこの件を幸いに間島家を出ます。
上巻の最初に出てきた仙太郎の話がそのままになって
いましたが下巻では仙太郎を心配する人たちが何人かいます。
同じ長屋の隣の家の丸助、前の長屋でいっしょだった
おていがいつまでもさばきがきまらない仙太郎を
心配しています。
間島は瓶屋に出入りしているうちに今度は佐多枝に
恋してしまいます。
佐多枝は芯はしっかりした人ですが弱々しく見えます。
男たちが寄ってくるタイプの女性です。
佐多枝は見てもらったお医者の村田といい雰囲気に
なっています。
最初は明るかった間島はどんどん暗い雰囲気の男に
なっていきます。
人を見る目がないのでしょうね。
佐多枝と村田の恋でもう一人泣く女がいます。
村田の家の女中のおしんです。
自殺をしかけたところを止められお徳のところへ
引き取られお徳の店で働くことになりました。
仙太郎を早く牢から出すために弓之助の兄淳三郎が
一役買います。
5人の兄弟の中で唯一ふらふらと行く先の見通しが
立ってない遊び人です。
淳三郎は人の心を掴むことがうまい明るい人です。
松川と史乃の隠れ家が見つかります。
松川は抵抗した挙句水死します。
史乃は精神がおかしくなっています。
この時にも淳三郎は活躍します。
一応決着をみました。
仙太郎は長屋へ帰ってきて丸助の仕事を見習っています。
大黒屋の処分は決まっていません。
殺人犯を追うというのが一番の話の幹ですがいろいろな
逸話がその間に挟まります。
捕物の形をした人情話といっていいかもしれません。
読んでいて楽しい本です。
すっきり決着がつかなくてもいいです。
このシリーズは楽しいですね。