大崎梢著"空色の小鳥"を読みました。
西尾木敏也は子供の時に母親が裕福な財界人と結婚したため
連子として豪華な家でくらしました。
しかし義父は養子縁組をしてはくれませんでした。
親戚の者たちからは心無い言葉を浴びせられて育ちました。
母は無理をさせられて彼が高校生の時に亡くなりました。
大学を卒業するまで我慢して暮らしました。
義父の息子の兄雄一は家を出ていた間に結婚するつもりの女性と
娘と暮らしていました。
連れ戻され彼女たちを父に紹介する前に事故死しました。
敏也は彼女たちの存在を知りました。
母親の千秋は末期の病気で数ヶ月の命でした。
敏也は彼女と知り合い面倒をみてやります。
千秋と、娘の結希を養子縁組する手続きをします。
千秋の死後、結希をマンションに引き取ります。
義父が孫の存在を知れば喜んで引き取ることをわかっていて
敏也は内緒で子供の面倒を見始めます。
彼のマンションはいくつも部屋があり、高校の同級生で同性愛者の
汐野や付き合っていた美容師の亜沙子が居ついてしまいます。
小学校に入学したばかりの子供は手こずるばかりですが彼らの
手助けもあって暮らしています。
義父の紹介で入った会社ですが少しずつ存在を認められています。
定時に帰り学童保育により結希を引き取り食事の支度をすると
真面目に取り組んでいます。
しかし敏也には遠大な計画があるのです。
つらく当たってきた親戚を見返し義父の財産を手にしようという
計画です。
さてこの計画はうまくいくのでしょうか。
敏也の暗い計画と真剣に子育てしている部分がかけ離れていて
一人の人間の中でどうやって折り合いをつけて生きていけるのか
わかりません。
人のものをあてにする生き方は却ってつらいのではないのかと
私は思うのですが、必死に奪い取るだけの価値はあるものなの
でしょうか。
自分の力で生きればそれでいいではないですか。
敏也の共同生活の部分は小路幸也さんの小説を思い起こされます。