雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

嵯峨野花譜

2018-10-31 11:24:39 | 
著者 : 葉室麟
文藝春秋
発売日 : 2017-07-13

葉室麟著"嵯峨野花譜"を読みました。
少年の胤舜は大覚寺で花務職をしている不濁斎の
弟子として花を活けています。
三人の兄弟子たちも胤舜の花を生ける能力に一目
おいています。
胤舜は2年前母に去られ大覚寺の僧となりました。
母は老中となった水野忠邦の側室となり
胤舜をもうけました。
しかし忠邦は二人を捨てました。
老中となった忠邦は母の萩尾だけを身近に
呼び寄せました。
彼は胤舜を息子として扱おうとはしません。

胤舜は様々な人に頼まれ花を活けます。
昔のことを忘れる花を活けて欲しいと願った
女性は胸を病んでいました。

仲の良かった姉弟の弟は亡くなりました。
亡くなった弟を見つける花を活けて欲しいと
姉から依頼がありました。

公家の21歳と17歳の姉妹から花くらべを
するよう頼まれます。
花を活け和歌を添えなけれいけません。
胤舜が忠邦の息子であることを利用しようと
している者が現れるかもしれないと忠邦は
危惧しています。

さらわれた胤舜は暗闇で花を活けるよう
強要されました。

まもなく亡くなられる人を慰める花を活ける
よう頼まれました。
房野という八十を超える老女は彼の活ける花を
何度も切ってしまいます。

西行法師の桜を活けよと師匠に命じられました。
胤舜が花材を求めて野山へ行くときいつも寺男の
源助が供についてきてくれます。
胤舜と源助との間には古い因縁があることが
わかります。

忠邦が胤舜の前に姿を現します。
忠邦は病気となり姿を消した母の萩野を探して
います。

公家の押山路雅秀と出会います。
彼の父は謀反の疑いで忠邦に死罪にされました。
実際は雅秀が禁断の本を読んでいたことを
庇ってのことです。
雅秀は辛さを胤舜に向けます。

胤舜の母の萩尾が連れ去られました。
京都所司代の資始の仕業です。

助け出された萩尾は大覚寺に引き取られました。
危篤状態の萩尾です。

花を活ける修行をしている胤舜と母と父を
巡って起きる出来事です。
胤舜はこれからの人生を穏やかに生きられる
のでしょうか。

三鬼 三島屋変調百物語 四之続

2018-10-27 21:00:00 | 

宮部みゆき著"三鬼 三島屋変調百物語 四之続"を
読みました。
三島屋の主人の姪のおちかは黒白の間で語り手を
招き不思議な話を聞きます。

"迷いの旅籠"
十二、三の女の子が語り手として来ました。
小作人の娘です。
毎年あかりの森に祭られている田圃の神様の
あかり様を起こすため行灯祭りを盛大に
行っています。
今年はお殿様の子供が病気で亡くなったため
中止にするよう命令されました。
しかし行灯祭りは農業を行う者にとってどうしても
中止できないものです。
あかりの森にある廃屋の障子に絵を描いて、家が
大きな行灯のように見えるようにしようと村に
来ていた灯庵が提案しました。
それが実現された時、恐ろしいことが起きました。

"食客ひだる神"
だるま屋の弁当はとてもおいしいです。
しかしだるま屋は夏は店を閉めています。
だるま屋の主の房五郎が話し手としてきました。
房五郎は煮売屋を女房とやっていました。
母親が病気だとの知らせで故郷へ帰りました。
江戸へ戻る途中でひだる神に取りつかれました。
ひだる神は空腹で行き倒れて死んだ者の霊で
取りつかれるとお腹が空いて歩けなくなります。
ひだる神の文も食事を取れば治ります。
ひだる神に助けられ弁当屋にして成功しました。

"三鬼"
改易となった栗山藩の元江戸家老の村井清左衛門が
話し手としてやってきました。
藩は貧しく、きちんとして政治が行われなかったため
貧しさから抜けられませんでした。
妹の志津がさらわれ辱めを受けました。
清左衛門は犯人の三人を道場で打ちのめしました。
その罪で三年間の山奉行を言いつかりました。
須賀利三郎という者も同じ時に山奉行として山に
送られました。
上村、下村に別れたそれぞれ十世帯ばかりの所です。
厳しい生活を送っていました。
子供、年寄、病人はいません。
村にはあまりの貧しさゆえの秘密がありました。

"おくらさま"
古めかしい振袖を来た女性がやってきました。
若い女性ではなく老女でした。
梅という老女は若かったころの話を始めます。
備仙屋という香具屋の三人姉妹の末娘でした。
蔵には店を守るおくらさまがついていました。
姉妹はおくらさまに毎日お香を焚いていました。
火事が起きた時、周りの家は焼けても備仙屋は
守られました。
おくらさまが交代する時です。
次女のお菊がおくらさまとなりました。
お梅はおくらさまに守られてはいなかった、騙され
祟られていたのだと叫び消えました。
お梅は生霊ではなかったのかと、おちかや従兄の
富次郎、貸本屋の勘一らは備仙堂について
調べまわりました。

不思議な出来事を聞き取るおちかの話の4冊目です。
妖の世界ですがこわさはありません。

琴乃木山荘の不思議事件簿

2018-10-26 13:05:07 | 

大倉崇裕著"琴乃木山荘の不思議事件簿"を読みました。
棚木絵里は龍頭岳山頂近くの山小屋琴乃木荘で
アルバイトで働いています。
山で起こる不思議な出来事を描いた7編です。

"彷徨う幽霊と消えた登山者"
3日間毎日同じ人が山に登ってきているのに
気がつきました。
ザックの大きさが日によって違っています。

"雪の密室と不思議な遭難者"
冬の間は使っていない離れに灯りが見えます。
行ってみると熱を出して倒れている男がいました。
離れには鍵が掛っています。
男は何日も離れにいたようです。

"駐車場の不思議とアリバイ証明"
大樂小屋、第二大樂小屋が竜頭岳登山に利用されて
きました。
第二大樂小屋は廃業になりました。
1年前第二大樂小屋の前に車を止めて登山をし
戻ってみると車が止めた場所と別の所に駐車
していました。

"三つの指導標とプロポーズ"
琴乃木山荘で待ち合わせて彼女にプロポーズを
しようと思っていた男性がぼんやり座っていました。
行き先を標す指導標がいたずらされることが
数年続いています。

"石飛匠と七年前の失踪者"
七年前に嶺雲岳へ登った四人のうちの一人の河内が
忽然と姿を消しました。
河内と山荘で働いている石飛との筆跡や外見が
似ているのに気がついた山荘のオーナーは
残った三人を呼びました。

"竜頭岳と消えた看板"
山岳ガイド兼カメラマンの阿芸が山を止めると
決めました。
いっしょに登っていた弟が亡くなり山に登る
気持ちをなくしました。
琴乃木荘で阿芸を囲んで酒を酌み交わしていました。
翌朝琴乃木山荘に掲げてあった重い看板がなくなって
いました。
竜頭岳の山頂に看板が置いてあることが知らされ
ました。

"棚木絵里と琴之木山荘"
絵里は以前小さな出版社の編集者をしていました。
二年前に編集長の里水が事故で亡くなり会社は
閉じられました。
亡くなる前に里水は絵里に暗号をメールで
送ってきました。
絵里には解けていません。
里水の夫の江島に理恵は編集者としていっしょに
働かないかと打診されています。

山の話は好きです。
事件を解く中心となる石飛がいいですね。
最初の話を読んで、なぜ山荘に頼まないのだろうと
思いました。
嫌だと断られることはないと思うのだけど。
死者がある話もあるけど、すらすらと楽に
読み進められます。

ドクター・デスの遺産

2018-10-16 21:00:00 | 

中山七里著"ドクター・デスの遺産"を読みました。
小学生の馬籠大地から110番へ電話がありました。
お医者さんが来て、お父さんを殺した、という
ものでした。
犬飼刑事が調査にあたることになりました。
父親は末期の病気でした。
経済的にも困窮していました。
大地は知らないお医者さんが来て、その後いつもの
お医者さんが来たと言っています。
麻酔剤のチオペンタールを注射した後に塩化カリウムを
注射して安らかな死を迎えさせたもののようです。
インターネット上に「ドクター・デス」というサイトが
あり死を迎えさせたい人を募集していました。
費用は二十万円という安さで引き受けています。

化学工場の火災で意識不明になった人が死にました。
しかしこの事件は他のものとはちょっと様子が違います。

心筋症の青年が亡くなっています。
ドクター・デスの関与が疑われます。

ドクター・デスは特徴のない人です。
会った人も記憶に残っていません。
医師は看護師を伴って家を訪ねてきていたことが
わかってきました。

治る見込みのない病気で非常に苦しんでいる人に
安楽死を認めてもいいものかどうかがテーマと
なっています。
自分自身は辛い状態になったら安楽死を選べたらと
思います。
しかし法律で認められたら怖い事が起こることが
予想されます。
無理やり死に追いやられる人が出てくることでしょう。
難しい問題ですね。

黄昏の囁き

2018-10-15 21:00:00 | 

綾辻行人著"黄昏の囁き"を読みました。
兄の伸一が死んだとの知らせを受けて翔二は
家に帰りました。
伸一はマンションから落ちました。
両親は事故死といいますが、他殺ではと疑います。
元予備校講師の占部と出会い調べ始めます。
「おじぞうさんがわらった」「これあげるから」
という声が聞こえます。
榎田、一ノ瀬、畑中という幼かったころの伸一の
友人に出会いました。
幼いころ翔二はみんなについて歩いていました。
年齢が下なので仲間に入れてもらえず皆が
遊ぶのを側で見ていました。

次々と伸一の友人が殺されていきます。
幼かったころに何かがあったようです。
そのころの記憶の断片がふっと頭に浮かびます。

面白く読みました。
ただ冷静になってみれば、腑に落ちない話だなと
感じます。
小さな子供たちのとった行動は仕方ないことですし、
非難されることではないと思います。
それをずっと重荷に感じで生きてきたというのは
かわいそうなことです。
犯人の行動こそ理不尽です。
これは精神を病んでいるのでしょうね。

木曜日にはココアを

2018-10-14 14:07:05 | 


青山美智子著"木曜日にはココアを"を読みました。
題名から喫茶店での話なのかなと思いましたが
違いました。
最初は喫茶店の話から始まります。
12話あるのですが、次の話は前の話に登場していた
人の話という風につながっていきます。

マーブル・カフェに木曜日の午後3時に来る女性は
決まってココアを頼みます。
そして外国語で手紙を書いています。
カフェのオーナーのマスターは求人募集の張り紙を
見て応募してきた店員に店を任せてほとんと
姿をみせません。

夫が主夫をしてくれている女性は家事ができません。
でも夫が展覧会に出品して数日家を離れます。
幼稚園の息子のお弁当をつくらなくてはいけなく
なります。

幼稚園のえな先生はネイルを落とすのを忘れて
出勤しました。
園児が褒めてくれました。

三十半ばの高校時代の友人の二人は理沙の結婚を
間近にひかえて会いました。
結婚の予定のない片方は複雑です。

理沙はひろゆきと新婚旅行でシドニーに行きました。
老夫婦といっしょになりました。

結婚したいと思っていた人に振られた時に進一郎に
求婚され結婚しました。
地味な進一郎と50年幸せに暮らしてきました。

緑の絵を描いてきました。
家族に理解されませんでした。
ワーキングホリデーでシドニーに来ました。

ラルフは銀行勤めをやめサンドイッチ屋さんを始めました。
シンディに何色が好きと聞かれオレンジと答えました。
シンディはいなくなってしまいました。
ラルフは店のカラーをオレンジにしました。

魔女だと思っていた先生がいます。
先生に導かれて植物からアロマセラピーへと興味が
広がりました。

子供のころから翻訳家になりたいと思ってきました。
海外の姉妹校の生徒と文通することになりました。
グレイスとの交流は大人になっても続きました。

マコはシドニーのメアリーの家にでホームステイ
しました。
メアリーは心臓に病気を持っています。

カフェで毎週ココアを飲む女性のラブレターです。

こういう感じの日常を描いた話って、中に入り
込めなくて冷めた目で読むことが多いのですが、
この本はさらっとした話で暖かな気分で読めました。

隣の女性社長

2018-10-11 21:00:00 | 昔話
昨日昔のこと書いていて思い出したことを
書きます。
これも前に書いたような気がします。
また書いてると思って読んでください。

昔勤めていたIT企業は運河沿いに建っていた
2階建ての建物でした。
右半分が私の勤めていた会社で左半分が大家さんの
事務所兼住まいでした。
大家さんは学生の娘さんと住んでいて、そこで
一人で事業をしていました。
隣同士で、階段を共有していましたから交流が
ありました。
60代ぐらいの女性です。
娘さんのお古かと思われる汚れたスポーツウェアを
着て、短くなった煙草を咥え、腰にラジオを
ぶら下げて歩いているのをよく見かけました。
豪快なおばさんです。
きっとお客さんにしてみれば頼りになる人だった
ことでしょう。

当時我々の会社ではキャプテンシステムに
関連する仕事に関わっていました。
今のインターネットのように双方向を目指した
システムです。
インターネットがあれよあれよと台頭してきて
キャプテンはいつの間にか消えました。
お隣の女性がキャプテンに加入していました。
私の会社の誰かに話を聞いたのだと思います。
ほとんど役に立たない仕組みでした。
かなりの費用を毎月払わなければいけません。
私はもったいない、よく加入しようと思ったなぁと
思いました。
彼女は煙草を咥えて、これを使ってみてユーザに
定期的に送っているお知らせにその感想を書いて
知らせるのだと語っていました。
目から鱗が落ちた気がしました。
そうか、こういうなんでもやってみようとする人が
世の中を進ませる力になるのかと思いました。

同僚の中には、ソフトやハードは発売されて
使い込まれバグがだいたい取れてから買うと
言っていた者がいます。
大部分の人がそうなのかもしれません。
彼女を見ていて何かを買って、それが完璧で
なくてもがっかりする必要はないのだと思う
ようになりました。
まったく役に立たなかった品物だったとしても
買ったということは何らかの役目を果たしたのだと
思えるようになりました。

BGMを聞きながら

2018-10-10 10:48:21 | 昔話
BGMに何かかけたいなと選んだCDは小田正和さんの
ものでした。
そのうちに曲がかかっていることを忘れました。
ふと昔のことを思い出しました。
社員数人だったIT企業に数年勤めていました。
ルールは何もなく何やってもいいという所でした。
当然仕事中に音楽を聞いても文句は言われません。
私が聞いていたのは小田さんのものでした。
エンドレスで流していました。
音がしていることをそのうちに忘れてしまうからです。
小田さん以外のものではこうはいかないです。
それなら何も聞かなければいいだろうということ
なんですが、まったくその通りです。

めちゃくちゃな会社でした。
そこに籍を置いていた当時は辛かったのですが
後から何てはちゃめちゃな所だったのだろうと
思い出すことが多いです。
数人の事務所ですから、一応責任者だった人に
所長だとかの役職名はありませんでした。
休暇を取りたければ何日でも何ヶ月でも取っていいと
言われていました。
時間は昼ごろ出てきて夜遅く帰るという人たちも
いましたけど、みんな真面目に出てきていました。
ところが責任者だった人物が連絡もなしに一週間
ぐらい会社に出てきません。
連絡がつかなくて、死んでるんではないかと部屋を
見てこようかというころになってふらっと現れました。
こんなことを数回しました。
一言連絡すればいいものを、何考えていたんだか。
こんな所でしたが悪事に加担しているということは
ないようでした。
当時いっしょだった人たちがその後どう生きたのだろうと
思うことがあります。

小田さんの曲を聞きながら昔を思い出しました。
前にも書いたかな? 時々ふと思い出すので。