そもそも人々の境遇には順あり、逆あり、富貴あり、貧賤あり、
而してすべての境遇は而して偶然のものではありません。
「必然」なのです。
必ずや依って来る真理があるのです。
これを「不昧因果(ふまいいんが)」といいます。
この因あればこの果あり、この果は必ずこの因によるのです。
故に偉人は境遇に安住して順逆に心を苦しめないでいられる
のです。
直ちに境遇によって因果を證明し、真理を説法する者として
常に綽綽として余裕があるのです。
おシャカ様にも悩みがあったのです。
提婆にほとんど殺されようとしたことがあったのです。
九十日間馬と生活を共にしたことがあったのです。
史実に拠れば、おシャカ様は八十歳で亡くなられましたが
おシャカ様の亡くなられたことを「涅槃(ねはん)」といいます。
「涅槃」とは「円寂(えんじゃく)」といい、大成功という意味です。
おシャカ様は「死」によってこれを「證明」しました。
死すべきに死ぬということは「大成功」なのです。
おシャカ様は二月十五日、即ち花盛りに亡くなられましたが、
これによって「大成功」を私たち衆生に「證明」してくれた
のです。
古人は「仏祖の生死を見るは春の百花に於けるが如し」
といっています。
だから「涅槃」なのです。