鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1431~廃墟に乞う

2017-10-20 12:15:21 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、佐々木譲です。

佐々木譲の作品を初めて読みました。
「廃墟に乞う」
毎月行く地区センターで貸し出ししていました。
待ち時間に何冊かに目を通していたら、直木賞受賞作、短編連作集というのが目に入りました。
芥川賞受賞作は高尚過ぎて理解に苦しむ作品が多いですが、直木賞受賞作はこれまで肌にしっくり来る作品ばかり。
しかも北海道が舞台という楽しみもありました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
北海道警察捜査一課仙道孝司。
現在、休職中
警察小説の持つ魅力に満ちた、直木賞受賞作!
道警の敏腕刑事だった仙道孝司は、「ある事件」をきっかけに療養中の身。
だが回復途上の仙道に、次々とやっかいな相談事が舞い込み……。
警察手帳も持たず、拳銃も持てない仙道がどのような捜査をするのか?
=====

「オージー好みの村」
オージーってオーストラリア人のことですって!
とするとオージー好みの村は、ニセコのこと。
全国一地価高騰する町。
オーストラリア人がたくさん住む町。
同じ北海道に住みながらも、景気が良い町というイメージくらいしか持っていませんでした。
地元ではオーストラリア人たちとの軋轢がいろいろあるのですね。
勉強になりました。
ちなみに小説の方もなかなか面白く読みました。
簡単な聞き取り調査から推理をめぐらし、地元警察に動機を含め真犯人を匂わせて帰る辺りが実にスマート。
判り切った結末を最後まできっちり書くのは味ない、味ない、といったところでしょう。

「廃墟に乞う」
夕張の西、栗山町に併合された架空の旧炭鉱町が舞台。
親の愛に恵まれなかった男は、殺人を繰り返します。
そして封じ込めた悲しすぎる記憶が蘇った時、生きていてはいけないことを悟ります。
犯人の生い立ちを知った読者もつらい、そういう物語。

「兄の想い」
閉ざされた町の漁船の組同士の諍いが、悲劇を生みます。
家族の想いが交錯する悲しい物語でした。

「消えた娘」
たぶんあの辺りに遺体があるよ。
それ以上は切り込めない。
神経を病み休職中の主人公が関わってはいけなかった残忍な事件でした。
彼の職場復帰はこれでまた延びてしまいました。

「博労沢の殺人」
日高の牧場を舞台にした作品を書きたかったのでしょうが、深みのない作品で残念。

「復帰する朝」
仙道を休職に追い込んだ事件が明るみになります。
また帯広での事件も意外な結末を迎えます。
ラストを飾る見事な作品でした。

本書は十分に練られた作品が多かったのに、カスタマーレビューを読むと本書の評価はそれほど高くありませんでした。
それだけ他の作品のレベルが高い、ということでしょう。
他も読んでみたくなりました。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする