鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1424~みをつくし⑤

2017-10-04 12:23:01 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、みをつくし⑤です。

「みをつくし料理帖」第5巻は「小夜しぐれ」です。

内容紹介を引用します。
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季節が春から夏へと移ろい始める如月のある日。
日本橋伊勢屋の美緒がつる家を訪れ、澪の顔を見るなり泣き始めた。
美緒の話によると、伊勢屋の主・九兵衛が美緒に婿をとらせるために縁談を進めているというのだ。それは、美緒が恋心を寄せる医師、源斉との縁談ではないらしい。
果たして、美緒の縁談の相手とは!?――(第三話『小夜しぐれ』)。
表題作の他、つる家の主・種市と亡き娘おつるの過去が明かされる『迷い蟹』、『夢宵桜』、『嘉祥』の全四話を収録。
恋の行方も大きな展開を見せる、書き下ろし大好評シリーズ第五弾!!
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種市とおつるの過去は悲しい。
作者はおつるを「迷い蟹」に例えていますが、彼女は決して迷った訳ではありません。
その優しさと素直さゆえ、不幸な目にあっただけなのです。
「迷い蟹」に例えては、おつるが可哀そうすぎます。
おつるを売りとばした男が、一度は奈落の底に落ちたにもかかわらず這い上がり、子を思いやる親になっていたことに、運命の皮肉を感じました。

「夢宵桜」では、あさひ太夫を苦界から救い出す手だてが、具体案として澪に示されます。
種市への恩義と、あさひ太夫救出への思い、その狭間で悩む澪。
道はひとつ。
判っていても悩みます。
誰もが人生でそうした選択を迫られます。
頑張れ、澪。
応援する事しかできませんが、そうせずにはいられません。

この巻では、わがままお嬢様の美緒が父の進める縁談を受け入れるまでを描いています。
好きでもない男のもとへ嫁ぐことを決意するまでの女心の動き、その微妙さは女流作家にしか表現できないでしょう。
読みながらナルホドと思いましたが、読み終わって振り返ると、あれ、どういう流れでそうなったのだっただろう?と思い出せません。
それだけ男性の理解を超えた、女性ならではの細やかな心の動きがあったのでしょう。

そしてこの巻ではもうひとつ、芳の息子・佐平衛の無事が確認されたことも良いニュースでした。

「嘉祥」は、小野寺数馬が主人公。
その妹・早帆が、自身の恋のキューピットになってくれた兄の想い人が澪であることを知り、二人が結ばれるように画策しようと思い立つところで終わります。
二人の身分が違い過ぎるため、先の困難が予想され、展開が楽しみでもあり、不安でもあります。

この巻では、先々ストーリーがいろいろな方向に展開していくことを匂わす「種」がたくさん蒔かれました。

このシリーズは全10巻。
次は折り返しの第6巻。
ますます目が離せません。
どうか種市やあさひ太夫、澪が幸せになりますようにと願います。

コメント
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