猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

23年の沈黙

2020-10-01 22:37:28 | 日記
2010年のドイツ映画「23年の沈黙」。

とある田舎町で13歳の少女が失踪し、麦畑で自転車だけが見つかった。その場所
では23年前の同じ日にも、自転車に乗った11歳の少女が強姦・殺害されており、
犯人は未だ謎のままだった。当時事件を担当していた元刑事クリシャン(ブルク
ハルト・クラウスナー)は、同一人物による犯行だと考えて捜査に乗り出す。一方、
23年前に少女の殺害現場に居合わせながら何もすることのできなかったティモ(
ヴォータン・ヴィルケ・メーリング)は、逃げるように町を離れて名前を変え、現
在は幸せな家庭を築いていた。今回の事件を知り衝撃を受けた彼は、吸い寄せら
れるように町に舞い戻る。

サスペンス・ミステリー映画だが、最初から犯人はわかっているので、23年前の
事件や今回の事件に関わった加害者や刑事たちや被害者遺族たちの心情を描いた
群像劇というか人間ドラマみたいな感じ。建築関係の仕事をし、妻と子供たちと
幸せに暮らしているティモは、実は23年前の少女殺人事件に関わっていた。友人
ペア(ウルリク・トムセン)が少女を強姦、殺害するのを側で見ていながら止めら
れなかったのだ。彼らは小児性愛の性癖でつながっていた。事件は未解決だった
が、罪の意識に苛まれたティモは町を離れ、名前を変えて生活していた。そこへ
23年前と同様の事件が起き、ティモはショックを受ける。
冒頭の11歳の少女の暴行シーンがとても生々しく、胸が悪くなる。いろんな犯罪
があるけれど、子供に対する暴行というのは1番悪質で許し難い気がする。元刑
事クリシャンは23年前の被害者の母親の元を訪ねるが、彼女の中では当たり前だ
がまだ事件は終わっていない。娘の部屋はそのままだ。気丈に見える母親の深い
悲しみが伝わってくる。そして今回行方不明になった少女の両親も半狂乱になっ
ていた。生きているのかもわからない。娘からの留守番電話が最後になってしま
ったのはとても痛ましい。
クリシャンは事件の背景を「犯人の孤独」だと推測する。犯行は何らかのメッセ
ージであると。実際それはペアからティモへのメッセージだった。でも何故23年
後に同様の殺人を犯してまでペアがティモに会いたかったのかよくわからなかっ
た。そこまで孤独だったのか。家庭を持っているティモと違ってペアはずっと1
人暮らしで、部屋にはたくさんのロリコンDVDなどがある。主犯のペアが罪に向
き合っておらず、共犯(傍観者)のティモがずっと罪の意識を抱えて生きてきたと
いう対比は興味深いものがあった。
ラストは賛否分かれるところだろう。もやっとする人も多いと思う。映画を観て
いる側だけが真相を知っているのだ。そしてどこの国にもあるのだなあと思った
のが、警察の無能さ。せっかく若い刑事が一生懸命推理し、真実に辿り着きかけ
たのに、「23年も前の子供の証言なんかあてになるか」と一蹴してしまう上司。
事件を終わらせてしまいたくて仕方ないのだ。何とも言い難い悲しいラストだが、
私はとてもおもしろかった。DVDのパッケージの写真が印象的だ。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする