気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

関係について 生沼義朗

2012-07-09 20:49:04 | つれづれ
日本人は刻苦勉励をこのむゆえ最終回にクララは歩く

地上にて有象無象のうごくさま神にあらねば二階より見つ

似たような顔の並びし大部屋に大和民族おしなべて鬱

隣室で水使う音が漏れている生活感といえばそれだけ

いかにして<われ>は自分を脱ぎゆくか、外では水が貪婪に匂う

おのずから出でにし水をきっかけとして室温に苦瓜(ゴーヤ)は腐る

  地図
中国の地図には常に中国が中心になり、つまり中国

コタツにミカン的に収まる私生活なれば冬陽はかくまで淡し

仕事にて訪う品川南端はさしずめ業務用の東京

辛い一生(ひとよ)と楽しい生活(たつき)の間には人間関係というものがある

ドラマにて追いつめられし犯人はおおかた水辺に自白をなせり

ゴミ箱よりイチゴ香料の香は立ちて夜の空間の輪郭は濃し

(生沼義朗 関係について 北冬社)

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短歌人同人の生沼義朗(おいぬま・よしあき)の第二歌集『関係について』を読む。
装丁は薄い灰色の壁を思わせる。紙が白く眩しく上質な感じがする。万事、都会的な洗練されたものを目指しているのが、読者に伝わる。
後記で、作者は「自分は書くことでしか前に進めない人間だ」という。
ここに挙げた歌は、ほんの一部、ぜひ歌集を買って読んでいただきたい。

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