気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ひよんの実 足立晶子

2012-07-11 01:09:11 | つれづれ
大いなる赤梨の辺にひつそりと二十世紀が覗いてゐるよ

すんすんと青田に鷺をばらまいて天地無用の今日の青空

ドア開けてまたドア開けてゆつくりと五月の闇に入りてゆきぬ

六月の風にふくらむブラウスの中のからだがふふふと笑ふ

秋は今ここと示せり予報士は列島をあやつる人のごとくに

レタス箱にをさなご積んで自転車は星かなにかを零してゆけり

青空にひよんの実吹いて遠い日の風の中へ中へ行くなり

うすずみ色のひよんの実吹けばわが身よりへうへうへうと抜けてゆくもの

鍵の鈴聞こえなかつたり聞こえたりポケットのなか粉雪がふる

「浜辺の歌」つたなく吹けるリコーダー昭和はいつかあんな遠くに

(足立晶子 ひよんの実 ながらみ書房)

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心の花所属、鱧と水仙同人の足立晶子の第四歌集『ひよんの実』を読む。
あとがきによれば、ひょんの実は、イスノキの葉にできる虫こぶのことです。とある。語感が、飄々、瓢箪などを思わせ、なんとなく愉快。
集中に「意識不明の母がICUに居てわれは竹の春を見てゐる」といったお母さまの看取りの歌もあるが、全体にのんびりしたおかしみが感じられる。口語と文語の混じり、字足らずの歌もある。作者のチャレンジなのだろう。

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