気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

水に響かふ 和田沙都子 ながらみ書房

2021-09-02 12:27:29 | つれづれ
しあはせは推敲を待つ歌があり窓辺の座席にひろげゐるとき

いつの世に笛を置き来し笛方かわが家に来たりて小枝(さえだ)の笛吹く

みすずかる信濃の国は十州と歌へばひとつこゑなりし父母

「詩とは」西脇順三郎先生言はれけり「床屋の鏡のまへに坐つてゐる牛」

 蒔田さくら子さん
「ひとへまぶたの歌人の会をつくる」といふ 酔ひが醒めてもわすれざらめや

黄金虫の手足をとれば柿の種 ベトナム戦争とほくありたり

「おとなになつたら馬に乗るの」と言ひ終へて子供は深い寝息のなかへ

しやぼんだま売りが来ればをさなと手をつなぎついてゆきたし秋の陽ざかり

まぎれもなき三密の世界インドゆく『深夜特急』に幾夜をなぐさむ

珈琲館のしきりのなかに分かちあふホットケーキの身に沁む美味しさ

(和田沙都子 水に響かふ ながらみ書房)

***********************************

短歌人の先輩、和田沙都子さんの第二歌集。人は歳を重ねて、子供のころの好奇心や純粋さを忘れてしまうものだが、和田さんは決して忘れない。海外旅行の歌が多いが、インドなど行きにくい場所を何度も訪れることに驚かされる。
2004年に短歌人全国集会で訪ねた台湾へその後も行って現地の方との友情を深めてられる。亡くなった中地俊夫さん田上起一郎さん田村よしてるさんとの交流の歌も味わい深い。

最新の画像もっと見る