現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

ミラノの奇跡

2024-05-10 09:49:44 | 映画

 1951年公開のイタリア映画です。

 第4回カンヌ映画祭でパルムドールを受賞しています。

 ウ゛ィットリオ・デ・シーカ監督らしい、庶民への愛情があふれたファンタジックな映画です。

 赤ちゃんの時に、おばあさん(トトはママと呼んでいます)に拾われて愛情豊かに育てられた捨て子のトトが主役です。

 ママが死んでからは、孤児院で育てられました。

 お話は、トトが大きくなって、孤児院を出るときから動き出します。

 トトは、これ以上ないほどのお人よしで、常にポジティブです。

 そのため、いつのまにか、私有地に掘っ立て小屋を建てて住み着いている貧乏人たちのリーダーになっています。

 その私有地から石油が出たことから、持ち主の大金持ちに退去を迫られます。

 立ち退きを迫る大金持ちの私兵たちとのユーモラスな攻防戦が始まります。

 その過程で、トトは天国から抜け出してきたママからなんでも願いの叶う白い鳩を授かります。

 それからは、トトが起こす奇跡の大安売りで大混乱が起こります。

 貧乏人たちの願いは、たいていは毛皮とかドレスとか家具(小さな掘っ立て小屋には入らないのがおかしいです)やお金などの他愛のないものですが、中には身につまされるものもあります。

 黒人の男性は好きな白人女性のために白くなることを希望しますが、彼女が逆に黒くなることを希望したために、思いはすれ違ってしまいます(当時は黒人と白人の男女が結ばれることは難しかったのでしょう。この映画より後ですが、シドニー・ポアチエ主演の「招かれざる客」を思い出します)。

 孤独な自殺願望のある青年は、広場にある天使像に生命を吹き込むことを希望しますが、生まれた美少女は奔放で彼の手には余ります。

 そうしたドタバタ騒ぎを、トトとエドウ゛ィジェという少女との可愛らしい恋愛も交えて、デ・シーカはユーモアと庶民への愛情を込めて描いています。

 ラストでは、トトとエドウ゛ィジェを先頭にして、みんながほうきにまたがって、「幸せの国」に飛び去っていく姿が痛快です(「E.T.」(その記事を参照してください)を思い出させます)。

 こうしたある意味無責任な終わり方は、「卒業」(ダスティン・ホフマンとキャサリン・ロスが、花嫁姿のままでで教会から逃げてしまいます)、「小さな恋のメロディ」(マーク・レスターとトレイシー・ハイドが、トロッコに乗って逃げてしまいます。その記事を参照してください)などと共通していて、先のことを考えなければ、最高にスカッとします。

 今回、久しぶりにこの映画を見直してみて、「ああこういう作品を書きたかったんだ」と、改めて思い起こせました(今からでも遅くないか)。

 

 

 


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