現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

児童文学と職業

2016-11-18 09:06:43 | 考察
 児童文学でも、いろいろな職業が描かれることがあります。
 しかし、それらは、農家や商店(食べ物屋さんが人気)や医師(獣医を含む)や先生や職人などのことが多く、世の中の大半を占めている普通の会社を描いた作品はほとんどありません。
 普通の会社ではドラマが作りにくいと思われていることもその理由でしょうが、現在の書き手に女性が多く普通の会社の様子に詳しくないためかもしれません。
 一般小説でも、津村記久子などの一部の例外を除いては、あまりすぐれたワーキング小説はありません。
 また、作家によっては、華やかな職業(例えば、パイロット、キャビンアテンダント、テレビのプロデューサー、デザイナーなど)よりもガテン系の職業の方が尊いといった、変な偏見を持っている人もいます。
 しかし、読者の子どもたちのおとうさんやおかあさんの大半は、普通の会社に勤めているのです。
 そういった大人の働く姿を作品に描くことも、児童文学作家の大事な務めだと思っています。

ワーカーズ・ダイジェスト
クリエーター情報なし
集英社

 
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無心の一射

2016-11-18 08:38:09 | キンドル本
 主人公は、高校の弓道部に属しています。
 同期の誰よりも上達が遅く、基礎訓練をクリアして的の前に立てるようになったのも、初めて的中したのもダントツのビリでした。
 ところが、最近になって、急激に的中率が上がってきました。
 同期の一年生たちをごぼう抜きして、上級生の的中率に肉薄しています。
 そして、はじめてレギュラーに選ばれて、弓道の大会に出場することになりました。
 しかし、主人公が選手に選ばれたのには、人には言えない秘密がありました。
 試合中に、そのことをひきずってしまっていた主人公は、いつもの弓射ができません。
 そんな主人公を、補欠にまわった先輩は励ましてくれます。
 ようやく無心になれた最後の一射の行方は?

 (下のバナーをクリックすると、スマホやタブレット端末やパソコンやKindle Unlimitedで読めます)。

無心の一射
クリエーター情報なし
平野 厚


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神沢利子「海のたまご」いないいないばあや所収

2016-11-18 08:32:36 | 作品論
 いよいよ札幌を離れて樺太へ向かう日がきました。
 主人公たちを乗せた列車が発車した時、ばあやは泣きながらホームで後を追いました。
 かあさんやにいさんも泣いています。
 しかし、主人公だけは泣けませんでした。
 新しい旅立ちのために、新調したよそゆきのかっこうをしていたからでしょうか?
 汽車と連絡船を乗り継ぐ長く苦しい旅の末に、ようやく樺太の島影が見えてきました。
 主人公は、樺太での新しい生活にむけて決意を新たにします。
 子どもの日々と決別して新しい世界へ出発する日は、児童文学では重要なモチーフです。
 ミルンの「プー横丁にたった家」、モルナールの「パール街の少年たち」、皿海達哉の「野口くんの勉強部屋」など、多くの印象に残るシーンが思い出されます。
 この作品では、最も幼い時期への決別が鮮やかに描かれています。

 
いないいないばあや (岩波少年少女の本)
クリエーター情報なし
岩波書店
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