現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

児童文学における「繰り返しの手法」

2016-10-19 08:36:28 | 考察
 児童文学、特に絵本や幼年童話では、「繰り返しの手法」が使われます。
 「繰り返しの手法」というのは、登場人物やシチュエーションを変えながら、同じような場面を繰り返すことです。
 わかりやすい例をあげると、「ももたろう」では、イヌ、サル、キジがキビダンゴをもらって桃太郎の家来になるシーンが繰り返されます。
 読者、あるいは読み聞かせやお話を聞いている子どもたちは、二番目のサルのシーンではイヌと同じようにキビダンゴをもらったことで喜び、三番目のキジのシーンでは、心の中で「キジもきっとキビダンゴをもらうぞ」と期待し、それが実現することでさらに大喜びします。
 このように、「繰り返しの手法」は、読者が物語の世界に自ら入っていくことを助けるのです。
 「ももたろう」の例では繰り返しは三回だけですが、もっと長く繰り返される場合もあります。
 そんな時は、読者の期待に応えるシーンと期待を裏切るシーンを、うまく混ぜることによって変化をつけて、さらに読者を物語に引き込むことができます。

ももたろう (日本傑作絵本シリーズ)
クリエーター情報なし
福音館書店
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ラ・マルセイエーズ

2016-10-19 08:04:33 | キンドル本
 定年退職する中学の老教師に、クラス全員でいたずらをしかけます。
 皮肉屋の老教師には、みんな痛い目に遭っていました。
 でも、その老教師と主人公の少年とには、かつてみんなには秘密にしている心のふれあいがありました。
 老教師は、主人公のしかけた罠にはまって最後の授業で、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を歌わされます。
 老教師はすごい音痴なので、クラス全員で笑ってやろうという趣向です。
 老教師が歌いだし、予定通りにみんなが笑いだします。
 しかし、思いがけないラストシーンが繰り広げられます。

 (下のバナーをクリックすると、スマホやタブレット端末やパソコンやKindle Unlimitedで読めます)。


ラ・マルセイエーズ
クリエーター情報なし
平野 厚

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黒川博行「左手首」左手首所収

2016-10-19 07:29:07 | 参考文献
 この短編でも、衝動的に犯罪に走って破滅していく若い男が描かれます。
 美人局、殺人、死体をバラバラにする、死体遺棄と坂道を転げるようにして転落していきます。
 短編集の表題作ということもあり、他の作品よりも社会の底辺に生きる若者たちの退廃感が鮮明に描かれています。
 現代の貧困、世代間格差などが、若い世代の犯罪への転落と紙一重であることを考えると極めて今日的であり、今の児童文学では絶対に取り上げない世界だろうなあと思います。

左手首 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社
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