現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

中川李枝子「いやいやえん」

2016-10-08 10:52:22 | 作品論
 1962年に出版された幼年童話の古典です。
 私の読んだ本は1998年で93刷ですから、今ではゆうに100刷を超えているであろうロングセラーです。
 以下の七つの短編からできています。
「ちゅーりっぷほいくえん」約束が七十もあって、主人公のしげるはいつも約束を守らないので、物置に入れられてしまいます。
「くじらとり」積み木で作った船で海にのりだして、くじらを連れて帰ります。
「ちこちゃん」しげるは、なんでもちこちゃんのまねをしてしまい、大変な目にあいます。
「やまのこぐちゃん」山から来た小熊が保育園に入り、みんなと仲良くします。
「おおかみ」保育園をさぼったしげるは、野原でオオカミに会いますが、あまりに汚かったので食べられずに済みました。
「山のぼり」約束を守らずに果物を食べすぎたしげるは、鬼の「くいしんぼう」と友だちになりました。
「いやいやえん」しげるは、ちゅーりっぷほいくえんの代わりに、なんでもいやだと言えばやらなくて済む「いやいやえん」へ行きます。
 この作品の一番の成功は、作り物でない生身の幼児であるしげるを創造したことでしょう。
 また、大人よりも意識と無意識が不分明な幼児の特質を生かして、現実と空想の世界が入り混じった魅力ある作品世界を作り出しています。
 ただし、この作品のおもしろさは、しげるが幼児らしく約束を守らなかったりいたずらをするところなのですが、どの短編でも作者は教育的なおちをつけてしまっています。
 この本を使って、保育者や親などの大人たちは、幼児たちのしつけをしようとするかもしれません。
 しかし、子どもたちが喜んでいるのはそういった教訓的なところではなく、しげるのいたずらやわがままに素直に共感しているのでしょう。
 おそらくそれは作者たちの意図を超えたところであり、そのためにベストセラーになったのであればやや皮肉な感じもします。
 ただ、作品に出てくる体罰(物置に閉じ込めたり、無理やり女の子の服を着させます)は今の時代にそぐわないので、そろそろ賞味期限が来ているのかもしれません。

いやいやえん―童話 (福音館創作童話シリーズ)
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福音館書店
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0.5ミリ

2016-10-08 10:50:05 | 映画
 ひょんなことから事件に巻き込まれて、職を失って放浪している若い介護ヘルパーの女性の話です。
 様々な問題を抱えた老人たちと知り合って、そこに寄生する形で生活をしています。
 介護、老々介護、老人の性、老人ねらいの詐欺など、極めて今日的なモチーフを描いているので興味深いです。
 前半はテンポも良く、泊まるところをなくした家出老人と一緒にカラオケでオールをしたり、ネズミ講のような詐欺から一人暮らしの老人を助けたりして、なかなか痛快です。
 しかし、中盤から、戦争、生きていくこと、親子問題、近親相姦(?)、性同一性障害などの重い問題が、未消化なまま生硬な感じで出てきて、中途半端な印象を受けました。
 特に、登場人物のセリフとして、テーマが生のまま語られたシーンには閉口しました。
 やはり三時間十七分の上映時間は長すぎて、しかも途中からはテンポもかなり悪いので、観客が飽きてしまいます(休憩時間もないので、途中でトイレへ行く人が続出していました)。
 この内容では二時間以内に刈り込まないと(特に後半)、商業的に成功させるのは難しいでしょう。
 主演女優の安藤さくら(女性監督の妹)はけっして美人ではなく、しかもノーメイクに近いので、作品にリアリティを持たせています。
 その点では、このような映画では、美人女優はかえって不利でしょう。
 また、共演者たちは芸達者なベテランぞろいなので、未熟な監督や主演女優をかなり助けています。
 ただし、主人公は家事や介護ヘルパーとしての腕前は超一級(腕前を強調しすぎています)なので、冒頭で職を失ったからといって、ただちに放浪生活に陥る設定には、かなり無理がありました。


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四季派学会・宮沢賢治学会イーハトーブセンター合同研究会 ―宮沢賢治から「四季」派へ―

2016-10-08 08:27:19 | 参考情報
 2012年12月15日に大妻女子大学で行われた宮沢賢治と四季派の詩人たちをめぐっての、宮沢賢治学会イーハトーブセンターと四季派学会との合同研究会です。
 1930年代という時代の中で、宮沢賢治が四季派の詩人たちにはどう受け止められたかなどをテーマにした講演、研究発表でした。
 研究発表は以下の通りでした。
 ・平澤信一「『風の又三郎』の新しい課題」 
 ・吉田恵理「中原中也と富永太郎における『春と修羅』の問題 
 ・名木橋忠大「立原道造と宮沢賢治 -われもまたアルカディアに-」
 講演は、北川透『異界からの声をめぐって― ―宮沢賢治と「四季」派の詩』でした。
 最初の研究発表を除くと、四季派学会の人たちによる発表や講演なので、普段の宮沢賢治学会とかなり毛色が違っていました。
 まず、いろいろな詩が引用されるのですが、その時発表者が詩を朗読するのです。
 おそらく彼らは詩の朗読に慣れているのでしょう。
 みんな大変上手なのに驚かされました。
 次に、先行研究の引用が非常に多かったです。
 これは、研究対象が狭い分野に集中しているので、どうしても先行研究を紹介して、その上に自分の考察を積み上げる形にならざるを得ないためだと思われました。
 そのあたりは、宮沢賢治学会と共通しているようです。
 一方、日本児童文学学会の場合は、研究対象が非常に広いので、独自の分野を開拓できる余地が広いと思われます。
 その分、今回の聴衆(特に四季派学会の人たち)は発表内容について熟知しているようで、質疑の時に活発な意見交換がみられました。
 

宮沢賢治―驚異の想像力 その源泉と多様性
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朝文社
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10月7日(金)のつぶやき

2016-10-08 08:16:05 | ツイッター
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