レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ふたつの海のあいだで ベイカー街少年探偵団

2017-06-15 08:48:10 | 
『ふたつの海のあいだで』カルミネ・アバーテ

 図書館のHPの「新着図書」で見つけた本。イタリアのもの。主人公はハンブルク在住で、ドイツ人の父とイタリア人の母を持つ少年。母の家は、先祖は歴史ある宿屋で、文豪デュマが忘れていった原稿(?)を家宝にしている(当時の宿の側では届けようとして追ったけどついに会えなかった)。その宿は。盗賊たちが滞在中に警備隊に囲まれて火をかけられて燃えてしまったという歴史があった。母方の祖父は、その先祖の宿に誇りを持ち、再建することに情熱を燃やしていた。しかし、土地のヤクザにみかじめ料を要求されて断ったので嫌がらせを受け、堪忍袋の緒が切れて殺人を犯して刑務所に入れられた。その祖父がついに出所して、再建がふたたび始まる。
 ささやかな、しかし当事者にとっては大切な歴史と、少年の自意識と身内への感情が淡々と描かれた佳作。


真瀬もと『ベイカー街少年探偵団ジャーナル』全3巻 角川文庫
 「ベイカー街少年探偵団」の部分は「ベイカーストリートイレギュラーズ」と読ませている。もちろんこれは、ホームズが下町の少年たちを情報収集などで使っている設定を応用した二次創作である。第1作めは「理論社」から出ていたがあとが続かずにいて、それがこちらで復活して完結したーーと思われる、しかしそういうことが説明されていないのはおかしいだろうに。
 リアム・マッギャン、いかにもの名前でアイルランド系の少年。もとスリだけどホームズに出会って盗みはやめた。父はどうやらアイルランド独立運動の元テロリストだったらしい(と読者には早い時点で推測できる)。リアムたちに関わってきた少年エドワードは貴族の跡継ぎだが、死んだ母親の出自ゆえに周囲から冷遇されている。乳母は、エドワードの母の死に不審を感じてホームズに依頼してきた。
 頭の切れる高飛車な美少年のエドワードが、私の発想ではオクタヴィアヌス坊やとダブる。
 結末は、ホームズ「正典」を知る読者にとっては、そうつながるか!と手を打つところ。


『吸血鬼カーミラ』で知られるレ・ファニュの『墓地に建つ館』を先月読んだ。その中で牧師の説教の場面で、「セント・アウグストゥスの「神の足は毛織の足、しかれども手は鋼、限りなき優しさの陰に厳しさを持ち給う」という厳粛な言葉を一同に思い出させた」という記述がある。これは、「アウグスティヌス」だろうな。
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