レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

本の雑記

2018-01-04 07:10:14 | 
「日本近代文学館」
 いまの展覧会「小説は書き直される」に去年行った。メモ(たいしたものではないが)が見当たらないので一言二言。
 『坊ちゃん』の床屋での会話場面、床屋のセリフで「な、もし」が増えている。
 大正あたりに出た『坊ちゃん』独訳、タイトルはまずそのままローマ字表記で、副題としてEin reiner Tor(純粋な愚か者)の添えてあるのが興味深かった。


書店のレジあたりに置いてある出版社の冊子をもらってくることに熱中したことは話題にした。たくさん置いてある書店に行く機会がなくなり、ポプラ社の「asta」と小学館の「きらら」を物好きにも数年通販で購読していたが、そろそろやめることにした。幸い、astaは地元の書店にまた置くようになった。「きらら」の連載では『眠れる美女』秋吉理香子(前作『ジゼル』はマツオヒロミさんの絵が綺麗だった)、『彼岸の屋上庭園』、『漫画ひりひり』が気になっているので単行本を期待する。


以下、去年書いたのに投下していなかったぶん、いまごろ発見した。


アンドレアス・セシェ『囀る魚』  西村書店 2016
 借りた本の巻末の広告ページで存在を知ったのだと思う。現代ドイツの小説。
 アテネに住む本好きの青年ヤニスは、本を買う日には美味しい朝食をとるという儀式をする。
(「王様のような朝食というのは、アメリカででもなければ、かならずしも「たらふく食べる」という意味にはならない」という描写が笑える。ドイツ人だってグルメだと思われていないだろうけどそのドイツ人にもこの言われようのアメリカ人)
 そのヤニスが初めての書店で素敵な女店主に出会って、本を語り合う。
 一方、「1907年 ロンドン」で、友を毒殺しようとしているアーサーがいる。
 しばらくは、この二つの話が交互に語られて、・・・しまいにはファンタジーめいてくる。
 ヤニスが、様々な本のキャラたちの交流する様を想像するのなんてたいへん親しみを感じてしまう。
 とある章では、
「1907年、運命は文学に味方した」と始まり、この年にあった重要な出来事が並べられる。「アストリッド・リンドグレーン、ダフネ・デュ・モーリア、井上靖がこの世に生を受け、ラドヤード・キップリングがノーベル文学賞を受賞した」
 ここに「井上靖」の名が加わっていることが嬉しい。作者のセシェが好きだということなのか、ドイツの読書家にも知名度が高いということなのか。


ちくまライブラリー『佐藤春夫怪異小品集 たそがれの人間』
 エッセイか小説か判然としないが、小学生のとき、春夫の父が狸と相撲をとっていたと噂された話が微笑ましい。
 紡績工場の事務員が夜中の厠で・・・という話は、滑稽さと悲惨さがあいまってインパクトが強い。

 
コメント
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