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映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

アンダルシア

2011年07月10日 | 邦画(11年)
 『アンダルシア 女神の報復』をTOHOシネマズ六本木で見てきました。

(1)前回作品『アマルフィー』が、イタリアの景観を随分と綺麗に捉えており、今度もそんなものが見られるのかなと思い、なおかつ、かなり以前になりますがアンダルシア地方のセビリアとかコルドバ、グラナダに行ったこともあって、それではと映画館に出向くことにしました。

 実際に見てみると、アンダルシアとタイトルにはあるものの、有名なアルハンブラ宮殿などは描かれず、セビリアとグラナダのほぼ中間に位置するLondaという小都市の街の様子が映し出されます。Puente Nuevoを中心とするこの街の変わった景観は随分と素晴らしく、アンダルシアにはレンタカーを使って行きましたから、事前に知っていたらそこまで足を延ばしたのにと残念に思った次第です。



 そんなことはともかく、どうしてアンダルシアが物語の舞台となったかと言えば、資金洗浄マネーロンダリング)に絡んで、外交官・黒田織田祐二)やインターポール捜査官・神足伊藤英明)が目を付けているアンドラの銀行の支配人が、中東のテロ組織の要人と、アンダルシアにある彼の別荘で会合を持つという情報がもたらされたからです。



 その情報を提供したのが、アンドラ公国の銀行で働く新藤結花(黒木メイサ)。



 彼女が通訳を担当していた日本人投資家(谷原章介)の遺体が発見されたというので、パリにいた黒田がアンドラに派遣され、結花と接触するなかで、そうした情報が得られたというわけです。ただ、彼女はどうも一筋縄ではいかなそうな雰囲気を漂わせています。それで、……、という具合にストーリーは展開していきます。

 まあ、前回の『アマルフィー』では、肝心のアマルフィーがストーリー上浮き上がっていて、なぜそこがタイトルになるのか了解しがたい感じがしたところ、今回のアンダルシアは、物語的には一応のつながりが付くようになっています。
 とはいえ、資金洗浄に関係する会合が持たれる銀行家の別荘が、上記のロンダに置かれているわけでもなさそうであり(ロケ地は、もっとずっと西のへレス・デ・ラ・フロンテーラです)、とすると、このロンダの映像は、単にその奇観を紹介するためのものなのかしら?

 さらに、アンドラで危険な目に遭遇した結花を保護するというので、黒田が、フランスにある日本総領事館(たとえばマルセイユにあります)ではなく、いきなりバルセロナの日本総領事館に赴くと、前回在イタリア日本大使館に勤務していた女性外交官(戸田恵梨香)に出くわすという、酷くご都合主義なところがたくさんあるのは、前作と変わりがないようです。



 だいたい、上記の資金洗浄に関与し、日本のヤクザの莫大な資金を仲介しようとするのが、いきなり日本の警視総監の息子(谷原章介)というのが不可解です。さらに彼は、結花の罠に嵌められ切羽詰まって、スキーの滑降途中で崖から転落して自殺しようとするもののうまくいかず、気がついて救助を求めて助かってしまうのも、ハテサテという感じです(崖から墜落したにもかかわらず、顔に擦り傷があるくらいで、何ら骨折もしていません!)。

 また、ホテルから逃げる結花を神足らが追いかける場面があります。アメリカ映画ならば必ずや派手なカーアチェイスとなるに違いないところ、この作品では、関係者が一生懸命走るだけなのです(一個所、黒田らの乗るタクシーに清掃車やトラックがぶつかる場面があります。でも、こんなカーアクションについて、劇場用パンフレットに掲載されている「Production Notes」において長々とした記事になっているのを見ると、かえって物寂しい気がしてしまいます)!

 関連で言えば、この路地を駆け抜けるシーンは、日本のスタジオにその路地を再現した上で撮影したとのこと。映画を見ている最中には気がつかず、その出来栄えのよさに感銘を受けました。ですが、アンダルシアに向かう列車の中でのシーンは、逆に、いかにもスタジオセットでの撮影であることがあからさまで(窓の外の景色のはめ込み方のいい加減なこと!)、拍子抜けしました!

 なんのかんの問題点はいくらでもありそうですが、パリ→バルセロナ→アンダルシアと、ヨーロパを縦断する今回の作品は、前作に比べたらまずまずの仕上がりになっているのでは、と思いました。

 なお、この作品では、インターポール捜査官の神足が抱える事情(警視庁のキャリアながら、不正経理を内部告発したことから、現在の職場に飛ばされ、また幼い子供を一人日本に残してもいる)とか、結花の事情(両親と妹を交通事故で亡くす)とかはかなり明らかになるのに、外交官黒田の持つ事情は、必ずや大きな事件があったはずと思えるにもかかわらず、前回同様、何一つ明らかになりません。



 黒田に扮する織田祐二は、実にさわやかな笑顔が大きな売り物であるはずなのに、このシリーズでは、魅力的な女性(前作の天海祐希とか本作の黒木メイサ)と同室に近い状況に陥るにもかかわらず、ラブストーリーには発展せずに、いつも額にしわを寄せた暗い顔を見せているだけです。
 きっとこれは、第3作目あたりで明らかにされるのでしょう。
 また、そのためもあって、本来なら織田祐二が一人で演じるべき役柄のうちの明るい面を、福山雅治が担って大サービスにこれ努めているのでしょう!

(2)前作の『アマルフィー』が、外務大臣を襲撃する策謀を阻止するお話になっていたのに対応し、今回は、財務大臣(夏八木勲)にスポットライトが当てられています。
 前回の場合、どうして佐藤浩市扮する商社マンらが外務大臣を襲撃しなければならないのか、あまり納得できない感じながら、その話自体を理解するのは容易でしょう。
 それにひきかえ、今回は、財務省の国際事案ということで資金洗浄が選択されていますが、「資金洗浄」と言われてすぐさま分かる一般人は少ないのでは、と思えるところです。
 確かに、映画の中では、財務大臣がG20の場で説明しますし、また劇場用パンフレットにも、「資金洗浄」とはとして、「マネーロンダリングと英訳されるように、読んで字のごとく、汚れたお金をきれいなお金に洗浄すること」云々と記載されているところ、「資金洗浄」の方が「マネーロンダリング」の和訳ではないのか、という点はさて置いても、なかなか理解し難いのではないでしょうか(注)?


(注)劇場用パンフレットに「マネーロンダリングと英訳されるように、読んで字のごとく」とあるところ、日本でもlaundryが実際の発音のように「ローンドリ」といった感じで発音され、「マネーロンダリング」も「マネーローンダリング」、「コインランドリー」も「コインローンドリ」と表記されているとしたら、話はもっと分かりやすくなるのかもしれませんが(といっても、「コインランドリー」は、和製英語のようです)!


(3)渡まち子氏は、「ストーリーは表層的だが、前作「アマルフィ」よりは出来がいい」、「このシリーズ、もはや織田裕二だけの魅力では支えきれないと踏んだのか、サービスショットのように登場する福山雅治も含め“みんなで支え合いましょう”的な雰囲気が漂っていて苦笑する」ものの、「雪深いアンドラから、芸術の都バルセロナ、太陽の地アンダルシアへと移動するにつれ、国際犯罪と日本の権力構造のからみあった糸がほぐれていく。結花の出自や背景の掘り下げが浅いのが惜しいが、新しいタイプの役に挑戦した黒木メイサの今後には期待したい」として60点をつけています。
 反対に前田有一氏は、「隅から隅までたくさんの褒めどころを探すべく『アンダルシア 女神の報復』を見に行ったわけだが、残念ながらそうした要素はどこにも見当たら」ず、「結論から言うと、織田裕二の引力にその他のサブキャストがまるで追いついていない。黒木メイサや伊藤英明ら若いキャストには、織田裕二のように絵空事ハードボイルドを格好よくみせるだけの説得力がいまだ無い。どうみても織田に見劣りするのに、ストーリー上の扱いはほとんど主人公以上。明らかにスポットライトをあてる場所を間違えている」などとして35点しか付けていません。




★★★☆☆






象のロケット:アンダルシア


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6 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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ローンダリング♪ (愛知女子)
2011-07-10 13:51:14
クマネズミさん、こんにちは!
拙ブログにトラコメ賜りましてありがとうございます。
毎日暑いですね‥。


「ロンダ」と「ローンダリング」のツッコミ(笑)を頂いちゃいましたね。英語圏ではこのギャグ使えませんね‥。


ところで「資金洗浄」イコール「マネーロンダリング」でたいてい通じると思いますが今時は分かりにくいのでしょうかね?


クマネズミさんはスペインにご旅行されましたか!
スペインは
私、実はあまりよく知らないのです。
スペイン関係の国内レジャーには行きました(汗)(三重県にある志摩スペイン村)

カーニバルやフラメンコ、お城の散策は楽しかったです。
レジャー施設でもかなり楽しめましたから、
スペインではさらにいろいろ刺激的なのでしょうね。

ではでは
書き込み失礼いたしました。



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次回作はブラジルで! (クマネズミ)
2011-07-12 04:27:19
「愛知女子」さん、TB&コメントをわざわざありがとうございます。
そうですね、外交官・黒田のシリーズの愉しみの一つは、これまで余り日本に紹介されていない外国の風景が、空中撮影などでふんだんにスクリーンに映し出されることにあるのでは、と思っています。
まして、その国に行ったことがあるとかなんかすれば(「志摩スペイン村」でも!)、親しみは一層増すというものです。
前作の「アマルフィ」も今回の「ロンダ」にしてもクマネズミは全然知りませんでしたが、イタリアもスペインも行ったことがあるので、こうした作品もそれなりに面白いなと思った次第です。
次回作があるとしたら、何処の国が舞台になるのでしょうか〔次々回のオリンピックがリオ・デ・ジャネイロで開催されることもあり、ブラジルなんいうのはどうかしら〕?
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ロンダロンダ (ふじき78)
2011-07-16 07:50:30
こんちは。

「マネーロンダリング」も「資金洗浄」もセリフで言われれば違和感ない程度に浸透してますが、どっちでも、間接的な暴力団支援部分なので、あまり悪い感を感じなかったです。

「私の名前は山本ロンダ、私がお金を操作することで日本の暴力団は5倍、元気になるのよ」みたいに分かりやすくやってほしかった。
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洗滌 (クマネズミ)
2011-07-16 08:42:24
「ふじき78」さん、コメントをありがとうございます。
いやあ、「洗滌」というと、『川の底からこんにちは』で、満島ひかりが「腸内洗滌」を受けるシーンをスグニ思い出してしまいます。担当者から「いやなことを全部吸い取ってしまいましょう」と言われたのに対し、「男に捨てられた思い出、4人分なんですけど」と答えると、「ただの冗談です」とバッサリ切り捨てられてしまうのです!
これからすると、「資金洗浄」とは、もっとズット真面目な話なのですね。
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新幹線 (ほし★ママ。)
2011-07-18 12:20:39
黒田の一番の活躍が「イワシ料理店」の接待~と、言ったら
言いすぎだとは思いますが、もうちょっと色んな意味で派手にやって欲しかったです。

列車の場面、あまりにも緊張感が感じられなくて
慰安旅行かなんかのように見えました。
今にも窓の外に富士山が出てくるのでは~っと…
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何は何らしく (クマネズミ)
2011-07-18 21:44:10
ほし★ママさん、わざわざTB&コメントをありがとうございます。
おっしゃるように、ヤッパリ織田裕二は主役らしく大活躍すべきで、特に福山雅治的な柔らかさも出すべきなのではと思いますし、折角のスペインの列車ならばそれらしく窓の外も実写でやってもらいたいところです!
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