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映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

噂のモーガン夫妻

2010年04月01日 | 洋画(10年)
 『噂のモーガン夫妻』をTOHOシネマズ有楽座で見てきました。

 予告編から面白そうなコメディ映画ではないかと思い、その前はよく通りかかるものの入ったことがなかった映画館で上映されていることもあって、見に行ってきました。

(1)この作品は、ヒュー・グラントが主役のコメディ映画と思って見ていましたら、最初の方で、彼が扮する敏腕弁護士ポールと、不動産業を営むメリル(サラ・ジェシカ・パーカー)とのモーガン夫妻が、突然起きた殺人事件に巻き込まれてしまいます。そこで、これはもしかしたらサスペンス映画かもしれないと、身を乗り出して見るようになります。
 モーガン夫妻は、殺人事件の目撃者で重要な証人である彼らを消そうと殺人犯が動くであろうからと、住み慣れたニューヨークからワイオミング州の片田舎に、警察の手によって強制的に隔離されてしまいます。
 ただ、そこらあたりから、やはりこの作品はサスペンス映画ではないのでは、と思うようになってきます。
 件のモーガン夫妻は、二人の間がうまくいっておらず別居中なのです。そのまま放っておけばありきたりの離婚に至るだけのこと。それでは、他愛のない映画になってしまいかねません。思いもよらない展開にもっていくためには、お互いにゆっくりと話し合える時間をストーリー上設ける必要性が出てきます。そうしたところから殺人事件が設定され、二人をワイオミングの片田舎へ否応なく隔離する「証人保護プログラム」が映画の中に取り込まれたように思えてきます。というのも、二人ともスケジュールのぎっしり詰まった生活を営んでいて、いくら話し合おうと思っても、ニューヨークにいる限り満足な時間が取れないという設定とされていますから。

 これが不自然に感じられないのであれば、この映画は大成功でしょう。誰だって、昼間はロデオ大会などが催され、夜はニューヨークでは目にできない星空を見上げることができる田舎に行けば、自分たちの原点である結婚当初に戻って、もう一度やり直そうという気になるでしょうから。

 ですが、こうした設定が酷くわざとらしいと思えてしまえば、アメリカの金持ち階級の埒もないお話にすぎないのではないのか、子供ができれば二人の絆が深まるといっても、養子を貰ったくらいですぐにそうなるわけでもないだろうに、この子供の世話を、あの忙しい二人はいったいどのようにするのだろうか、やはりベビー・シッターなどに預けっぱなしにしてしまうのではないか、そうなったら今と何も変わらないではないかなどと、コメディ映画の粗探しをしても意味がないのに、言ってみたくもなってしまいます。

 なお、ヒュー・グラントの相手役のサラ・ジェシカ・パーカーは、米国TVドラマ『Sex and The City』で主役を演じ、ゴールデングローブ賞などを獲得している大女優です。余りの評判なので、DVDでそのドラマをいくつか見ましたが、ドラマに登場するその友人役の女優たちと同様、演技は素晴らしいものの、受ける印象としてはまあまあだな、と思っていました。
 ただそれが、この映画のように、ヒュー・グラントの相手役として一人で画面に何度も大写しになると、ちょっとそこまではどうもという感じになってしまいます。
 ヒュー・グラントの映画だから相手役は注目度が高ければ誰でもというわけかも知れませんが、やはりもう少し魅力的な女優ならば面白い映画になったのかも、と思ってしまいました。

(2)この作品は、先日見た『恋するベーカリー』と類似しているところがあります。
 モーガン夫妻は別居中であり、『恋するベーカリー』の方は、離婚したうえで10年もの間離れているという違いはあるものの、離婚した元妻に再会した元夫が、復縁を懇願するというストーリですから。
 それに、夫の職業が両作品とも弁護士だという点(さらには、両方の妻も、実業家として成功しています!)にも興味をひかれます。
 まあ、両者とも、アメリカの金持ちを巡ってのお気楽極楽な映画と言っていいでしょう。

 なお、この映画に出てくる「証人保護プログラム」ですが、2008年の第32回モントリオール世界映画祭にて最優秀脚本賞受賞した『誰も守ってくれない』(君津良一監督、2009.1公開)では、犯罪者の家族(この映画の場合は、犯罪者の妹)を保護する刑事(佐藤浩市)を描いていました。
 『噂のモーガン夫妻』では、容疑者を有罪にできる証人を容疑者から保護するプログラムが取り上げられているのですが、こちらの方は、容疑者の家族をマスコミの執拗な攻勢などから保護することを描いているわけで、言ってみれば、官が民間人を保護するという点で両者は類似しているのではと思いました。

(3)映画評論家は、総じて好意的です。
 町田敦夫氏は、「互いへの信頼を取り戻しかけた夫妻が、満天の星の下で結婚式の誓いを思い返すシーンは本作の白眉。シェークスピアを引用したメリルの誓いも、ジョーク満載のポールの誓いも共に素晴らしい一文で、観る者の胸にはジンワリと温かいものが去来する」として70点を、
 渡まち子氏は、「ド田舎のワイオミングで浮きまくる都会人というカルチャーギャップでたっぷりと笑わせ、自然と共存する素朴な生活の素晴らしさを謳いあげる」などとして60点を、
 福本次郎氏も、「映画は、ニューヨーカーが遭遇するカルチャーショックをユーモラスにとらえつつ、きれいな水や空気、新鮮な食べ物が人間性まで浄化していくことを教えてくれ」、「事件解決後、お互いのみならずもっと積極的に他人を信じる気になっているポールとメリルが、子供にも恵まれて心も豊かになるという、後味の良い作品だった」として50点を、
それぞれ与えています。

 皆さん、ワイオミングの素晴らしい自然に圧倒されたというところでしょうか。


★★☆☆☆

象のロケット:噂のモーガン夫妻


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1 コメント

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Unknown (vic)
2010-04-02 22:27:44
TBありがとうございました。
私はヒューグラントのファンで2年ぶりに会えるということで、とても楽しみにしていたのですが、ファンとしては納得いかない出来でした。
あれだけ出演料が高そうな2人並べてもつまらない作品になってしまうんだな、と思いました。

サラ・ジェシカ・パーカーは「Sex and the City」のキャリーにしか見えないのでヒューグラントと夫婦という雰囲気が全然なかったし...

ヒューグラント、次回作あるのかな?と心配になりました。
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