昨年の大晦日、 突如YouTube上で「69RSTRAX」という名前でストーンズの1968年から69年かけての未発表音源が一挙公開にされたのだそう。
その量、なんと101トラック。
Abkcoが著作権保護期間が切れてしまう前の最後の一日に、YouTube上で配信することによって、リリースされていない音源の権利を確保してしまおうという理由だったそう。
年が明けた時には削除されていて、ほとんど聴けた人はいないんじゃないのかなと思うのだけど。
その中のスタジオ録音から16曲を編集収録したブートレッグがこれ。
YouTubeから落とした音源なので細かく聴くと高域低域が潰れているけど、それを除けば高音質だと感じる。
ROCK AND ROLL CIRCUS用にレコーディングされた、かなり荒々しい雰囲気Sympathy For The Devilなんて、ミックのカウントから演奏が始まる瞬間の雰囲気ったらカッコよ過ぎで何回も繰り返して聴いてしまった。
そういうことは滅多にしないのだけど、自分のメモ用として、各曲のインフォを貼り付けておきます。
長くなるけど(笑)
1 Ruby Tuesday
今回、最初の驚きと言うべきが本曲の再録音バージョン。
そんな音源が存在していたという事実だけでもかなりのインパクトですが、確かにミックの歌やチャーリーのドラミングは60年代後半のそれ。
はて、何のために再録音が行われたのかと思いきや、これが「ROCK AND ROLL CIRCUS」用となれば合点がいくもの。
再録バージョンとしての完成度は十分ですが、ここにブライアンのリコーダーがない点が気になります。
66年当時より垢抜けた仕上がりとすべく、それを省いてアレンジしたのか、あるいは本番で彼に吹かせるつもりだったのか?
いずれにせよオールディーズな立ち位置の曲は映像収録の前で候補から落とされたのだと推測できる再録音バージョン。モノラル
2. Honky Tonk Women
イエロードッグ「BLACK BOX」で発掘された別ミックス。イントロでキースが「アウッ」と叫ぶので有名なバージョンで、ミックのボーカルも別テイク。
「69RSTRAX」の中でもちょっと音がシュワシュワするのが目立ちますが、「BLACK BOX」にあったようなアセテートからとおぼしきノイズは入りません。
そしてピアノとホーンセクションの分離度も向上しています。ステレオ
3. Country Honk
以前からイントロのクラクションが入らない、なおかつバイロン・バーラインの弾いたフィドルも入らない別ミックスが発掘されていましたが、こちらは完全に別テイクのバッキングトラック。
リリース版よりもテンポが速く、イアン・スチュワートの弾く歯切れの良いピアノやビルによるベースの存在感が目立ちます。
カントリーというよりはホンキートンク色が強いテイク。ゆるくステレオ
4. Sympathy For The Devil
こちらもまた「ROCK AND ROLL CIRCUS」用のレコーディングなのですが、かなり荒々しい雰囲気の別テイク。
ミックのカウントから始まる演奏はむしろ、映画「ONE PLUS ONE」で聞かれたスタジオでの別テイクに近いものがあります。
おまけに全体を通してキースがひっきりなしにオブリガードを入れまくっている点が印象的。
しかし演奏がまとまりを欠いている点は否めず、だからこそ没になったのでしょう。モノラル
5. Stray Cat Blues
「69RSTRAX」中、唯一のアルバム「BEGGARS BANQUET」収録曲のセッション音源で、レコーディング初期の段階とおぼしきバッキングトラック別テイク。
演奏はキース、チャーリー、ビルに加えてニッキー・ホプキンスという編成。
まだラフな調子で演奏されていますが、それでも十分に骨太な雰囲気は迫力十分。モノラル
6. Gimme Shelter
7. You Got The Silver
これらは昔からおなじみ、それぞれ「キースが歌うバージョン」と「ミックが歌うバージョン」。ですが、これらも「69 RS TRAX」に含んでおきたかったのでしょう。
なお「Gimme Shelter」キース・バージョンには二種類のミックスが存在しますが、ここで聞かれるのは「TIME TRIP VOL.4」で発掘された方。ステレオ
8. Love In Vain
さあ、ここから驚きの音源が続きます。これは1968年5月23日に録音された「Love In Vain」最初のバージョン。
後に「LET IT BLEED」に収録されたバージョンは69年3月の録音でしたので、こちらは「BEGGARS BANQUET」セッションからのアウトテイクに属します。
それだけに演奏のアレンジがまるで別物。よりロバート・ジョンソンのバージョンに近い雰囲気が漂っており、チャーリーが洗濯板でリズムをとっているのも面白い。
そのシンプルさ故にお蔵入りしたのだと推測されますが、これは素晴らしい別テイク。ステレオ。
9. Let It Bleed
こちらもバッキングトラックの完全な別テイク。「Country Honk」の別テイクと同様、ここでもテンポが速め。
アルバムバージョンのどっしりとした演奏を聞き慣れた耳にはずいぶんと新鮮に聞こえることかと。
途中から少しだけミックが歌っていますが、ほぼインスト状態です。モノラル
10.Midnight Rambler
グリン・ジョンズの「19」というテイク・コールから始まるバッキングトラックの別テイク。
しかし演奏は1分足らずで終わり。演奏にもう少し歯切れの良さが必要なことをキースが感じ取ったのかもしれません。モノラル
11.Gimme Shelter
これも「BLACK BOX」などで聞かれた別ミックス。アルバムバージョンと比べてみればイントロで入るベースからして別もの。
しかし何と言ってもミックのボーカルがまったく違っており、コーラスの大半を「rape, murder」ではなく「come on, children」と歌っているのが特徴。
それでいて彼のボーカルがダブルトラックかつエフェクトがかけられており、完成度が高い仕上がりを見せているのも特徴。
当初はこの状態でリリースが検討されていたのかもしれません。
そこからベースやミックのボーカルを差し替え、あのような仕上がりに生まれ変わったのですね。
そして「BLACK BOX」などと比べて音質は飛躍的に向上。
12.Wild Horses
これがまた驚きの別ミックス。何とここでは全編に渡ってストリングスがオーバーダビングされているのです。
その雰囲気は「As Tears Go By」っぽい箇所もあり、リリースされたバージョンのようなカントリーテイストが微塵もない仕上がりには本当にびっくり。
一方でストリングスを被せるという作業(当然レコーディング費用がかかる)しておきながら、それを没にしていたという事実にも驚かされます。
さらに演奏が進むとアルモニカ(グラス・ハーモニカ)まで登場して牧歌的な雰囲気にエスカレート。
とはいえ元が名曲ですので、このドラマチックな仕上がりも十分に素晴らしい。
感動と衝撃の両方を与える別ミックスでしょう。ステレオ
13.Sister Morphine
これは「TIME TRIP VOL.4」辺りから知られるようになった、キースがアコギでなくドブロ・ギターでコードを弾く初期バージョン。
今まではチャーリーが加わったところでフェイドアウトとなっていたのに対し、初めて演奏をコンプリートで収録。
その結果7分近にも及ぶロングバージョンであったことが判明しました。ステレオ
14.Brown Sugar
15.Wild Horses
どちらもマニアにはおなじみ、米国盤「HOT ROCKS」のいわゆる「Shelley」ミックス。
どちらもレアな別ミックスであったことから幾度となくアイテムに収録されてきましたが、そのどれもが盤起しの粗を隠蔽すべくイコライズを施していた(その結果シャリシャリしがちだった)のに対し、今回はかなりウォーミーな音質で聞かれるのがポイントでしょう。ステレオ
16.You Can't Always Get What You Want
驚愕音源満載の「69RSTRAX」最後を締めくくるのは本曲のオープニングを印象的に導いていたクワイアーとのセッション風景。
その場面だけは「CROSSFIRE HARRICANE」ドキュメンタリーでも8mm映像にて垣間見られましたが、今回は遂に音源が登場。
20分にも及ぶセッション風景では、ミックがコーラス隊に稽古をつける様子がドキュメントされています。
これがとても和やかな雰囲気のなかで行われており、時折グリン・ジョンズがミックにアドバイスする形で進みます。
コーラス隊のおばちゃんたちは折に触れてよく笑っていて、それはまるで「あらやだ、私たちミック・ジャガーに頼まれてるんだわ」的な雰囲気すら伝わってきます。
その後、指揮者らしき人が現れて本格的にコーラスが仕上げられました。これは本当に面白い。モノラル
個人的には16曲目のYou Can't Always Get What You Wantのおばちゃんリハはつまらんかった(笑)