TOHOシネマシャンテなどで上映中。
どうしても気になって、頑張って松葉杖をついて、ゆっくりゆっくり歩いて見に行った映画「対峙」、その甲斐あって(?)
ものすごくよかったです!
https://transformer.co.jp/m/taiji/
教会の一室で2組の両親が話し合う、というすごく地味な設定の密室劇なんですが・・・その両親とは、高校銃乱射事件の被害者と加害者、それぞれの両親なのです。
ネットより、映画のシーンから。
冒頭は、ちょっと抜けた感じの教会職員がバタバタしている、という不穏ながらも呑気な感じで始まるのですが、いざこの両親達が席につくと、もうその緊迫感で目が離せない!どこに話がいくのか、誰だ何を話すのか、全く先が見えないサスペンス。
ちょっと前の早朝の都心。
自分の子供が相手の子供を殺してしまった、相手の子供に自分の子供が殺されてしまった、という状況で極限の感情が
揺さぶられ、実存的な問いを突きつけられます。あちこちで私も含め、観客の啜り泣きが聞こえます・・・。
同じく早朝の都心。
そして訪れるカタルシス(と言っていいと思うのですが)深く静かに人間の本質を考えさせられます。
先週はここにいた・・嘘みたい。
15年くらい、あるいはもっと前に、来日通訳させていただいた、もう題名も忘れてしまったルワンダの大虐殺を描いた映画のことを思い出しました。
ドキュメンタリー映画ではないのですが、実際の虐殺のサバイバーが出演しており、彼らが来日したのです。
紅白の梅の花、満開に近い。
自分以外の家族全員を惨殺された彼らの話は、聞いていて本当に悲惨で辛いのですが、我慢して泣かずに通訳しました。
でも次の日の朝、また取材会場に向かう電車の中で、急に涙が流れ出し、止まらなくて困ったのでした・・・。
結婚記念日に夫がくれたお花。
そんな取材の中で、サバイバーの一人が言った言葉が、深く心に残り、「対峙」をみたときにまた思い出したのです。
それは「私は家族を殺した敵を赦した。彼らのやったことは忘れない、でも赦さないと先に進めなかった。赦しは自分が生き残るために
必要なことだった」というようなものでした。
ちょっと前に作った絵。マステを使ってます。
自分が先に進むために、赦す。これはスピリチュアリティについて書かれた本にもよく出てくるテーマですが、
「対峙」を見ると、ルワンダの映画の時のように、血生臭く、はらわたを抉られるような苦しみから生まれた
言葉の真実味を感じます。そこまで感じさせる脚本や演出、演技力にも脱帽。
犬のカツラ・・・ではなく娘の髪の毛
自分の中にある「赦せないこと」、子育て、人生の価値・・・いろんなものを揺さぶられ、でも静かな光や希望もあり、
原題の「MASS」(教会でのミサ)を感じさせます。これは大量殺人のMASSにも掛けているんだと思いますが。
ふ〜ん。
地味な設定ではありますが、このサスペンス、緊迫感は映画館でこその醍醐味もあると思います。ぜひ劇場で見てほしい作品です!