孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ソマリア  南部拠点都市からイスラム過激派撤退 ソマリア海賊は各国警備で衰退

2012-09-30 22:20:01 | ソマリア

(9月22日 首都モガディシオの北80kmの地点で、アフリカ連合(AU)ソマリア平和維持部隊(AMISOM)に投降する200名以上のアルシャバブ兵士 AMISOMによれば、多くのアルシャバブ兵士から投降の接触があるそうです。“flickr”より By AU/UN IST http://www.flickr.com/photos/au_unistphotostream/8019356109/

新大統領選出 2日後には自爆テロの標的に
21年にも及ぶ内戦で実質的無政府状態が続き、イスラム過激派と海賊の温床ともなっていた東アフリカ・ソマリアで、「暫定政府」統治が終了し、正式政府発足に向けて動き出したことは、8月20日ブログ「ソマリア 暫定政府が終了し、正式政府発足へ 議員・新大統領選出には遅れが」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120820)で取り上げたところです。

その後、9月10日には、アハメド暫定大統領を破ってモハムド新大統領が選出されました。
学者出身で“政治手腕は未知数”とのことです。

****ソマリア:モハムド氏を大統領に選出****
内戦が20年以上続き、全土を支配する中央政府が無い状態のアフリカ東部ソマリアで10日、国会議員の投票による大統領選出投票が行われ、学者出身のハッサン・シェイク・モハムド氏(56)が選ばれた。新政府発足で内戦終結への期待感があるが、反政府組織勢力は依然強く、楽観できない情勢だ。

04年発足の暫定政府の統治期間が8月終了したのを受けた選挙。AP通信などによると議会(定数275)の投票は、決選投票に持ち込まれモハムド氏がシェイク・シャリフ・アハメド暫定大統領を190対79で破った。

モハムド氏はソマリアの大学で工学を学び、卒業後はインドに留学。その後、国連児童基金(ユニセフ)で勤務した。11年に「平和・開発党」を創設し、議長を務めているが、政界経験は短く、政治手腕は未知数だ。

ソマリアでは、91年のバーレ政権崩壊後、軍閥などによる内戦が激化。近年では国際テロ組織アルカイダと連携するイスラム過激派アルシャバブが南部を広範囲に実効支配している。暫定政府軍が昨年8月、アルシャバブを首都モガディシオから一掃したものの、完全掃討と全土の治安回復のめどは立っていない状況だ。【9月11日 毎日】
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首都モガディシオの一部を除く広い範囲を実効支配してきたイスラム過激派・アルシャバブをモガディシオから撤退させ、エチオピア・ケニアの隣国からもアルシャバブ追討の侵攻が行われるという、軍事的状況の変化もあっての新政権発足ですが、アルシャバブは中南部を支配しており、首都モガディシオでも爆弾テロを繰り返していました。
新大統領選出の2日後には、その新大統領が自爆テロに狙われるという事件があり、先行きが案じられていました。

****ソマリア新大統領狙い自爆テロ 警備兵ら4人死亡****
アフリカ東部ソマリアの首都モガディシオで12日、2日前に新大統領に選出されたばかりのハサン・マハムード氏を狙ったと見られる自爆テロがあった。マハムード氏は無事だった。AFP通信などが伝えた。

爆発は空港近くにあるマハムード氏が滞在するホテルの門の前で起きた。ケニアの閣僚らと会合をしていたという。ホテル内の人たちにけがはなかったが、警備兵3人と自爆テロをした1人が死亡した。

ソマリアは内戦が始まった1991年以来、無政府状態が続く。新大統領を選んで21年ぶりの正式政府を発足に動き出したところだった。イスラム武装勢力シャバブが「いわゆる大統領と外交団を狙った」との声明を出し、関与を認めた。
シャバブはソマリア中南部の広い地域を実効支配しており、アフリカ連合(AU)軍が掃討作戦をしている。昨年8月にはモガディシオをシャバブ支配から奪還したが、ゲリラ的な攻撃が頻発している。【9月13日 朝日】
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アルシャバブ掃討に向けた大きな転換
ただ、ここにきてケニア軍を主力とするアフリカ連合(AU)の部隊が、イスラム過激派・アルシャバブを拠点都市・南部キスマユから撤退に追い込むということで、形勢が更に一歩進展したかのように見えます。

****キスマユから撤退=イスラム過激派、拠点都市喪失―ソマリア****
ソマリアからの報道によると、イスラム過激派アルシャバーブは29日、最後の拠点都市だった南部キスマユから撤退したことを明らかにした。
ケニア軍を主力とするアフリカ連合(AU)の部隊が28日、キスマユへの総攻撃を開始していた。AFP通信によれば、アルシャバーブのスポークスマンは「29日午前0時、軍事部門から命令が出た」と撤退を認めた。

キスマユは首都モガディシオの南約500キロにある港湾都市。支配下の都市を相次ぎ失ったアルシャバーブの「最後の要衝」だった。9月に入りキスマユ包囲網を築いたケニア軍は28日、東方の海岸に強襲揚陸作戦を敢行した。
AFP通信によると、アルシャバーブ配下のラジオ局も放送を停止した。住人の一人は同通信に対し「最後の車両が早朝、街を去った。どこへ行ったか分からない」と語った。【9月29日 時事】
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アフリカ連合(AU)ソマリア平和維持部隊(AMISOM)は、“2007年から派遣されているが、長くウガンダ軍とブルンジ軍だけで、増援を求める両国に応える国はなく、モガディシオの数区画を守りアルシャバーブの猛攻に耐えてきた。そこに昨年10月、形勢を読んだケニア軍が参戦。破竹の勢いでアルシャバーブ掃討を続けている”【9月26日 時事】とのことです。
隣国ケニアがソマリアに軍事進攻したのは、アルシャバブによるケニア国内での外国人誘拐事件などが頻発する事態に業を煮やしてのことと言われています。

なお、“キスマユを包囲するAU軍は、ケニア軍とウガンダ軍の仲間割れが伝えられており・・・”【同上】とのことで、AMISOM内部の統制にも問題があるようです。

“キスマヨの港を経由して、イエメンのアルカイダ系組織などから武器や物資が入っていたとの指摘があり、シャバブの最重要都市だった”【9月29日 朝日】“キスマヨは違法な木炭輸出や密輸を通じた活動資金が得られる重要な戦略要衝となっていた”【9月30日 CNN】ということで、南部拠点都市キスマユ攻略は、AMISOMにとってアルシャバブ掃討に向けた大きな転換となると見られています。

ただし、上記CNN報道では“AU軍に加わるケニア軍は29日、シャバブの最後の拠点の1つであるソマリア南部の港湾都市キスマヨの地域半分を制圧したと発表した。ケニア軍の報道官によると、ソマリア軍地上部隊との合同作戦は1日半続き、同市の北部を攻略した。支配地域での足場を固めた後、シャバブが残存する市南部に進攻する計画。北部の奪還作戦でシャバブに甚大な被害を与えたとしている”【9月30日 CNN】となっており、キスマユからアルシャバブが完全撤退した訳ではないように報じられています。

いずれにしても、首都モガディシオ撤退に続き、拠点都市キスマヨ撤退ということで、アルシャバブの退潮傾向は確かなようです。
この背景としては、“ソマリア中南部を支配していたアルシャバーブは、昨年になって(1)大干ばつに対応できず民心が離反した(2)リビアのカダフィ政権が崩壊し支援が途絶えた(3)米無人機の攻撃で幹部が次々暗殺された―ことから急速に弱体化。昨年8月に首都モガディシオから撤退し「拠点」と呼べる都市はキスマユだけになった”【9月26日 時事】と言われています。
“大干ばつに対応できず民心が離反”というのは、干ばつ被害の住民救済を行おうとする国際援助を外国のスパイ活動としてアルシャバブが妨害し、住民の困窮を放置したことを指しています。

【「海賊たちは破産して、避難民のように暮らしている」】
AMISOMによるアルシャバブ掃討が加速して、新政権統治エリアが拡大していけば、船舶拉致・身代金要求で世界各国の頭痛の種となってきたソマリア海賊に対する根本的対策ともなります。
もっとも、ソマリア海賊の方は、日本も含めた欧米・中国・インドなどの海賊掃討作戦が功を奏して、すでに衰退しているとの報道があります。

****借金まみれに転落したソマリア海賊「春の日は去った*****
各国掃討作戦・船舶武装強化で拉致件数急減し、借金だらけの人間へと転落 豪華別荘衰退・遊興産業も沒落
一時期、国際社会の大きな障害だったソマリア海賊たちが、最近はカード遊びやロブスター釣りで日々を過している。各国海軍の取り締まりと船舶自身武装により海賊活動が衰退して、遊興産業に派手に金がばらまかれていたガルカイヨやホビョなどソマリア中部沿岸都市の姿を変化させているとAP通信が25日、報道した。

ヨーロッパ連合海軍によると、ソマリア海賊が拉致した船舶数は2009年46隻、2010年47隻だったが、2011年には25隻にとどまった。特に2011年、ソマリア海賊たちは合計176件の船舶攻撃を敢行し、歴代最高で活発な活動を示したが、拉致の成功は25隻にとどまった。海賊の船舶攻撃の撃退に成功しているという信号だ。今年に入ってからは計5隻の船舶を拉致するのにとどまっている。5月10日、リビア船籍のMVスミルニホを捕捉して26人の船員を拉致・抑留したのが最後だ。

2008年からソマリア沿岸で海賊掃討作業を持続して遂行してきたヨーロッパ連合海軍を中心に、アメリカ、中国、インド、ロシアなどの海軍の取り締まり作戦が決定的だった。今年5月からヨーロッパ連合海軍は任務を強化して、陸上にある海賊武器と装備、燃料などを破壊した。
日本の航空自衛隊まで加勢し、ソマリア沿岸上空を飛行して海賊たちの動向を近くの船舶に伝えていたりもしている。
商船など民間船舶も隣近を巡視中の海軍艦隊と随時交信する一方で、自身の警備を強化した。武装警備兵と海賊たちが船舶に這い上がるのを防ぐ鉄條網と水大砲なども設置した。

海賊たちは船舶と武器、燃料などを用意するために借りた金を返すことができず、逃亡者の身分だ。ガルカイヨで会った海賊のアブデー・リザク・サルレは、かつてはボディーガードと下女を従えながら暮していたが、最近は借金取りを避けて、むさくるしいバラックで暮す。
海賊たちにお金を貸していた金融業者のパルドサ・モハマド・アリは「海賊たちは破産して、避難民のように暮らしており、もうこれ以上、接触しない」と述べた。
国連によると、1045人の海賊が現在21ヶ国で逮捕され司法手続きにかけられている。海上での取り締まりと気象悪化、事故などで死んだ海賊の数は統計さえ出しにくい。

この地域の遊興産業京の景気も撃沈した。海賊ブームが絶頂だった頃はお茶一杯で50セントにまで上がったが、今は5セントに過ぎない。海賊出身のモハマド・アブドー・アデンは、昔の仕事だった町内サッカーコーチに戻ったが、月給が海賊時代のひと晩の遊興費にも満たない。
一晩に1000ドルを取っていた性売買の女性たちも去った。ホビョの市長のアリ・ディユアレ・カヒニは「海賊はインフレと道徳的退廃、治安不在を生んだ主犯なので、彼らがいなければ生活と文化が改善する」と語った。

過去2ヶ月間続いたこの地域のモンスーン後の今年下半期は、ソマリア海賊の衰退が恒久的な段階に入ったのか判断する試金石になると、ヨーロッパ連合海軍側は明らかにした。【9月29日 ハンギョレ・サランバン】(http://blog.livedoor.jp/hangyoreh/archives/1667382.html
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世界最貧国のソマリアで“一晩に1000ドル”というのは、超バブルの様子が推察されますが、それも今は昔のことになったようです。

これで新政権による統治に向けてうまく進むかどうか・・・は、なかなか確信が持てません。
もともと新政権を支える勢力は多くの氏族の寄り合い所帯ですから、仮にアルシャバブを追い込んでも、今度は政権内部での勢力争いが表面化するという事態も懸念されます。
“政治手腕は未知数”のモハムド新大統領に期待します。また、国際支援も引き続き必要とされています。

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