孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン 戦乱の中で子供たちは 報復殺害、少年兵、脅迫、自爆犯、難民生活・・・奪われる教育機会

2016-05-05 22:17:51 | アフガン・パキスタン

(兄がポリ袋で作ってくれたアルゼンチン代表メッシ選手のユニホームを着てサッカーをするアフマディ君でしたが・・・・。1月29日撮影=AFP時事【2月26日 朝日】)

タリバン和平交渉拒否 春季攻勢「オマル作戦」】
アフガニスタンの和平交渉に関しては、もう2か月ほど前に‟タリバンが交渉拒否の声明を発表”というニュースが伝えられて以降、進展が見られていません。

****<アフガン>タリバン和平交渉拒否 条件提示、政府揺さぶり****
アフガニスタンの旧支配勢力タリバンとアフガン政府との和平交渉が暗礁に乗り上げている。政府側は3月第1週にも交渉を再開するとしていたが、タリバンは5日、拒否の声明を発表。タリバン側には、簡単に和平の呼びかけに応じないことで、政府を揺さぶる狙いがあるとみられる。
 
アフガン政府とタリバンの和平交渉は昨年7月以来中断している。政府は交渉再開を目指し、タリバンに影響力を持つとされる隣国パキスタンや米中と協議を重ね、2月の協議後には和平交渉に「全てのタリバンを招待する」と呼びかけていた。
 
タリバンは5日付の声明で、米軍やアフガン軍が各地で空爆や戦闘を続けていると指摘。和平交渉再開には、駐留外国軍の撤退▽国連の制裁対象リストからのタリバン幹部の削除▽拘束された仲間の釈放−−が条件だと改めて主張した。さらに、こうした条件なしの交渉は「どんな結果も生み出さない」として参加を拒否した。
 
タリバンは先月27日に首都カブールの国防省付近で自爆テロを起こすなど攻勢を強めている。一方、交渉参加のハードルを強調することで、政府側との駆け引きで優位に立とうとしている可能性がある。アフガン政府高官は取材に対し「和平以外の解決はあり得ない。引き続き交渉再開に向け努力する」と話したが、開催時期は「遅れることになる」と述べた。
 
一方、パキスタンのアジズ首相顧問(外交担当)は今月1日、米ワシントンで行った講演で、タリバンの指導者らがパキスタンに潜伏していることを初めて公式に認めた。その上で、タリバン幹部の国内移動や医療施設の使用に制限を加えることで、交渉参加に向け「圧力をかけられる」と語った。パキスタンが今後、タリバンにどれだけ影響力を行使できるかがカギとなりそうだ。【3月7日 毎日】
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ケリー米国務長官が4月9日にアフガニスタンを訪問してガニ大統領と会談、今後ともアフガニスタン政府を支援することを表明し、タリバンに和平交渉再開を呼び掛けてはいますが・・・・。

タリバン側は4月12日、恒例の「春季攻勢」を宣言しています。
ちなみに今年の春季攻勢は、昨年死亡を発表した元最高指導者オマル師をたたえて「オマル作戦」と命名されているとか。

4月19日には首都カブールで死者数が64人にものぼる大規模自爆テロが発生。カブールでは2011年、イスラム教シーア派を狙った自爆テロで70人以上が死亡して以来、最悪規模とも言われています。

****アフガン首都の自爆攻撃、死者64人に 内務省発表****
アフガニスタン内務省は20日、同国の首都カブール中心部で19日に起きた旧支配勢力タリバンによる自爆攻撃の死者数が64人になったと発表した。
 
内務省のセディク・サディキ報道官は「64人が死亡し、347人が負傷した」と述べ、「大半は民間人だ」と語った。
 
アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領はツイッターで「テロ攻撃の犠牲者は皆、誰かの父であり兄弟であり子どもだった」と述べ、「アフガニスタン人から流れた全ての血の滴りに対する報復は、われわれがきっと行う」と宣言した。
 
1週間前にタリバンが「春の攻勢」の開始を宣言して以来、首都での初めての大規模な攻撃となった今回の事件では、市中心部でトラックに積載された強力な爆弾が爆発した後、激しい銃撃戦が交わされた。【4月20日 AFP】
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タリバン相手の戦闘で人気者になった少年、射殺
1978年のアフガニスタン紛争の開始から、ソ連の侵攻、軍閥が割拠しての内戦、タリバン支配、アメリカの介入、タリバンの反攻・・・と戦乱の続くアフガニスタンにあって、子供たちもその混乱の中で生きる、あるいは死ぬことを余儀なくされています。

タリバンに包囲されたなかにあって、民兵を指揮し自宅の屋根の上から機関銃を撃ち続け、「おいは計43日間にわたって指揮を執り、我々は包囲を突破した。こちらはたった75人で数百人のタリバーンと戦った」(おじの話)とのことで有名になった少年(当時11歳)が2月、タリバンによって殺害されました。

****タリバン、元民兵のアフガン人少年を殺害 人権団体が非難****
アフガニスタン南部ウルズガン州で、民兵として旧支配勢力タリバンと戦い、一躍有名になった少年(12)が、タリバンの戦闘員に頭部を銃撃されて死亡した。4日には、子どもを戦闘員として利用することへの非難の声が人権団体から相次いだ。
 
殺害されたのはワシル・アフマド君。不安定情勢が続く州都タリンコートで、アフマド君は学校に向かう途中、バイクに乗ったタリバンの戦闘員に頭を2度銃撃された。参加していた民兵組織を数か月前に離れ、学校に通い始めたばかりだった。
 
愛らしい顔立ちのアフマド君は昨年夏に同州で、おじや民兵らがタリバンの包囲を突破するのを助けたとされ、政府側を支持する武装勢力の間で一躍人気者となっていた。
 
ソーシャルメディア上で拡散されている写真には、大きすぎるサイズの戦闘服とヘルメットを着用し、銃を握るアフマド君の姿が写っていた。【2月5日 AFP】
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【「ひげの生えていない少年」は戦わせないと言いつつも、少年兵や自爆犯
上記はタリバンと戦い、報復で殺害された少年ですが、タリバン側は多くの少年兵を戦闘に投入しているとも報じられています。

****タリバンが6歳の子らに戦闘訓練、13歳で実戦投入 人権団体****
アフガニスタンの旧支配勢力タリバンが、実戦に投入する目的で6歳の子どもたちにも戦闘訓練を受けさせているとの報告書を、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)が17日、発表した。少年戦闘員の数は2015年半ばから急増しているという。
 
タリバンは、参加を認めているのは「心身ともに成熟した」戦闘員のみで、「ひげの生えていない少年」を戦わせることはないと主張している。

だが、HRWの報告書によれば、タリバンは積極的に少年たちを集め、IED(即席爆弾)の使い方をはじめとする軍事訓練を受けさせているという。
 
HRWのアフガニスタン担当調査員、パトリシア・ゴスマン氏は「違法なだけでなく、冷酷かつ残忍だ」と批判した。
 
HRWが特に懸念を示しているのが北部クンドゥズ州だ。同州ではマドラサと呼ばれるイスラム教の神学校が、タリバンによって次々と少年たちの軍事教育の場と化しているという。
 
少年たちに対するタリバンの教官の洗脳教育は6歳くらいから始まり、7年間の軍事訓練を経て、13歳までには戦闘員として実戦に動員されるという。
 
HRWによると、地元住民や専門家は、この1年間に少年兵が増加した大きな理由として、タリバンが昨年4月からアフガニスタン北部で攻勢を強めている点を指摘している。

また、地元住民の話では、クンドゥズ州の中でも特に情勢不安定なチャハルダラ地区では、2015年に100人以上の子どもたちがタリバンに召集され戦闘に動員されたという。【2月18日 AFP】
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戦闘だけでなく、自爆テロの実行者として利用されるケースも。

****すぐに天国に行ける」 自爆犯になったアフガン少年の旅路****
大きな目に、優しいほほ笑み、うっすらと生え始めたひげ、キックボクサーになりたいという男の子らしい夢──モヒブラ君(15)は一見、アフガニスタンでよく見るごく普通の少年に見える。だが彼は、同国の旧支配勢力タリバンによって自爆犯になるようそそのかされ、現在少年刑務所に収監されている。
 
家出していたモヒブラ君は2014年、地区長の庁舎前で自爆する寸前に取り押さえられ、南部カンダハル市の少年刑務所に送られた。
 
殉死すれば、純潔の乙女らとミルクや蜂蜜が湧く湖が待つ楽園へ行けると教えられた──モヒブラ君はこう語ると、目に涙を浮かべた。
 
モヒブラ君は、指導役らに「自爆ベストを爆発させても、痛みは全く感じない。君はすぐに天国に行ける」と教え込まれたと語った。(中略)

■「人間ミサイル
モヒブラ君は、隣国パキスタンにあるイスラム神学校の一つで洗脳を受けたと語った。同国に数千か所あるこうした宗教学校は、当局の規制を受けておらず、多くはサウジアラビアからの資金で運営されている。
 
アフガニスタン当局は、そういった学校がタリバンの勧誘拠点になっていると主張している。

アフガニスタンとパキスタン両国は緊張関係にあり、アフガニスタン側はパキスタンがタリバンを支援していると非難。これに対し何年間も否定していたパキスタン側は、最近になってタリバン指導部がパキスタン国内に安全な潜伏先を持っていると認めた。
 
タリバンは「あごひげのない少年ら」を軍事作戦に起用したことはないと主張しているが、アフガン当局は子どもの自爆犯の拘束を頻繁に報告している。中には6歳の子どももいたとされる。
 
当局によれば、子どもたちは「人間ミサイル」として使われているという。小さな体で警備の網を擦り抜け、爆弾を標的に素早く送り込むことができる。
また影響を受けやすい子どもたちは簡単に洗脳され、生きるよりも死ぬ方が良いのだと思い込む。(後略)【5月5日 AFP】
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【「リトル・メッシ」少年も国外避難
タリバンと戦って有名ななった少年が報復殺害されたように、今のアフガニスタンでは目立つことは大きな危険を伴うようです。

「リトル・メッシ」として話題を呼んだ少年も脅迫を受け、パキスタンに避難することに。

****アフガンの「リトル・メッシ」、脅迫受けパキスタンへ****
サッカー・アルゼンチン代表のメッシ選手にあこがれ、ポリ袋で作ったユニホームを着た姿がフェイスブック上で注目を集め、メッシ選手本人からサイン入りのユニホームを贈られたアフガニスタン人の少年の一家が脅迫を受け、パキスタンに避難した。AP通信が3日伝えた。
 
少年は、ムルタザ・アフマディ君(5)。同通信は父親の話として、インターネット上で「リトル・メッシ」として有名になって以来、脅迫電話がひどくなり、ムルタザ君が誘拐されるのではないかと恐れ、家財道具を売り払って逃れてきたと伝えた。
 
脅迫の内容や目的ははっきりしていない。アフガンでは身代金目当ての誘拐事件が頻発しているほか、少年が住んでいたガズニ州は反政府勢力タリバーンの活動が活発な地域。タリバーンは政権時代、あらゆるスポーツを禁じた。【5月3日 朝日】
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希望を失ったイランで暮らす少女
アフガニスタンの戦乱を逃れて欧州などへ移り住もうという子供を含む難民が多く発生していること、「バルカンルート」では行く手を阻まれ、「地中海ルート」では遭難の危険に曝されていることなどは、しばしば取り上げてきました。

下記は、アフガニスタンを逃れ、イランで暮らす少女の話です。

****街角で会った少女を13年間撮り続けて****
彼女の名はファラシュテ。当時7歳。イランに暮らすアフガン難民だった

2003年冬、イラン東部の都市マシュハド。寒い夜空の下、カフェの前の通りに体重計を置き、街行く人々の体重を量って代金をもらっている少女がいた。客が来ないときは、カフェからもれる光を頼りに勉強している姿が印象的だった。
 
彼女の名はファラシュテ。当時7歳のアフガニスタン難民だった。この子はこれからどう成長していくのだろう。彼女が大きくなっていく姿を写真に収めたい──。それから私は2年に1度のペースでイランを訪れるようになった。

10歳、12歳、14歳。ファラシュテはまだ体重を量っていた。日中は学校に通い、夜になると兄や姉たちと一緒に路上に出る。
 
ファラシュテの両親は80年代に、ソ連に侵攻されたアフガニスタンからイランへ逃れてきた難民だ。当時イラクと戦争をしていたイランは国内の労働力不足を補う目的もあり、アフガン難民を多く受け入れた。ファラシュテはイラン生まれだが、難民の親から生まれた子供も難民の扱いになるという。
 
父親はかつて建設現場で働いていたが、心臓を患ってからは肉体労働ができなくなった。難民が単純労働以外の仕事に就くのは難しい。家計を支えていたのは子供たちだった。
 
ファラシュテには、幼い頃から働いているからか、妙に世間慣れしているのに、子供の無邪気さを失っていない魅力があった。(中略)

ファラシュテは結局、14歳ぐらいまで路上での仕事を続けた。(中略)

ソ連軍侵攻とそれに続く内戦、そして01年のアメリカの攻撃で始まったアフガン戦争──イランはアフガニスタンで紛争が起きるたびに多くの難民を受け入れてきた。

現在、イランで暮らすアフガン難民は90万人以上とされる。難民キャンプに収容されているわけではない。大半が都市部で暮らし、働いたり学校へ通ったりと、表向きは社会に溶け込んでいるように見える。
 
ファラシュテの家族も豊かではないけれど、つつましく幸せな生活を送っているように見えた。だが実際には、イランのアフガン難民には多くの制限が課されている。土地や家、車の所有は禁じられ、働き口は学歴があっても低賃金な単純労働にしか就けない。

さらに近年は、イランの失業率が上昇していることもあり、政府はアフガン難民を母国へ帰そうとする政策を取っている。
 
そんな不安定な立場に、ファラシュテの父親は危機感を抱いていた。昨年夏、ドイツのメルケル首相が難民の大量受け入れを発表すると、彼はファラシュテの兄2人を連れて、トルコ経由で欧州へ渡った。無事にドイツにたどり着いた父親たちは、今度はファラシュテたち残りの家族を呼び寄せようとした。
 
しかし、ファラシュテと母親と姉は、トルコとの国境を越えようとしたところでイランの国境警備隊に捕まり、アフガニスタンへ強制送還された。もう正規のルートではイランに戻れない。ファラシュテたちはパキスタン北西部の危ない部族地帯を経由してイランに再入国した。家族は今、バラバラになっている。

20歳になったファラシュテは今、奨学金を受けながら大学に通い、都市計画を学んでいる。小さい頃の夢は絵描きだったから本当は美術を勉強したかったのかもしれないが、奨学金が出る専攻は限られている。

都市計画なら経済的負担もないし、デザイン画も描けると、彼女なりに賢明な選択をしたのだろう。楽しそうに学ぶ姿は幼い頃から変わっていない。
 
またドイツへ渡ろうとするのだろうか? 欧州が難民への門戸を閉ざし始めた今となっては、前回以上に危険な旅になる。イランで育ったファラシュテ自身、友人も多くいるこの地を離れたいとはあまり思っていないようだ。
 
かといって、大学を卒業しても就職口は限られている。「何か有意義な仕事がしたいけれど......」と、言葉を詰まらせる彼女は現実を前に希望を失っているようだ。ずっとイランで暮らしていけるという保証もない。(後略)【5月2日 Newsweek】
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次世代に問題を持ち越す教育機会喪失
上記少女の場合、苦しい難民生活ながらも、教育を受ける機会を得れたことはまだ救いです。
アフガニスタンでは混乱と危険によって、多くの子供たちの教育の機会が奪われており、そのことは問題を次世代に持ち越すことにもなります。

****<アフガン>14万人教育の機会失う タリバンとの戦闘で****
国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)などは18日、旧支配勢力タリバンとの戦闘が続くアフガニスタンで、学校や診療所が攻撃や脅迫の対象となるケースが増加しているとの報告書を公表した。

昨年1年間で少なくとも369の学校が閉校や休校に追い込まれ、約14万人の子供が教育を受ける機会を奪われたという。
 
報告書によると、2015年は学校や教員が攻撃されたり、脅迫を受けたりした事件は132件(前年比61件増)。教育関係者の死傷者数は26人と前年から11人減少したが、反政府勢力などによる誘拐事件の被害者は49人で35人増加した。(中略)
 
アフガンでは軍とタリバンなどとの戦闘が激化しており、UNAMAによると、今年1〜3月だけで1943人の民間人がテロや戦闘に巻き込まれ死傷している。【4月19日 毎日】
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子供たちの教育機会を訴えるマララ・ユスフザイさんの呼びかけは、アフガニスタンにはまだ十分には届いていません。
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