ブログ“愛里跨の部屋(ありかのへや)”

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愛里跨の恋愛スイッチ小説(蒼ちゃん編 5)

2010-12-14 10:13:52 | Weblog
5、君の側面



私と奏士くんは、美術館を出て公園に向かった。
ハンバーガーとコーラを買って、公園のベンチに座り食べ始めた。
池一面に浮かぶ睡蓮の花がとても清楚で可愛くて、
白い花と緑の葉っぱの入り乱れる景色に、
神社の鳥居が目の前に飛び込んでくる。
辺りを見渡せば花壇の花々も鮮やかで、
私が知っている公園とは、違った華やかな景色に見える。


(弁天池公園)
奏士「この蓮の花もそろそろ見納めだな」
蒼  「そうね。この公園来るの久しぶりだわ。
   ここってこんなに明るかったかしら」
奏士「それってさ、今の蒼さんの心が明るいからじゃないの?
   自分の気持ちのままに景色は見えるもんだよ。
   悲しい時は何を見てもくすんで見えるし、
   幸せな時は何見ても輝いて見える」
蒼 「うん、そうよね。
   奏士くん、誘ってくれて本当にありがとうね。
   たくさんの素敵な絵を観て、
   こうやってたくさんの花を見てると、
   久しぶり穏やかな気持ちになれたわ」
奏士「気に入ってもらえて良かった。
   世間の人達は日常や何かに束縛されて、
   余裕の欠片もないだろ?
   いつも座って絵を描いてるとよく分かるんだ。
   行き交う人達は、どの人も眉間にしわ寄せて、
   への字口の険しい顔で余裕なくて、
   みんなロボットみたいに携帯画面から目を離さない」
蒼 「確かに、そう見えるわね(笑)」
奏士「少しは道端に座ってる猫や、
   ど根性植物に目をやる余裕を持たなきゃ人間らしくない。
   だからたまにはこうやって、人間らしくいる為にも、
   感性を刺激して、日常と違った世界を覗くのも必要なんだよ」
蒼 「うん、そうね。
   でも…みんなが余裕ないのは、社会は戦場と同じで、
   食う食われるかだから仕方ないのよ。
   奏士くんが就職活動すれば実態が分かるわよ」
奏士「ん?それって、僕がお気楽な学生だから、
   分かってないって言いたいの?」
蒼 「ううん(汗)違うわよ。そう意味じゃなくて…
   うちの会社もそうだけど、
   職場の人間関係は凄くストレス溜まるの。
   真面目に勤めてる人達が損をして、
   上司に媚びて適当に手抜きして、
   仕事こなしてる人は得して楽しそうにしてる。
   毎日数字や時間に追われて、
   朝から上司の罵声がオフィスに響くと、
   喉まで出かけた言葉も押し止めて、
   言っても分かって貰えないと飲み込んじゃう。
   みんな何らかのストレス抱えてるのよ」
奏士「ふーん。どうしてそう考えるかな…
   何故、真面目な人が損して、
   手抜きしてる人が得してるなんて見方するの?」
蒼 「え?何故って…」

奏士くん…美術館の時とは違う。
何でそんな寂しそうな目をして話すの?

奏士「人それぞれ性格も感じ方も、ものの見方も違って当然だし、
   聞いてみないと分からない事だってたくさんあると思うよ。
   見えてる部分では手抜きしてる人とか、
   不利な事柄のように見えるものでも、
   陰では、人一倍努力して勝ち得たものかもしれないし、
   後でこの為だったのかって知ることもあるじゃん。
   その人の立場に立てば、
   自分の見えてるものと違うと分かる」
蒼 「う、うん。奏士くん、そうだけどね…」
奏士「幸せそうに笑ってる人が、
   家に帰ればインスタントラーメン生活してたり、
   苦しくて何も買えないって言ってる人が、
   財布に万札いっぱい入れてたりする。
   真正面から見た景色だけ見たって、
   ものの本質は分からないんだから。
   自分だけが辛いなんて思えば思うほど、
   心はもっと辛くなるだけだよ」
蒼 「うん…そうよね(汗)」

そんな風に言われたら、
なんて言えばいいか分からないじゃない(-"-;)

奏士「蒼お姉さん。ここらで暗い話し止めない?
   今日はデートなんだから楽しくしなきゃ(=^▽^=)」
えーっ!暗い話は私のせい?(+_+)
蒼 「う、うん」


私達は公園を離れた。
奏士くんは私の手を引いて、
今度は自分の通う大学に連れて行ってくれた。
キャンパスに入ると今まで見たことのない世界がそこにあって、
キョロキョロ辺りを見回す私がいた。
奏士くんが入った建物は講堂で、舞台では演劇の練習中だったのか、
本を持った学生さんたちが思い思いに語り合ってた。

(講堂内)
奏士「彼らは、今度の学園祭と一月の演劇祭を目指してるんだ。
   演目は『シェイクスピアの“ロミオとジュリエット”』
   舞台で今手を挙げてる奴、あれは僕の親友でさ、
   今回ロミオ役に抜擢されたんだけどね。
   ジュリエット役の子とこれがキッカケで、
   付き合うようになったんだって」
蒼 「へぇー。凄いね。
   やっぱり演じるうちに、相手を好きになるってあるんだ」
奏士「うん、そうみたいだよ。
   人間は恋愛すると、脳内にβ-エンドルフィンっていう、
   脳内麻薬物質が分泌されて、
   気持ちが高揚して想像力は豊かになるらしいけど、
   奴は恋愛なんて無頓着なのに、演劇で恋愛物やると、
   本当に相手役の女の子に恋心が芽生えちゃうらしい。
   相手の事なんて全く知らなかったはずなのに、
   会って台詞交わす度にどんどん相手が気になっていったらしいんだ。
   これって凄い現象だと思うんだよ。
   たくさん接点を持つことのは大切だよ」
蒼 「そうね。会う度に…。うん、それって分かるわ」

私もそうだもの。
電車や公園で紺野さんの姿を見る度に惹かれていって、
これからは仕事でも接点が出来そうだし、
やっぱり紺野さんが私のお相手なんだろうな。

奏士「実はさ。僕、お姉さんのこと、だいぶ前から知ってたんだよ」
蒼 「…え?」
奏士「毎日仕事の帰りに、さっき行った公園の屋根つきのベンチに座って、
   じっと弁天池を見てた時期があったでしょ?
   んー、あれはどれくらい前かな。一年は立つかな?」
蒼 「一年前…。あっ…」

それは一年3ヶ月前のことで、
私が仕事を辞めようか悩んでた時だった…
その時の私はある男性と付き合ってて、別れた時でもあった。


(回想シーン)
元彼「ごめん…。好きな人が出来たんだ。
   だから蒼とは別れたい」
蒼 「え?…誰?…もしかして…、同じ課の石川さん?」
元彼「うん…。どうせ黙ってても同じ会社だし、いずれはバレるから」
蒼 「噂は本当にだったんだ…」
元彼「蒼、本当にごめん!
   俺のこと殴っていいよ。完全に俺が悪いから。
   でも、彼女は責めないで欲しい。頼む(頭を下げる)」
蒼 「何なのよ、それ。やめてよ。
   私に頭下げて頼むくらい、彼女がそんなに大事なの?」
元彼「(頭を下げたまま)うん。大切にしたい人なんだ。
   蒼、分かってくれ」
蒼 「ひどい…。今まで私ってなんだったの?…」
それが元彼との最後で、2年8ヶ月の恋の終わりだった。
私はその失恋日から毎日、
会社が終わると弁天池を見つめて泣いていたのだ。


奏士「蒼さん?どうしたの?」
蒼 「やだなぁ。
   てっきり駅前で会った時が偶然の出会いだと思ってたのに…。
   ずっと私のこと見てたなんて…(苦笑)」
奏士「え?蒼さん、僕が言いたいのはね」
蒼 「美術館で『モナ・リザ』の微笑がどうのとか、
   『フローラ』が何だのなんて言い出すから、
   いきなり何故なんだろうって思ってたけど、
   貴方の言うこと素直に信じたのに、
   一年前からふられて落ち込んでる女の表情を観察してた訳だ」
奏士「え!?蒼さん、そんなんじゃないよ!」
蒼 「将来有望な天才画家さん、どうだった?
   ふられて泣きはらした目と、
   一年も失恋の悲しみに苦悩する女の顔は。
   『モナ・リザ』に負けず劣らずで、本当に興味深い試写体よね」
奏士「あのさ、僕は今までそんな気持ちで、
   蒼さんを見たことは一度もないよ」
蒼 「もういいの。ごめんなさい。私帰るわ。今日はありがとう」
奏士「蒼さん!ちょっと誤解だよ!ちゃんと僕の話を聞いて」

私はたまらず立ち上がり講堂を出た。
何だか裸を見られたような恥ずかしさと、
バツの悪いさが一気に襲ってきたのだ。



それから数週間、いつもと変わらない私の毎日。
職場でも何事もなく順調に仕事もこなし、
仕事の日は朝一緒に電車で紺野さんと話ながら出勤して、
昼休みに時間が合えば、
紺野さんと公園のカフェでランチしながら話した。
彼の人柄は見たとおりの誠実な人で、
裏表もなく親しみやすい人で、考え方や好みも似ていて。
彼も私を気に入ってくれたようで、
メールや電話、お誘いもだんだん多くなっていった。

(ほのぼのカフェ)
真一「そっか。こうやって話してると、
   やっぱり君とは縁を感じることが多いよね。
   本当に蒼さんとは気があうし、価値観が同じって言うか」
蒼 「私も同じ気持ちですよ。
   紺野さんと話してるとホッとします」
真一「蒼さん、僕のこと今度からは『真一』って呼んでいいよ。
   何だか堅苦しいよ」
蒼 「はい。じゃあ、真一さん」
真一「そうそう(笑)
   ねえ、蒼さんは今度の土曜日の予定は?」
蒼 「あっ、えっと(焦り)
   今度の土曜日はお休みで予定は入ってないです」
真一「そう!僕も久しぶりに土曜日休みになったからデートしない?
   静岡までドライブしようよ。
   蒼さんともっとゆっくり話したいし」
蒼 「はい、お誘い嬉しいです。デートなんて(#^-^#)」
真一「良かった!詳しくは今夜電話するからね」
蒼 「はい」

私は紺野さんと会って話せば話すほど、
どんどん好きな思い強くなっていった。
だけど…。

だけど、あの日から…
あの美術館のデートの日から、
駅に向かう帰り道で奏士くんの姿を見かけなくなったのだ。
私は心の片隅でモヤモヤしたものが抜けなくて、
奏士くんのことが気になってた。

奏士くんは楽しい時間を作ってくれようとしてたのに、
私ったらあんなひどいこと言っちゃって、
いくら『昔を覗かれたようでばつ悪かった』って言ったって、
あんな失礼な帰り方は本当に良くなかった…
やっぱり奏士くんを傷つけちゃたかな…
きっと怒ってるだろうな…
でも奏士くん…。今どうしてるんだろう。
何処か違う場所で絵を書いてるのかな…
もしかして、体調悪くて寝込んでるとか、
事故にあって入院したなんてことは!?
なんてことは…ないよね(v_v)
何故こんなに奏士くんが気になってしまうんだろう…

そんな自問自答が、時間が経つにつれて増えていく。
それは、自分でもまったく気付かなかった、
自分の意外な側面が顔を覗かせた瞬間だった。
(続く)


この物語はフィクションです。
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2 コメント

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お礼 (もち)
2010-12-21 14:29:52
先日(12/19 16:00~)は友人と二人で占っていただきありがとうございました。
クリスマスプレゼントまでいただいて・・・。
肌身離さずつけますね!
ちなみにこれは切れたら何か意味はあるのですか?
切れないようには気をつけるつもりですが。

悩み事が出来て、立ち止まってしまった時には
また占いをお願いします。
おはようございます。 (愛里跨☆)
2010-12-22 11:45:14
もちさん、いつもご愛顧頂きありがとうございます☆
またお言葉ありがとうございます(^-^)

ほんの気持ちですが使って頂けると嬉しいです。
切れる時は身を守ってくれた場合が多いですが、たまに願いが叶う前触れで切れることがあります。
切れたらお礼を言って、お庭や公園の土に埋めて下さい。

またお会いできるのを楽しみにしております(*^o^*)

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