16、見えない不安
航平の誕生日から、何日か経ったある日の昼休み。
久しぶりにお店向かいのカフェで食事した。
ガラス越しに行き交う人や車を眺めて、穏やかな時間に浸ってた私。
(カフェ店内)
ホットラテを飲みながら、航平からもらったメールを読んでいた時。
男性の声「あの。君、海崎華だよね?」
華 「はい?」
私は声のする方を見た。
するとコーヒーを持った、スーツ姿の男性が立ってた。
華 「あの…すみません。貴方どなたでしたっけ?」
男性「俺、高校3年の時に同じクラスだった、堤谷翔太。
覚えてない?」
華 「堤谷…。あっ!デリバリー翔太!?」
翔太「何だよ、そのあだな。海崎、久しぶりだな。ここ座っていい?」
華 「ええ、どうぞ。本当に久しぶり。
だって、貴方いつも誰かにお弁当調達させてたじゃない」
翔太「そういう事で俺を覚えるなよ。他に凄い武勇伝あるだろ?」
華 「例えば?」
翔太「例えば!体育祭のクラス対抗リレーで、
アンカー走って牛蒡抜きでクラスを勝利に導いたとか、
バレー部の主将してて、うちのチームが全国大会出場して注目浴びたとか」
華 「んー、そうだったかな?」
翔太「何だよ。それが感動の再会のセリフかよ」
華 「あははっ、ごめんね。ちゃんと覚える。
そう言えば、バレンタインデーにラブレター付きチョコ貰ったね(笑)」
翔太「あーあ!笑えよ。
『今日は女の子が好きな男の子にチョコ渡す日なのに逆でしょ!?』って、
俺はその場で振られたんだったよな」
華 「あははっ、そうだっけ?よく覚えるわね。
翔太君って根に持つタイプ?(笑)」
翔太「ああ!根に持つね。当時マジだった俺には、
一生一代の告白だったんだ。
あれ以来、後にも先にも女に告白してない」
華 「うそ!誰にも?」
翔太「ああ!まぁ、昔も今も俺はモテるから、
女の方が告ってくるし、恋愛は成立してるけど」
華 「そういうこと自分で言う?今でもナルシストぶりは健在ね」
翔太「海崎もその毒舌相変わらずだよな。ところで仕事何してるの?」
華 「この向かいの、ほらっ、見えるでしよ?
あの水色の屋根の店で働いてるの。翔太君は?」
翔太「俺は隣町の外車ディーラーで営業して8年になるよ」
彼は私に名刺を渡した。
華 「ありがとう。私も名刺あるの。はい(名刺を出し渡す)」
翔太「サンキュー。
俺さ、今日は納車でその先のオフィスビルに行った帰りなんだ」
オフィスビルって、航平の会社があるビルかしら?
華 「そうなの」
翔太「海崎は今彼氏いる?まさか結婚してるとか?」
華 「結婚はまだだけど彼はいるよ」
翔太「俺も。彼女はいるけど、あいつとは結婚はできないな」
華 「え?どうして?」
翔太「ん?今はまだ人妻だから」
華 「は!?何で人妻と付き合ってるの!?」
翔太「何でって、成り行きかな。もう1年半付き合ってる」
華 「ごめん。全然笑えない」
翔太「別に俺がいいんだからいいだろ?
割り切って付き合ってるんだし、
結婚する気はさらさらないしな」
華 「そうね。貴方の恋愛だから私がとやかく言うことじゃないわね」
翔太「でも、俺を本気で愛してくれる女が目の前に現れたら、
その時は一途に付き合って、結婚考えるだけどな」
翔太君はじっと私を見つめてる。
何だかこの雰囲気、苦手だな…
華 「そうね(汗)早くそういう女性が見つかるといいわね」
翔太「海崎がそうかもな。
これって世間でいう『運命の再会』ってやつだろ?
今の男、お前と本気で付き合ってるのか?
もしかしたら遊びじゃない?」
華 「あのね!彼は真面目で、正義感が強くて優しい人なの。
毎日遅くまで仕事もバリバリこなしてて、
カッコよくて素敵で完璧な人なんだから。
いつも私を大切にしてくれて、料理だって作ってくれる。
こないだも私達は離れ離れにならないって言ってくれたし」
翔太「ははははっ!そんなドラマに出てくるような、
カッコいい完璧な男なんてこの世の中にそう居ないさ。
他の男がやることを彼氏もやってるだろうし、
外に出れば付き合いで、
女が嫌がる世界に足を踏み入れる時もある。
もしかしたら、今だって他の女と一緒に居るかもしれないぞ。
俺達みたいにさ」
華 「えっ!?彼はそんな人じゃない!あなたとは違うの!」
私は彼のデリカシーの無さに腹が立って、思わず立ち上がってしまった。
周りのお客さんが私達の方を一斉に見た。
翔太「おい、座れよ。それに大声なんか出して恥ずかしいだろ?」
華 「ご、ごめん」
翔太「分かった分かった。
海崎の彼氏はお前にとってスーパーマンで完璧なんだ。
でもさ、これだけは言っとくよ。
男の言葉をどっぷり信用すると命取りだぞ。
彼氏だって人間だし、欲求もあるただの男。
欠点の1つや2つはざらにある。
それを知らずに付き合ってるお前は、いつか彼氏に失望するぞ」
華 「失望?失望するって何に?」
翔太「お前さ、彼氏の欠点何個あげられる?」
華 「欠点…。欠点は…な、い」
翔太「ほらっ、最悪だ。付き合ってどれくらいになる?」
華 「んー、もう少しで半年かな」
翔太「あー、それじゃ分かる訳ないか。
今一番楽しい時だから、いいとこしか見えてないし見えないよな。
彼氏はお前に自分の格好悪いとこ見せてる?
お前は彼に自分の欠点見せてる?」
華 「んー。格好悪いとこ…」
航平の欠点…
彰彦との取っ組み合いの時…格好悪くない。私を守ってくれた。
お兄さんとの再会の時…全然格好悪くない。
私の為に冷静になろうとしてくれてた。
蜘蛛とお化けが苦手。それって格好悪い?
私もゴキブリと蛇苦手だし…
翔太「まぁ、これからは彼氏をちゃんと見とけよ。お互いの今後の為にも」
華 「翔太君さ、何で私にそんなこと言うの?」
翔太「今でも海崎が好きだからに決まってるだろ」
え?今でも好きって、どういう意味…
翔太「今はおとぎ話の主人公でいいけど、これからもっと男を知らなきゃな。
段々自分が苦しくなるし、本当に幸せな結婚なんてできないぞ」
華 「うん。分かった…忠告ありがとう」
翔太「お前は俺のこと、
粗野でデリカシーのない男って思ってるだろうけど」
この人鋭いかも(汗)
翔太「俺もこれまで伊達に恋愛なんかしてないさ。
あいつの姿見てると『結婚』って二文字が虚しく見えてくる。
あいつに関わると余計…ただそれだけだ」
何だか一瞬、彼女のことを話す翔太君が凄く寂しそうに見えた。
何か悩み抱えてるのかな…
華 「結婚が虚しいって何故?…(腕時計を見る)
わぁ!もう昼休み時間とっくに終わってる!
ごめん(汗)私、店に帰るわね」
翔太「海崎!連絡するから、またゆっくり話そうな」
華 「うん。またね!」
翔太「おいおい。慌てて道路で転けるなよ(笑)仕事頑張れよ」
華 「ありがとう。翔太君も頑張って」
翔太「おう!」
私は翔太君が気になりながらも、慌てて店に戻った。
(華の店『パティキュラリー』)
お店に戻った後も、私は亜何だか気になった。
翔太君の言葉や瞬間見えた寂しそうな顔が浮かんで。
翔太君の彼女ってどんな人なんだろう。
結婚に虚しさなんて、お家が大変な人なのかな。
しかし航平の『欠点』って何かな…
苗 「華、何かあった?昼休み終わってからずっと深刻な顔してるよ」
華 「ううん、何でもない…
あっ、苗ちゃんは堅太郎さんの欠点って幾つあげられる?」
苗 「え?何?いきなり。そうねぇ~、ありすぎて両手じゃ足りないから、
両足の指使ったとしても…それでも足りないわ(笑)」
華 「それって具体的にどんなこと?」
苗 「うーん。まず辺り構わずオナラするでしょ?
エロ本観ながらトイレにこもったままでてこないし」
航平は私の前でオナラしたことない。
マンションにあった本は、経済誌とか男性ファッション誌とかで、
エロ本なんてなかったな。
苗 「部屋中の電気つけっぽなしで寝ちゃうし、
可愛い子がいたらすぐ声かけるし」
航平はいつも電気ちゃんと消してる。
時々ベッドルームでアロマキャンドル灯してくれて、
ロマンチストだもん。
私と居る時は、可愛い子いても見向きもしない。
苗 「ご飯の後すぐ寝ちゃうし…」
ご飯の後、一緒に片付けてくれるし…
苗 「華、どうしたの?何だか変だよ」
華 「うん…やっぱ変な質問よね。ごめんね」
苗 「海辺さんと何かあった?」
華 「実はさ…」
私は昼休みの一件を話した。すると苗ちゃんは大笑いして、
苗 「なんだぁ、そんなこと気にしてたの。
別に彼の欠点見つけられないからって気にすることないわよ。
私だって付き合い始めの頃は、欠点も堅の魅力だって思えたくらい、
“痘痕もえくぼ”だったよ。
『私の彼は完璧で毎日ラブラブ!』って思ったな」
華 「そっか」
苗 「じゃあ、華が彰彦さんと付き合ってた時はどう?その前の彼は?」
華 「そうね…あの人とは、付き合い当初からよくケンカしてた。
他の人の時も愚痴ってた気がする」
苗 「あのさ、その同級生君。
華が海辺さんのことを自分の前でのろけるから、意地悪したんじゃない?
学生時代、華に思いきり振られたわけじゃない。
久しぶりに憧れの華と嬉しい再会したのに、また振られたんだから」
華 「そうなのかな…」
苗 「きっとそうよ。だから華は今まで通りでいいの。
そんなマイナスなこと考えずに、海辺さんと仲良くしてればいいのよ」
華 「そうね。苗ちゃん、サンキュー」
苗 「You are welcome!」
今夜は航平と会う日。今日会ったら彼の欠点見つけられるかもしれない。
(航平のマンション)
私達はいつものように、航平が作ってくれた料理を食べて、
片付けを済ますとシャワーを浴びて、ソファーでDVDを観ながらワイン飲んだ。
航平「僕さ、この『Meet Joe Black』大好きなんだ。
ジョーとスーザンが出会うシーンとか愛し合うシーン。
“Lightning could strike”
「探してればいつか稲妻が落ちる」ってシーンは特に。
僕も華と会った時に稲妻が落ちたな(笑)」
華 「そうね。私も稲妻が落ちた(笑)」
航平「それと誰も『死と税金』からは逃れられない。
僕は仕事でも、逃れられないものがたくさんあるけどね(笑)」
華 「そっか。そう言えば映画観てて思ったんだけど、
主人公の“ジョー”って航平に似てる」
航平「え?本当に?それは嬉しいなぁ。
男からみてもブラピはカッコいいし、
“ジョー”みたいなキャラは手本にしたいな。
でも僕はそんないい男じゃないよ」
華 「だって…、素敵だから。
それに一緒にいても航平の欠点見つからないんだもの」
航平「僕の欠点?」
華 「うん…いつも私に優しくて、仕事しっかりこなしてて、
身だしなみもきちんとしてる。
お部屋はいつも綺麗だし、
お料理だって出来て何でも手際よくこなしちゃう」
航平「それは華が大切だからだし、家事は独り暮らしだから自分がやるしかない。
仕事なんてミス多いし、いつも上司や先輩に怒鳴られてるよ」
華 「功太お兄さんも、航平は学生時代生徒会長したり、
凄く成績優秀だったって言ってた」
航平「兄貴とそんな話ししたんだ」
華 「私は欠点だらけ。料理や片付けは苦手で、仕事もテキパキできない」
航平「華、僕にも欠点はあるよ。
欠点や苦手に思うことを少なくする努力はしてるつもりだけど、
でも完璧じゃない。それに、華が欠点と思うことを僕は欠点と思ってないよ」
華 「え?でも…航平は私の前でオナラなんかしないでしょ?
トイレでエロ本観たりもしないし」
航平「あははははっ!何それ。もしかしてオナラして欲しいの?
普通はオナラしないで!って怒って言われるけど、
華って本当に面白いな(笑)
こないだは、エスカルゴの缶詰めと格闘してたしね(笑)」
華 「航平!」
航平「ごめんごめん(笑)そこが可愛いってこと。僕もオナラはする。
エロ本は持ってないけど、AVのDVDは先輩や兄貴に借りて観たことあるし、
出張先のホテルで観たりもする。彼女いない時は夜のお供だった時もある(笑)
華の前でそんな自分を見せてないだけだよ。
それって誰でもあるんじゃないかな」
華 「うん…」
航平「華。まだ何か納得してなさそうだね。何が不安?」
華 「ん…。分からないから不安かも」
航平「え?分からないから不安じゃ、解決しようがないな。
欠点は付き合っていくうちに見えてくるし、
知ったら華は僕を嫌いになるかもな」
華 「そんな。欠点が見えても嫌いにならないよ」
航平「そう?じゃあ遠慮なく、思いきり出すかな!
欠点1、華とのエッチ大好き男。
欠点2、華の愛情欲張り男」
航平は私を押し倒しkissした。
これが、航平の欠点なら私は大歓迎!
大好きだから…航平の何もかもが嬉しい。
でも私、一体何が不安なのかな…
きっと航平との日々がとっても幸せだから、かも。
それとも…何かの予感?
(続く)
この物語はフィクションです
航平の誕生日から、何日か経ったある日の昼休み。
久しぶりにお店向かいのカフェで食事した。
ガラス越しに行き交う人や車を眺めて、穏やかな時間に浸ってた私。
(カフェ店内)
ホットラテを飲みながら、航平からもらったメールを読んでいた時。
男性の声「あの。君、海崎華だよね?」
華 「はい?」
私は声のする方を見た。
するとコーヒーを持った、スーツ姿の男性が立ってた。
華 「あの…すみません。貴方どなたでしたっけ?」
男性「俺、高校3年の時に同じクラスだった、堤谷翔太。
覚えてない?」
華 「堤谷…。あっ!デリバリー翔太!?」
翔太「何だよ、そのあだな。海崎、久しぶりだな。ここ座っていい?」
華 「ええ、どうぞ。本当に久しぶり。
だって、貴方いつも誰かにお弁当調達させてたじゃない」
翔太「そういう事で俺を覚えるなよ。他に凄い武勇伝あるだろ?」
華 「例えば?」
翔太「例えば!体育祭のクラス対抗リレーで、
アンカー走って牛蒡抜きでクラスを勝利に導いたとか、
バレー部の主将してて、うちのチームが全国大会出場して注目浴びたとか」
華 「んー、そうだったかな?」
翔太「何だよ。それが感動の再会のセリフかよ」
華 「あははっ、ごめんね。ちゃんと覚える。
そう言えば、バレンタインデーにラブレター付きチョコ貰ったね(笑)」
翔太「あーあ!笑えよ。
『今日は女の子が好きな男の子にチョコ渡す日なのに逆でしょ!?』って、
俺はその場で振られたんだったよな」
華 「あははっ、そうだっけ?よく覚えるわね。
翔太君って根に持つタイプ?(笑)」
翔太「ああ!根に持つね。当時マジだった俺には、
一生一代の告白だったんだ。
あれ以来、後にも先にも女に告白してない」
華 「うそ!誰にも?」
翔太「ああ!まぁ、昔も今も俺はモテるから、
女の方が告ってくるし、恋愛は成立してるけど」
華 「そういうこと自分で言う?今でもナルシストぶりは健在ね」
翔太「海崎もその毒舌相変わらずだよな。ところで仕事何してるの?」
華 「この向かいの、ほらっ、見えるでしよ?
あの水色の屋根の店で働いてるの。翔太君は?」
翔太「俺は隣町の外車ディーラーで営業して8年になるよ」
彼は私に名刺を渡した。
華 「ありがとう。私も名刺あるの。はい(名刺を出し渡す)」
翔太「サンキュー。
俺さ、今日は納車でその先のオフィスビルに行った帰りなんだ」
オフィスビルって、航平の会社があるビルかしら?
華 「そうなの」
翔太「海崎は今彼氏いる?まさか結婚してるとか?」
華 「結婚はまだだけど彼はいるよ」
翔太「俺も。彼女はいるけど、あいつとは結婚はできないな」
華 「え?どうして?」
翔太「ん?今はまだ人妻だから」
華 「は!?何で人妻と付き合ってるの!?」
翔太「何でって、成り行きかな。もう1年半付き合ってる」
華 「ごめん。全然笑えない」
翔太「別に俺がいいんだからいいだろ?
割り切って付き合ってるんだし、
結婚する気はさらさらないしな」
華 「そうね。貴方の恋愛だから私がとやかく言うことじゃないわね」
翔太「でも、俺を本気で愛してくれる女が目の前に現れたら、
その時は一途に付き合って、結婚考えるだけどな」
翔太君はじっと私を見つめてる。
何だかこの雰囲気、苦手だな…
華 「そうね(汗)早くそういう女性が見つかるといいわね」
翔太「海崎がそうかもな。
これって世間でいう『運命の再会』ってやつだろ?
今の男、お前と本気で付き合ってるのか?
もしかしたら遊びじゃない?」
華 「あのね!彼は真面目で、正義感が強くて優しい人なの。
毎日遅くまで仕事もバリバリこなしてて、
カッコよくて素敵で完璧な人なんだから。
いつも私を大切にしてくれて、料理だって作ってくれる。
こないだも私達は離れ離れにならないって言ってくれたし」
翔太「ははははっ!そんなドラマに出てくるような、
カッコいい完璧な男なんてこの世の中にそう居ないさ。
他の男がやることを彼氏もやってるだろうし、
外に出れば付き合いで、
女が嫌がる世界に足を踏み入れる時もある。
もしかしたら、今だって他の女と一緒に居るかもしれないぞ。
俺達みたいにさ」
華 「えっ!?彼はそんな人じゃない!あなたとは違うの!」
私は彼のデリカシーの無さに腹が立って、思わず立ち上がってしまった。
周りのお客さんが私達の方を一斉に見た。
翔太「おい、座れよ。それに大声なんか出して恥ずかしいだろ?」
華 「ご、ごめん」
翔太「分かった分かった。
海崎の彼氏はお前にとってスーパーマンで完璧なんだ。
でもさ、これだけは言っとくよ。
男の言葉をどっぷり信用すると命取りだぞ。
彼氏だって人間だし、欲求もあるただの男。
欠点の1つや2つはざらにある。
それを知らずに付き合ってるお前は、いつか彼氏に失望するぞ」
華 「失望?失望するって何に?」
翔太「お前さ、彼氏の欠点何個あげられる?」
華 「欠点…。欠点は…な、い」
翔太「ほらっ、最悪だ。付き合ってどれくらいになる?」
華 「んー、もう少しで半年かな」
翔太「あー、それじゃ分かる訳ないか。
今一番楽しい時だから、いいとこしか見えてないし見えないよな。
彼氏はお前に自分の格好悪いとこ見せてる?
お前は彼に自分の欠点見せてる?」
華 「んー。格好悪いとこ…」
航平の欠点…
彰彦との取っ組み合いの時…格好悪くない。私を守ってくれた。
お兄さんとの再会の時…全然格好悪くない。
私の為に冷静になろうとしてくれてた。
蜘蛛とお化けが苦手。それって格好悪い?
私もゴキブリと蛇苦手だし…
翔太「まぁ、これからは彼氏をちゃんと見とけよ。お互いの今後の為にも」
華 「翔太君さ、何で私にそんなこと言うの?」
翔太「今でも海崎が好きだからに決まってるだろ」
え?今でも好きって、どういう意味…
翔太「今はおとぎ話の主人公でいいけど、これからもっと男を知らなきゃな。
段々自分が苦しくなるし、本当に幸せな結婚なんてできないぞ」
華 「うん。分かった…忠告ありがとう」
翔太「お前は俺のこと、
粗野でデリカシーのない男って思ってるだろうけど」
この人鋭いかも(汗)
翔太「俺もこれまで伊達に恋愛なんかしてないさ。
あいつの姿見てると『結婚』って二文字が虚しく見えてくる。
あいつに関わると余計…ただそれだけだ」
何だか一瞬、彼女のことを話す翔太君が凄く寂しそうに見えた。
何か悩み抱えてるのかな…
華 「結婚が虚しいって何故?…(腕時計を見る)
わぁ!もう昼休み時間とっくに終わってる!
ごめん(汗)私、店に帰るわね」
翔太「海崎!連絡するから、またゆっくり話そうな」
華 「うん。またね!」
翔太「おいおい。慌てて道路で転けるなよ(笑)仕事頑張れよ」
華 「ありがとう。翔太君も頑張って」
翔太「おう!」
私は翔太君が気になりながらも、慌てて店に戻った。
(華の店『パティキュラリー』)
お店に戻った後も、私は亜何だか気になった。
翔太君の言葉や瞬間見えた寂しそうな顔が浮かんで。
翔太君の彼女ってどんな人なんだろう。
結婚に虚しさなんて、お家が大変な人なのかな。
しかし航平の『欠点』って何かな…
苗 「華、何かあった?昼休み終わってからずっと深刻な顔してるよ」
華 「ううん、何でもない…
あっ、苗ちゃんは堅太郎さんの欠点って幾つあげられる?」
苗 「え?何?いきなり。そうねぇ~、ありすぎて両手じゃ足りないから、
両足の指使ったとしても…それでも足りないわ(笑)」
華 「それって具体的にどんなこと?」
苗 「うーん。まず辺り構わずオナラするでしょ?
エロ本観ながらトイレにこもったままでてこないし」
航平は私の前でオナラしたことない。
マンションにあった本は、経済誌とか男性ファッション誌とかで、
エロ本なんてなかったな。
苗 「部屋中の電気つけっぽなしで寝ちゃうし、
可愛い子がいたらすぐ声かけるし」
航平はいつも電気ちゃんと消してる。
時々ベッドルームでアロマキャンドル灯してくれて、
ロマンチストだもん。
私と居る時は、可愛い子いても見向きもしない。
苗 「ご飯の後すぐ寝ちゃうし…」
ご飯の後、一緒に片付けてくれるし…
苗 「華、どうしたの?何だか変だよ」
華 「うん…やっぱ変な質問よね。ごめんね」
苗 「海辺さんと何かあった?」
華 「実はさ…」
私は昼休みの一件を話した。すると苗ちゃんは大笑いして、
苗 「なんだぁ、そんなこと気にしてたの。
別に彼の欠点見つけられないからって気にすることないわよ。
私だって付き合い始めの頃は、欠点も堅の魅力だって思えたくらい、
“痘痕もえくぼ”だったよ。
『私の彼は完璧で毎日ラブラブ!』って思ったな」
華 「そっか」
苗 「じゃあ、華が彰彦さんと付き合ってた時はどう?その前の彼は?」
華 「そうね…あの人とは、付き合い当初からよくケンカしてた。
他の人の時も愚痴ってた気がする」
苗 「あのさ、その同級生君。
華が海辺さんのことを自分の前でのろけるから、意地悪したんじゃない?
学生時代、華に思いきり振られたわけじゃない。
久しぶりに憧れの華と嬉しい再会したのに、また振られたんだから」
華 「そうなのかな…」
苗 「きっとそうよ。だから華は今まで通りでいいの。
そんなマイナスなこと考えずに、海辺さんと仲良くしてればいいのよ」
華 「そうね。苗ちゃん、サンキュー」
苗 「You are welcome!」
今夜は航平と会う日。今日会ったら彼の欠点見つけられるかもしれない。
(航平のマンション)
私達はいつものように、航平が作ってくれた料理を食べて、
片付けを済ますとシャワーを浴びて、ソファーでDVDを観ながらワイン飲んだ。
航平「僕さ、この『Meet Joe Black』大好きなんだ。
ジョーとスーザンが出会うシーンとか愛し合うシーン。
“Lightning could strike”
「探してればいつか稲妻が落ちる」ってシーンは特に。
僕も華と会った時に稲妻が落ちたな(笑)」
華 「そうね。私も稲妻が落ちた(笑)」
航平「それと誰も『死と税金』からは逃れられない。
僕は仕事でも、逃れられないものがたくさんあるけどね(笑)」
華 「そっか。そう言えば映画観てて思ったんだけど、
主人公の“ジョー”って航平に似てる」
航平「え?本当に?それは嬉しいなぁ。
男からみてもブラピはカッコいいし、
“ジョー”みたいなキャラは手本にしたいな。
でも僕はそんないい男じゃないよ」
華 「だって…、素敵だから。
それに一緒にいても航平の欠点見つからないんだもの」
航平「僕の欠点?」
華 「うん…いつも私に優しくて、仕事しっかりこなしてて、
身だしなみもきちんとしてる。
お部屋はいつも綺麗だし、
お料理だって出来て何でも手際よくこなしちゃう」
航平「それは華が大切だからだし、家事は独り暮らしだから自分がやるしかない。
仕事なんてミス多いし、いつも上司や先輩に怒鳴られてるよ」
華 「功太お兄さんも、航平は学生時代生徒会長したり、
凄く成績優秀だったって言ってた」
航平「兄貴とそんな話ししたんだ」
華 「私は欠点だらけ。料理や片付けは苦手で、仕事もテキパキできない」
航平「華、僕にも欠点はあるよ。
欠点や苦手に思うことを少なくする努力はしてるつもりだけど、
でも完璧じゃない。それに、華が欠点と思うことを僕は欠点と思ってないよ」
華 「え?でも…航平は私の前でオナラなんかしないでしょ?
トイレでエロ本観たりもしないし」
航平「あははははっ!何それ。もしかしてオナラして欲しいの?
普通はオナラしないで!って怒って言われるけど、
華って本当に面白いな(笑)
こないだは、エスカルゴの缶詰めと格闘してたしね(笑)」
華 「航平!」
航平「ごめんごめん(笑)そこが可愛いってこと。僕もオナラはする。
エロ本は持ってないけど、AVのDVDは先輩や兄貴に借りて観たことあるし、
出張先のホテルで観たりもする。彼女いない時は夜のお供だった時もある(笑)
華の前でそんな自分を見せてないだけだよ。
それって誰でもあるんじゃないかな」
華 「うん…」
航平「華。まだ何か納得してなさそうだね。何が不安?」
華 「ん…。分からないから不安かも」
航平「え?分からないから不安じゃ、解決しようがないな。
欠点は付き合っていくうちに見えてくるし、
知ったら華は僕を嫌いになるかもな」
華 「そんな。欠点が見えても嫌いにならないよ」
航平「そう?じゃあ遠慮なく、思いきり出すかな!
欠点1、華とのエッチ大好き男。
欠点2、華の愛情欲張り男」
航平は私を押し倒しkissした。
これが、航平の欠点なら私は大歓迎!
大好きだから…航平の何もかもが嬉しい。
でも私、一体何が不安なのかな…
きっと航平との日々がとっても幸せだから、かも。
それとも…何かの予感?
(続く)
この物語はフィクションです