さみしくて見にきた人の気持ちなど海はしつこく尋ねはしない
やっと『パン屋のパンセ』を読み始める。
歌材は作者が日常の生活の中で見ることのできるもの,技巧を凝らしたような歌ではない。
それなのに詩的で優しい言葉。
いいなと思う歌はたくさんあるのだが、あっと思って思わず頷いてしまった歌。
私は時々海を見に行きたい衝動に駆られる。
以前は本当に電車に飛び乗って行ってしまった。
よくよくその時の心理を分析してみると、幸せいっぱいの時・充実感でいっぱいの時に海を見に行きたいとは思わないようだ。
海を見に行きたい時はどこか寂しい気持ち・哀しい気持ち・人恋しい時・・・自分の中たまってしまった気持ちを海に捨てに行く時、あるいは海に聞いてもらいたいときなのだ。
そんな時確かに海は黙ってみていてくれるだけ、黙って聞いているだけ。
この歌は海の本質を言い得ているな。