BSで水曜日のプレミアムカフェで向田邦子特集をしている。
過去の放映した番組を放送し、それに評論家のコメントも載せる。
3~4回続くようで、1回目は『父の詫び状』2回目が向田邦子の秘めた恋についての番組2001年放送『没後20年向田邦子が秘めたもの』
向田邦子が飛行機事故で亡くなったのが1981年で、没後20年目に妹の和子氏が向田邦子と恋人のN氏の往復書簡を本にして発表した、
それを受けての番組である。
恋人の存在は向田邦子がだれにも言わず秘めてきたものであった。
それをなぜ和子氏は暴露したのか。
それは故人の意思に反するのではないか結局本を出してお金儲けのためでしょと私は反発してその本を読むことなく、恋文の内容も知らなかった。
今回丁寧な作りのこの番組でその詳細を知ることになった。
二人だけの世界の恋文を他人が読んだら気恥ずかしいというか濃密すぎて読むに堪えないものもあるだろうが、向田邦子の恋文はさすが文章が美しく細やかな情にあふれていて読んで恥ずかしいような品の悪さはまったくなかった。
時系列に合わせて向田邦子を演じる女優とN氏を演じるだ男優が手紙や日記を読んで場面が進行する。
N氏は向田より13歳年上、破綻していたとはいえ妻子がいた。
いわゆる不倫であり、父が別の女性へ目を向けていた時期もあり、向田は家族にもN氏のことを言えなかった。
N氏は往復書簡のころは46歳脳卒中で体が不自由になり仕事ができなくなった。
向田はN氏の面倒を見るためいっぱい仕事をしていた。
忙しい合間を縫ってN 氏宅を訪れ食事を作ったりしたが、泊まることはなくまた夜遅く家族の元へ帰って行った。
仕事で疲れ果てそれでもN氏に尽くす向田を見てN氏は向田の負担にならないように昭和39年自殺してしまう。
向田の元へN氏の母から向田の恋文とN氏の日記が届けられた。
恋のことは誰にも言わなかったが その恋文と日記はずっと捨てられなかったのだ。
作家など誰かを研究するという立場からすれば私的な手紙・日記もどのような背景でその作品が書かれたか貴重な資料である。
確かにこの番組の見ると数々の名作にこの秘めた苦しい恋の経験が反映されたのが解る。
しかし100年以上経た明治の作家ならともかく没後20年でそれが世にさらされるというのは・・
向田が生きて天寿を全うしたらこの恋文と日記をどうしただろうか?
私は死後それが人目にさらされることを防ぐためある時期に決意して自分で処分したと思う。
だから向田の作品を読むうえでこの番組を見たあとの方が役に立ったとは思うが、私はやっぱり恋文は公開されるべきではなかったと思う。