アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

第5回 大ブルックナー展を聴く

2017-01-22 10:00:00 | 音楽/芸術

さてこの日は、大ブルックナー展があるので兵庫まで行ってきた。この大ブルックナー展も数えること5回目。第8→第7→第4→第1と進み、今回は巨大な第5交響曲となった。次回の第9でこのシリーズは終了とのこと。残った第2,第3、第6や0番はどうするのだろうか。やはりマイナーな楽曲だから省略なのか、はたまた集客の関係でソロバン勘定がはたらいたのか・・・いずれにせよ、アントンKには残念至極。この時期、このペアで一通りの全曲を聴いておきたかった。まあ井上道義氏のことだ。しばらく間をおいて、彼のショスタコーヴィッチへの拘りと同等に、ブルックナーも扱われることだろう。期待して待ちたいところである。

大阪フィルのブルックナー第5。アントンKには特に思い入れの強い演奏会なのだ。かつて朝比奈隆がブルックナー、それもこの第5はとりわけ得意としていた楽曲だった。それまで東京のオケを振った第5番は何回も実演に接することができたが、大阪フィルとの第5は、亡くなる年2001年4月の大阪シンフォニーホールまで聴くことができていない。現在、「ブルックナー聴くなら関西に来い!」などというキャッチコピーがあるそうだが、まさに当時からアントンKはそんな心境でいたことを思い出している。

今回大阪フィルのブル5は、9年振りと聞いた。さてどんな演奏になるのか高鳴る境地を押さえつつ会場へ向かった。

それにしても、ここ兵庫県立芸術文化センターは響きが良いホールだ。木目で覆われたホールは今では珍しくなくなったが、楽器の些細な音のニュアンスまで聴き取れてしまうくらい、絶妙な音色を聴かせる。逆に言えば、普段気にもしない息遣いのズレや、音程の狂いなど気づかない部分が聴こえてしまい、演奏者泣かせのホールとも言えるのだが、指揮者の井上氏がここでのブルックナー演奏に拘った訳が今改めて理解できるのである。

第5交響曲の前に前座として、指揮者ご自身の作曲した「鏡の眼」という小品が披露されたが、思いのほか聴きやすく、作曲家としての彼のセンスにも魅了される。プログラムには、自身の謙虚なこの作品に対する想いが載っていたが、ますます指揮者だけではなく、作曲家としての分野でもご活躍願いたいものだ。

休憩をはさんで後半は、いよいよブルックナーの第5交響曲が演奏される。指揮者井上氏も、自曲の演奏時のラフな衣装からタキシードに着替えて登場。気合いのほどがうかがえる。

今こうして聴き終え、振り返ってみうると、やはり大阪フィル、ブルックナー演奏には自信を持って演奏していることが伝わってきた。昨日聴いた第8の時のような迷い戸惑い感はなく、大きく深い呼吸の中、音楽に身をゆだねることができた。演奏そのものは、アントンKの意図するものでは残念ながらなかったが、これは完全に個人的な好みの問題。そこには巨大なブルックナーの荘厳建築が現れていたことは間違いない。

冒頭の出のピッチカートの音の安定、深さだけとっても、これから始まる楽曲が凄いことになると想像できてしまう。そんな演奏内容だったといっても良いかもしれない。井上氏の中で培っているブルックナー像が、この大阪フィルの音色に明確に反映されているのだろう。今まで聴いて来た楽曲と同様、実に安定した響きを堪能できた。詳細を個々に触れることは別の機会にしたいが、このシリーズもあと第9番を残すのみ。万感の想いを持って再び兵庫まで出向きたいを思う。

掲載写真は、当日の自身の作品を指揮する井上道義氏。作品に合わせた演出が井上らしくて素晴らしい。

  第5回 大ブルックナー展 

井上道義  鏡の眼

ブルックナー 交響曲第5番 変ロ長調

コンマス: 崔 文洙

2017-01-21   兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール

 



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