細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

学生による論文(111)「殺し合いの性から自分と社会を守るのは、あなたです」 (2021年度の「土木史と文明」の講義より)

2022-01-07 09:34:31 | 教育のこと

「殺し合いの性から自分と社会を守るのは、あなたです」

 私たちは、普段生活している中で、命を脅かされる危険性を何種類か抱えている。災害、毒物の誤飲、病気など、様々だ。この危険性の中で、もっとも身近に潜んでいて、発生確率が本当は大きなもの、それは実は殺人なのかもしれない。なぜならば、ナショナルジオグラフィックのネイチャー誌をもとにした記事によると、人間は他の動物に比べて、殺し合いを行う確率が高いとされているからだ。この記事では人間が同種間で殺し合う理由までは言及されていなかったが、私の考える理由は人間の営みである「他者とのかかわり」から発生する以下三つである。他者との差が存在することによる恨みもしくは差の原因の奪取、相手から受けた嫌がらせの妬み、価値観のぶつかり合いである。例えば、最近世の中を騒がせている電車内の包丁振り回し事件は、2つ目の理由から発生した殺し合いである。2021年8月に発生した小田急線殺傷事件では、容疑者は「幸せそうな人生を送る女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」「かつてサークル活動で知り合った女性に見下された」と動機について話している。(東京新聞の記事より引用)昔世界各地で起きていた、より良い土壌や水源を求めて土地を奪い合うための殺し合いは、理由1に当たるだろう。

 この論文では、理由の一つ目「他者との差が存在することによる恨みもしくは差の原因の奪取」による殺し合いについて深く考えていきたい。

 当然、愛する人を失い、自分の命も脅かされる殺し合いは、避けたいものである。異種族の攻撃から社会を守るために、城壁を築いたことは授業でも紹介のあった通りだ。これにより城壁内の生活が安定し、都市が発展していった。現代には、昔ほど城壁に守られた都市は少ないだろう。なぜ、城壁が無くても殺し合いが発生しなくなったのか。それは近代国家への転換による、ソフト面の整備が整ったからだと考える。殺しを働くにはいくつかのステップがあるだろう。殺しのための知識入手、相手の地への侵入、殺しのための道具の入手、仲間との相談、ターゲットの防御の破壊がある。これらのステップをソフト整備により抑え込んでいる。人を殺める可能性のある高度な技術は国家資格が必要であったり、外国に入国するにはパスポートが必要であったり、犯罪を犯すと警察に逮捕され、法律により罰せられる。また、人を殺してはいけないという教育もされている。このようなソフト整備により、城壁が無くても比較的平和に過ごせる近代国家が形成されたのではないだろうか。

 しかし、ソフト整備というのは、仕組みを変えてしまえば簡単に変えられるものである。仮に「一生のうち一人は殺してもよい」といったルールができてしまえば、殺人が楽に行えるようになってしまう。日本は平和だから少々イメージが付きづらいが、北京オリンピックのボイコットで話題になっているウイグル人虐殺などが最近の例だろう。中国の思想(ルール)に基づき殺しや拷問が許されている、と言ってもよい状況だと言われている。仕組みというのは、たった一人の権力者の手によって、がらりと変わる危険性を秘めている。この危険が日本でも表出していると捉える ことができるのが、最近ニュースになった武蔵野市の外国人住民投票案である。この条例案は、「投票資格を3か月以上、市内に住所がある18歳以上とし、実質的に外国籍の住民も日本国籍の住民と同じ要件で参加できる」ようにする条例案であった。この案は否決されたが、市長は再提出に意欲を示しているようである。市長は先進性、多様性が認められる社会を目指しているようだが、この条例案は危険思想を持った外国人を日本の国政に参加させる危険性を秘めている。例えば、望む選挙結果になるよう、選挙の3か月前に武蔵野市に引っ越し、自分の都合のいい公約を掲げている人に投票し、選挙が終わったらまた自国に帰る、という動きができてしまうのだ。もし、外国で日本のことを恨めしく思っていて、日本のソフト整備を壊そうと考える人々が一気に流れ込み、リーダーを決めてしまったらどうなるだろうか?当然、外国人全員がそんな思想を持っているとは思わないし、外国の方が同じように選挙権を持てないのは確かにかわいそうだとは思う。しかし、外国人も帰化という方法で、5年以上日本に住み続け、素行や金銭が安定していて、他の国籍を有していなければ日本国籍を取得することができる。(法務省HPより)このハードルが今回のような条例で下げられてしまうと、悪だくみをしている人が簡単に日本を狙えるようになってしまうのである。

 以上で見てきたように、実は人間は殺しと隣り合わせで生きており、この危険性から守ってくれている制度たちは、破綻する可能性を秘めている。つまり私たちは殺しによって明日の命を脅かされる可能性を皆持っているということだ。

 この可能性をどう低めていくか、以下考えていこう。殺人の原因として冒頭で、「他者との差が存在することによる恨みもしくは差の原因の奪取」を挙げた。この原因を排除できることが最も望ましいのだが、正直他者との差を0にすることはできない。貧富の差は、努力すれば全員が文化的に豊かな生活を送る水準まで差を縮めることは可能かもしれない。しかし、「親ガチャ」という言葉が流行ったように親の良し悪しや、容姿、才能の有無などの差はどうしても存在してしまう。差がない世界はクローンの世界でしか実現できないであろうし、そんな世の中は一見ユートピアに見えるが、差が0の世界は自分が何者か認識することができないディストピアである。自分の価値を見出せず、生きている意味を感じられないだろう。原因が排除できないのであれば、やはりソフト整備が殺し合いの実施を抑制するものであるよう、保つことが必要である。

 私は、万全なソフト整備を保つためには、人間の本能として、恨み・奪い合い・殺し合いがあることを忘れずに仕組みを見張ることが大切だと考える。基本的に仕組みを変えられるのは政治家である。また、仕組み改編の時は大体どこかのメディアが取り上げてくれる。政治家の情報をメディアを通してしっかりとキャッチし、「悪用されないか?」「悪用されるルートは閉ざす二重の仕組みが作られているか?」を見張ることである。危ういと思った時はSNS発信、デモへの参加、リコール運動などに参加することができる。また、そういう怪しい動きをしそうな政治家を投票で落とすこともできる。このように、私たち一般人は仕組みづくりに関わることはできないが、仕組みを注視し、考え、仕組みづくりに関わる人を変えることができる。これにより、私たちは自分の手で自分や大切な人の命を守ることができるのだ。

 日本には殺人を可能にするような仕組みを作ろうとする魔の手は及んでこない、と思い込んでいると、痛い目を見るかもしれない。世界ではむごい殺人が起こっていて、海という日本を囲む城壁は、飛行機や船など交通の発達により、破壊されたと言ってもよいだろう。災害を受けても立ち上がる日本の素晴らしい技術力やシステムを奪いに来る、もしくは潰しに来る者がいるかもしれない。城壁がない中、守ってくれるのは、人間の手で変えられる仕組みなのである。いつ何時でも平和に過ごすためには、以上で述べたことを心にとめ、常に政治を見張る姿勢が大切だ。平和を守るのは、トップの人ではなく、あなた自身、もっと言うとあなたの一票だということを忘れてはいけない。

<参考文献>
NATIONAL GEOGRAPHICS『人類は暴力とともに進化、ただし現代は例外的』(2016/9/30)
<https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/093000371/>(2021/12/24閲覧)

奥村圭吾 東京新聞『小田急線刺傷 対馬容疑者、女性に恨み「くそみたいな人生…サークルで見下され、出会い系で断られ」』(2021/8/7)
<https://www.tokyo-np.co.jp/article/122734>(2021/12/24閲覧)

Wikipedia 城郭都市
<https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9F%8E%E9%83%AD%E9%83%BD%E5%B8%82#%E5%9F%8E%E9%83%AD%E9%83%BD%E5%B8%82%E3%81%AE%E4%BE%8B%EF%BC%88%E5%9F%8E%E5%A3%81%E3%81%8C%E7%8F%BE%E5%AD%98%EF%BC%89>(2021/12/24閲覧)

橋爪大三郎 PRESIDENT Online『「生かしたまま民族を消滅させる」中国共産党がウイグルで進めている恐怖のプロジェクト』(2021/9/30)
<https://president.jp/articles/-/50371?page=1>(2021/12/24閲覧)

NHK NEWS WEB 『東京 武蔵野市 住民投票案 市議会本会議で否決』(2021/12/21)
<https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20211221/1000074082.html>(2021/12/24閲覧)

法務省「国籍Q&A」
<https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html#a06>(2021/12/24閲覧)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿