Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

管楽器のユニゾン : 位相引き込み同期

2014-06-02 08:21:33 | 科学


前にも同種の動画をご紹介したが,多少固有振動数が異なる振動体は同期してしまうという現象は,見ていて飽きない.

振動を利用している,楽器の場合はどうだろう.

ビブラフォンには共鳴用のパイプがぶら下がっていて,その固有振動数は音板の音程に合わせてある.このパイプを2本にしてその長さを変えたら,ビブラート (物理用語では「うなり」あるいはビート) が生じるのではないか? というのが,某先生のアイデアであった.実験してみると,ビブラート現象は起こらないようだった ← 曖昧な表現だが,「起こった」と言うのは簡単だが,「起こらない」というのは難しいのだ.

より条件を単純化すれば,パイプだけを2本並べることになる.この実験は 19 世紀に,あの有名なレイリーが2本のパイプオルガンのパイプを並べて行っていた.結果は若干の振動数の違いは解消し,つまり2本の振動数は一致し,極端な場合は消音するというものだった,消音するのは,位相が 180 度ずれて安定化するからである.
ビブラフォンの共鳴管を2本にしても,振動数は一致すれば,ビブラート現象は起こらないはずだ.しかし積極的に「消音」したようにも思えなかった.

現代になって,非線形振動の引き込み現象という立場からこの結果が見直されている.しかし下の論文のダウンロードは有償なので,ここで文献調査は断念.
M. Abel, S. Bergweiler and R. Gerhard-Multhaupt,"Synchronization of organ pipes: experimental observations and modeling", J. Acoust. Soc. Am. 119, 2467 (2006); http://dx.doi.org/10.1121/1.2170441

この現象はパイプが近接していないと起こらない.実際のパイプオルガンでは同じ長さのパイプは離して配置してあると言うことだ.

こちらの動画は2パイプの計算機シミュレーションである.途中でポーズすると逆位相なのが分かる.いっぽうが吐くときにいっぽうが吸うのが,安定ということだろうか.
この現象を雑音軽減に応用しようと言う試みもあるらしい.
同位相化が可能なら,合奏でユニゾンを完璧にするために,何らかの工作をほどこせばこの現象を利用できるかもしれない.しかし,位相まで一致したユニゾンが聞いていておもしろいかどうかは別な問題だ.



蛙の合唱や蛍の同期発光 (下の動画) も引き込み同期とされている.ただし管や振り子の場合のような位相引き込みではなく,生物同士の同期は生体が持つリズムの引き込みと言った方が良さそうだ.この動画は蛍の同期発光だが,まるでクリスマスツリーのイルミネーションのようだ.


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2 コメント

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オープンアクセスの文献 (16とん)
2014-06-02 09:51:32
長嶺拓夫,佐藤勇一「同期現象とその応用」日本機械学会論文集(C篇)71(2005)1113
http://ci.nii.ac.jp/els/110006264641.pdf?id=ART0008283692&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1401670013&cp=
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追記 集英社新書 (16とん)
2014-06-09 14:39:58
5 月に刊行されたばかりの
蔵本由紀「非線形科学 同期する世界」にオルガンのパイプに関する記述があります.
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