黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

弁護士を目指した人の「死」

2013-04-08 20:27:09 | 弁護士業務
 私事ですが,黒猫の友人が亡くなりました。死因は薬の飲みすぎだそうです。
 弁護士にはなれなかったけど,事務員として黒猫の仕事をよく助けてくれた人でした。
 あのブラック事務所で,身も心もボロボロになるまで働いて,全てを一人で背負い込んで,それで自分の命まで絶ってしまったら何にもならないだろうに。
 今回は,別に何かをお知らせするような記事ではありません。ただ,彼のために何か一筆残しておきたいと思っただけです。

 この日本は,世界一治安が安定している国などと言われますが,それでも精神疾患にかかった一人の若者が自ら死を選んだ程度では,別にニュースにもなりません。特に警察や医療関係者などであれば,おそらくそんな光景は日常的に見ているでしょう。
 しかも,弁護士は人の不幸で飯を食っている商売です。自分の仕事のために,あるときは人の借金を踏み倒させて,あるときは人の金をむしり取って,またあるときは犯罪者の味方をして,それで安らかな死を迎え天国に行こうなんて考える方が間違っているのかも知れません。
 司法改革で,多くの人が法曹になりたいと思い,法科大学院の門戸を叩きました。その中には,様々な事情で中途退学を余儀なくされた人,三振により司法試験の受験資格を失った人,弁護士資格を得ても職のない人,いわゆるブラック事務所で心身ともに消耗してしまう人がたくさんいます。その中には彼のように精神疾患にかかり,孤独な死を迎えた人も少なくないでしょう。
 でも,それは弁護士業界に限った話ではありません。年間の自殺者数は15年ぶりに3万人を下回り,昨年は27,766人になったそうですが,弁護士を目指して死んだ人も,他の業界で死んだ人といっしょくたにされて,そのような統計上の数字に呑み込まれていくだけです。そしてそれは正しいのかも知れません。
 だから,黒猫も死んだ人が可哀想だから司法制度を何とかしろ,なんてことは言いません。黒猫のみならず,誰しも自分が生きていくことで精一杯だから,このままでは死を選んでしまうような人に救いの手を差し伸べることもできません。このブログでも,このままでは法曹を目指す人がいなくなるなんて政策論めいたことしか言いません。黒猫は本質的に非情なのでしょう。
 でも時折,そんなやり方が本当に正しいのかと思うことがあります。
 何も出来ないまま,大切な友人を失ったときなどは特に。
 

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2013-04-10 11:29:05
法テラスのスタッフ弁護士で自殺した人がいたという書き込みは、他のブログで見たことがあります。
若く優秀でそれこそ志の高い人だったようですが、法テラスの仕事内容ではかえってそれが裏目に出たようです。
砂に水を撒くような仕事を抱え込み、良心的な対応をした挙句消耗しきって絶望する事は、むしろまともな神経を持った人間にとって当然の結果なのかも知れません。
幸か不幸か、今の修習生はそもそも楽に高収入と高い社会的地位を得られる事に魅力を感じていた人が多く、駄目なら他の職種に転身しようという割り切りが出来ているようなので、そういったケースは減っていくと思いますが。可能性があるとしたら、不景気で転職がままならない層の不満が爆発する事でしょうか。
hmecho@yeah.net (mcitp)
2013-04-10 16:23:32
幸か不幸か、今の修習生はそもそも楽に高収入と高い社会的地位を得られる事に魅力を感じていた人が多く、駄目なら他の職種に転身しようという割り切りが出来ているようなので、そういったケースは減っていくと思いますが。可能性があるとしたら、不景気で転職がままならない層の不満が爆発する事でしょうか