黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

司法改革の真の目的は?

2013-04-06 12:51:17 | 弁護士業務
 今,『僕は依頼者が少ない』(例の三日月さんが出てくるお話)の続きを書いているところなので,今回は多少ジョークの入ったお話になります。

 東京弁護士会『LIBRA』2013年4月号2~3頁より抜粋
「このような状況の中で,近時の新入会員については,次のような指摘を耳にするようになった。
 第1は,司法試験合格者の急増により司法研修所の1クラスの人数が多くなったことや修習期間短縮の結果,司法研修所同期の人的つながりが弱くなり,胸襟を開いて自らの悩みや困りごとを相談する相手がいないという傾向がみられること。
 第2は,法科大学院の教育内容のバラつきと実務修習の短縮により,実践教育が不足している若手会員が増加していること。(このことは,裁判所や検察庁も同様の認識をしており,新任の裁判官や検察官の研修に特段の手当てをしていると聴いている)。
 第3に,就職問題を含む経済的困難を抱えた会員が増える中で,そのことも要因の一つとなって,弁護士登録後にメンタル面での障害を発症する会員の割合が増加の傾向にあること。」


 このような説明に続いて,2012年度から実施されているクラス制(東弁では,新入会員を20人ごとのクラスに分け,年に7回ほどクラス別の研修を行うことになっています),蒲田法律相談センターにおける若手支援,チューター制度,会員サポート窓口の紹介などが続くのですが,その中に『こころの相談“ほっと”ライン』の紹介もあります。
 東弁では,会員のメンタルヘルスケアのため,2008年度からティーベック株式会社に業務委託して,こころの相談“ほっと”ラインを開設しているそうで,会員やその配偶者等であれば年に5回まで,心理カウンセラーによる面談カウンセリングを受けられるそうです。LIBRAの4月号には,リーフレットも同封されていました。
 もっとも,心理カウンセラーによるカウンセリングには自ずと限界があり,米国シカゴ弁護士会などの制度を模倣して作られたチューター制度はなぜかあまり利用されておらず(3年間で利用者28人),若手会員も会員サポート窓口への相談に流れる傾向があるようです。
 LIBRA4月号の10~11頁によると,以下のような相談があるそうです。
<相談に応じている事項>
① 利益相反・弁護士法25条関係などに関する事件の受任・辞任の問題
② 事務所の開設・閉鎖に関する相談
③ 病気・精神疾患等による休業,会費免除に関する相談
<原則として相談に応じていない事項>
① 具体的な業務に関する相談
 訴状や準備書面の書き方,示談交渉の進め方,証拠資料の集め方などの相談には応じていないが,この種の事件を受任して良いか,この種の受任中案件を途中で辞任しても問題ないかなどという角度からの相談には応じており,実際にこの種の相談は少なくないそうです。
② 懲戒請求・紛議調停にかかっている,もしくは間もなくかかりそうな案件,非弁提携の疑われる案件
 懲戒請求や紛議調停まではいっていないものの,依頼者もしくは案件の紹介者との間でトラブルになっているというような案件については,若手会員に限っては相談に応じるようにしているそうです。
③ 事務所の移籍に関する相談
④ ボス弁,イソ弁,同僚弁護士との間におけるトラブルに関する相談
⑤ 事務所の経営難に関する相談
⑥ 独立の仕方に関する相談
 一般会員については相談対象外としているが,若手会員に限っては広く相談に応じるものとしており,特に④に関しては,事務所からの退職を強く迫られているのだがどうしたらよいかという相談が多くなっているそうです。
⑦ 夫婦間のトラブル,健康上の問題,借金問題その他純粋に個人的な相談
 若手会員であっても相談対象外としているが,精神面で変調をきたしてしまった結果,受任事件の遂行が困難になっているという案件に限っては,可能な限りの相談に応じているそうです。

 何というか,『焼け石に水』と評するしかありません。


 一方,裁判員制度については・・・・・・
2012年7月17日
 札幌地裁において,強盗殺人未遂事件の開廷から約1時間半後,検察官が被害者の供述調書を朗読している間に,女性裁判員が卒倒しました。この日は,検察側が血だまりとなった現場を裁判員に提示したり,被害にあった従業員が「もう駄目だ」などと荒い息で119番している声を録音したテープが廷内に流されたり,検察官が「被害者が死んだ振りをするまで刺し続けた」などと説明するといった生々しいやり取りが行われたため,裁判員がショックを受けたとみられています。
2012年9月21日
 鳥取地裁において,強盗殺人等の罪に問われた女性の裁判について裁判員選任手続きが行われたところ,重大困難な事件である上に75日間という長期間の審理予定も影響したのか,候補者700人を選んだものの,592人が事前に辞退。最終的に出頭を求めた79人のうち,出頭したのは55人。さらに当日17人の辞退が認められ,残った38人から抽選で裁判員6人と補充裁判員4人が選ばれました。
2013年2月26日
 岐阜地裁において,殺人や傷害致死等の罪に問われた48歳男性の公判手続中,突然女性裁判員が倒れ,その日に予定されていた公判手続きが中止になりました。この日の午前中の審理では,被害者の死体画像がモニターに映し出されており,やはりショックを受けたことが原因とみられています。
2013年3月5日
 奈良地裁において,強盗殺人等の罪に問われた36歳の男に対し,求刑どおり無期懲役の刑が言い渡されました。この事件では,被告人は死体遺棄・損壊は認める一方,カードの使用などは被害者の承諾を得ていたとして,強盗や殺害に関しては一貫して否認。死因や殺害方法も不明で,凶器や遺体の大部分も発見に至ってないという状況で,検察側は状況証拠に依拠して有罪を主張し,55日間にわたる裁判の末,判決は強盗殺人を認めました。裁判員の中には,途中で体調を崩す人もいましたが,励まし合って何とか乗り切ってきたそうです。
 裁判終了後の裁判員の声。
眠れなくてつらかったです。それでも写真などを見なければいけないし、評議しなければならないと思いました」
想像を絶することに対しても想像しながら聞かなければいけないので、非常にきつかった」

 その他,これまでにも各地の地裁で,裁判員が審理中に突然倒れた,廊下をふらふら歩いていた,青い顔をして戻ってこなかったなどの事例が報告されており,昨年秋までに裁判員を解任された人は累計384人,実に10数件に1件の割合で裁判員の解任が行われているそうです(いずれも『裁判員制度はいらない! 大運動』ウェブサイトより)。
 裁判員や補充裁判員であった人については,メンタルヘルスのサポート制度が設けられており,5回まで相談は無料ということですが,裁判員になってPTSDにでもかかったら,一体誰が補償してくれるのでしょうか(法律上は,裁判員は裁判所の非常勤職員であり,国家公務員災害補償法の適用対象になるそうですが,実際に十分な補償が行われているかどうかは分かりません)。

 こうして見ていると,司法改革の隠された真の目的は,精神疾患の患者を増やして,医者やカウンセラーを儲けさせることにあったのではないかと勘繰りたくなりますね。

25 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-04-06 13:17:09
対処療法しかできないほど、症状が悪化しているのでしょうね。
弁護士会には根本治療(激増政策破棄、法科大学院受験要件撤廃)をする力も意思も能力もないしね。
今の業界には、対処療法もほとんど効果なし。崩壊の苦痛を和らげる効果すらないねwww
Unknown (Unknown)
2013-04-06 15:38:10
理念だけは一見立派だが、中身のない「改革」によって失われたものは多いと思います。
Unknown (Unknown)
2013-04-06 18:03:56
多分5年以内に大きな変革が訪れることでしょう。
LSは自然に瓦解すると思います。
予想できたはず (とおりすがり)
2013-04-06 20:59:04
一般市民が残虐な事件の詳細を知るのはかなり無理がありますよね。グロ好きの私でも少女が輪姦された事件を傍聴したときはかなりショックでトラウマものでした。
Unknown (Unknown)
2013-04-07 00:15:20
>>第3に,就職問題を含む経済的困難を抱えた会員が増える中で,そのことも要因の一つとなって,弁護士登録後にメンタル面での障害を発症する会員の割合が増加の傾向にあること。

こういう人たちの面倒は大手四大がやればいいだけです。
仕事がラクでお金も余っているのだから十分に余裕はあります。
Unknown (Unknown)
2013-04-07 01:06:20
四大って実際仕事はキツいの?ラクなの?
Unknown (Unknown)
2013-04-07 01:09:14
四大はキツいキツいとは言われているが実際のところ楽勝。
Unknown (Unknown)
2013-04-07 01:33:03
四大大手君は、大企業から税金をたんまり取ればいいと繰り返す共産党みたいなもんですか?

それは政策なのですか?精神論?あてつけ?
Unknown (Unknown)
2013-04-07 10:49:08
あてつけでしょ。自分より若いのが、どんどん受かって、高給とってることに対する。
大手の実態を知ってる人(現役弁護士)なら、大手に嫉妬なんてしないからね。
Unknown (Unknown)
2013-04-07 12:03:36

そうやってむきになって反論すること自体あなたも大手に嫉妬しているわけですね。