NHKのプレミアムシアターで彼の生誕80年を記念して下記の放送がOn airされた。20日に録画を観て感想を述べようと思っていたら、アバドの訃報を知り、中断してしまった。
◇ドキュメンタリー
作曲家ペンデレツキ 迷宮の小道
彼の自伝だが、クラカウ大学での作曲家コンクールに一人1作の規定にかかわらず、どうしても西側に出たいとの思いから、偽名を使い3曲作曲しそれが1-3位を独占したとのことから、彼の人生が始まったことを知った。また映画監督アンジェイ・ワイダとの出会いが、彼の作品である「カティンの森」の音楽を担当したことからだという。ワイダの父親とペンデレッキの叔父がともに虐殺されたとのことで二人の関係は近づいたとのことだが、政治行動はワイダほど彼には哲学はなかったことを知る。むしろ彼には「西側へのあこがれが」が原動力だったように思えた。したがってルイジ・ノーノ様な体制批判の思想も、ブーレーズのような「現代音楽」の地平を切り裂くことの挫折もなく、スティーヴ・ライヒのような時代の証人としての音楽ではなかった。彼の音楽は、やはり「ルカ受難曲」であり、それ以後は「現代音楽」という手法を上手く取り入れた、クラシック音楽コンサートゴアーに受け入れられる作曲家として大家になった。
しかしかれの以後の作品はこのドキュメンタリーでも明らかに、「誰々にささげられた・・・の曲」「何々の記念のための音楽」となった。彼はだからこそその得た財産を永遠に続くであろう「森のある公園」に注ぎ、彼の曲が折に触れ演奏されるであろうホールに注いだのだろう。と思わせる構成でドキュメンタリーは終わった。
◇ペンデレツキ 80歳バースデー・コンサート
<演 目>
1.広島の犠牲者に捧(ささ)げる哀歌
2.バイオリンとコントラバスのためのデュオ・コンチェルタンテ
3.3つのチェロとオーケストラのためのコンチェルト・グロッソ 4.クレド
記念演奏会は「 広島の犠牲者に捧(ささ)げる哀歌」をウルバンスキーという若い指揮者が振って始まった。正直この曲だけが演奏された曲の中では、現代音楽家ペンデレツキの曲で、2-4曲は言ってしまえば、耳触りのよい曲だが、私にはウルバンスキーの指揮だったら聞いていたか疑問だ。「デュトワなりゲルギエフが振るから聞いてみた」曲だった。しかし老いてなお作曲に情熱を注ぐ彼の生きざまを聴きそのエネルギーには驚嘆した。
私の推薦CD(推薦というにはおこがましいが手持ちのCDです)
① ② ③
① は自作自演による現代作曲家としての代表作が2枚のCDに網羅されている 。「 広島の犠牲者に捧(ささ)げる哀歌」は表題があるからこそ、日本人には受け入れられるのだが、もし仮に表題が「トーンクラスターによる主題と変容」としたらどうなっていただろうか?。でもやはりこの曲は「ルカ受難曲」同様20世紀音楽の代表作だと思う。またかれのチェロ協奏曲も私は好きだ。
② は20世紀のフルート協奏曲と題され、武満徹の「海へⅡ」が聴きたくて購入したCDの中にペンデレツキのフルート協奏曲が抱き合わせされていたが、断然武満作品のほうが素晴らしい。
③ はヘルベルト・ケーゲル指揮の20世紀前半の曲を中心とした15枚組CDの中に「 広島の犠牲者に捧(ささ)げる哀歌」が含まれている。15枚はどれも素晴らしい名演ぞろいだが、広島とデッサウのSea of Tempestは特筆に値する。
彼の作品で最初に感動し、今もって彼の最高傑作だと思う「ルカ受難曲」について
2007年11月のMy Blogに以下をUpしております。
http://blog.goo.ne.jp/yyamamot7493/e/2fdf77817af6aec0afd03ca771dfce0f
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