録画の取り崩しの中に、NHKで放映されたルルがあった。すっかり忘れていた。放映された日は定かでないが、いずれにしても、まだサラリーマン時代であり、かつおふくろの介護と容態の悪化で厳しい状態の時期であったことはまちがいない。
その時期に正直「あえて見たい」作品ではなかったといえる。このところ天候が悪い(鳥撮りにはよくない日)時には家で音楽を聴くことにしており、ルルに関してはすでにMy blog (2007/02/11)でふれているが、今回観たルルはバイロイト同様にドイツ人の自己喪失感というよりユーロを含め国際化社会の中で、「歴史観」が失われていく過程を感じた。原作を改編し、時代に合わせたという牽強付会のもとに「新たな価値観」という演出家の自己満足を「新解釈」で表現したとするここ数年のバイロイトにおけるワグナー同様の試みを、ベルリン国立歌劇場も行ったのだ。ここには歌劇「ルル」の価値は私には感じられなかった。音楽の流れを断ち切ってしまっては話の筋もとおらない。
My Blog http://blog.goo.ne.jp/yyamamot7493/e/82d4d1764957db56eac4c52910e35395
<出 演>
ルル:モイツァ・エルトマン
ゲシュヴィッツ伯爵令嬢:デボラ・ポラスキ
衣装係/ギムナジウムの学生:アンナ・ラプコフスカヤ
ワルター(画家)/黒人:シュテファン・リューガマー
シェーン博士/切り裂きジャック:ミヒャエル・フォレ
アルヴァ:トーマス・ピフカ
力業師:トーマス・J・マイア
シゴルヒ:ユルゲン・リン
公爵/使用人:ウォルフガング・アプリンガー・シュペルハッケ
劇場支配人:ヨハン・ウェルナー・プライン
ゴル博士(医事顧問)/教授:ウォルフガング・ヒュプシュ
ルルの分身:ブランカ・モドラ、リアーネ・オスヴァルト
<管弦楽>ベルリン国立歌劇場
<指揮>ダニエル・バレンボイム
<演 出>アンドレア・ブレート
収録:2012年4月14日
シラー劇場(ベルリン)
私のその他の手持ち
最初に聴いたのは、カール・ベームの二幕未完編のCDだった。ここでのベームの音楽は、最良の時代のものだろう。ウィーンフィルとの来日時の演奏とは雲泥の差で構成の取れたきっちりしたものだが、正直購入時は「歌劇ルル」を理解はできていなかったが交響詩としては最高だといまでも思っている。
ベーム / ベルリン・ドイツ・オペラo. リアー(S)ジョンソン(Ms)ドリスコル(T)ディックス(Br)他
ツェルハの補完による全曲盤はDVDの時代になって、全曲初演時のLIVEのDVDを購入したのが最初だった。しかしこれは海賊版にひとしい出来で商品化そのものが画質のひどさに腹が立つほどで詐欺にあったような怒りを覚えた。ただなんとなく「物語」を理解できる程度の代物だった。
いまのところ私が人様にお勧めできるのは全曲盤はBestではないが消去法からはシェーファーがルルを歌うグラインドボーン音楽祭のLive盤だ。演出家の独善的舞台よりも、ホールオペラに近い椅子と照明と回転舞台だけの何もない舞台のほうが、物語も音楽もわかりやすい。
・ベルク:歌劇『ルル』全曲(三幕版全曲)
クリスティーネ・シェーファー
キャサリン・ハリーズ
ヴォルフガング・シェーネ、他
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
アンドリュー・デイヴィス(指揮)
演出:グレアム・ヴィック
画面:カラー、4:3
音声:Dolby Digital Stereo
日本語字幕付き
NTSC
二幕版はお勧めはあまりできないが唯一つの手持ち故だが、原作にほぼ忠実な舞台だが、少女が魔性の女に変身するストーリーだが、アイキンは出鼻から魔性の女として登場する。そこが評価の分かれ目か。
・ベルク:歌劇『ルル』2幕版
ルル:ローラ・アイキン(ソプラノ)
ゲシュヴィッツ伯爵令嬢:コルネリア・カリッシュ(メゾ・ソプラノ)
医事顧問官:ペーター・ケラー(バス)
画家:スティーヴ・ダヴィスリム(テノール)
シェーン博士:アルフレッド・ムフ(バリトン)
アルヴァ:ペーター・シュトラーカ(テノール)
シゴルヒ:グィド・ゲッツェン(バス)
中学生:アンドレア・ベーニヒ(メゾ・ソプラノ)
劇場支配人:カタリーナ・ピーツ、他
チューリヒ歌劇場管弦楽団
フランツ・ヴェルザー=メスト(指揮)
演出:スヴェン=エリク・ベヒトルフ
装置:ロルフ・グリッテンベルク
衣装:マリアンネ・グリッテンベルク
照明:ユルゲン・ホフマン
収録時期:2002年
収録場所:チューリヒ歌劇場(ライヴ)
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