よいコンサートだった。
メゾソプラノの波多野睦美さんが、ソプラノの森麻季さんとペルゴレージのスタバト・マーテル(聖母マリアが、我が子イエスキリストが十字架刑になった時の悲しみを歌った曲)をデュエットすると知って、これは何としても聞きに行かなければ・・と思った次第。
そもそもこのコンサートは・・・
東日本大震災復興支援チャリティーコンサート~クラシックエイドVol3~
@東京オペラシティーコンサートホール
震災の年から始まって今年3回目のチャリティーコンサートだそうである。
司会の作曲家・千住明さんは、
「クラシック音楽は100年先に残って来た。だから自分たち音楽家は100年先に残ることをやっていかなければならない。まだまだ必要な東北の復興のために我々は生涯協力したい。」と。
多くの素晴らしいクラシック奏者たちが一堂に会して復興のための募金をするのが目的で、初回が500万円強、昨年が300万円強、いずれも東北の音楽の復興に役立てたそうだ。
いきなりお目当てのデュオが始まる。遅刻しないでよかった!
演奏はこの日のためにユニットを組んだ若手アンサンブルで、その意気揚々とした登場の仕方はソリストの集りだと思う。
もう、イントロが流れて来ただけで卒倒しそうになる。涙なくしては聞けない。
しかし、ソプラノとメゾソプラノはこうも音色が違うものかな・・・と、思った。
森麻季さんは、名うての美人で凄まじく息の持つ方。高音の激しい跳躍の間、ノンブレスで歌い切る当たり、フィギュアスケートで言えばさしずめ4回転半かも。
対する波多野さんは、そっけない風情でどっしりと。歌う前に祈るように1点を見つめていて、その視線の先が、前列から7番目の中央という良い席に座っているわたくしとピッタリだったので、わたくしは金縛りに会ったような気がした。
森さんが姿も声も線が細いのに対して、波多野さんの太い声は意気揚々としたアンサンブルの演奏にも何の遜色なく前へ前へと伸びてくる。素晴らしい!!
しかし私の座っている場所からは、森さんの声は何だか後ろに向かって飛んで行くようで、アンサンブルの音量にかき消される箇所もあり。
アンサンブルの皆さんは、歌の伴奏の時はもっと音量下げればいいのに・・と思った。。
引き続きの登場は福島県の高校合唱部。女声合唱。
震災当初、歌どころではない空気があったが、しばらくして彼女たちが練習を始めると、その歌声を聞いた人たちは、「歌が聞こえる。歌が歌えるようになった。」と思ったそうだ。
この事を千住明さんは「音楽の正体を見た。」と表現した。まさに、そういうことだろう。
繊細に澄んだハーモニーが本当に本当に素晴らしい!
会場には涙をぬぐう人たちも沢山居た。
2部の始まりに、会場が湧く。
2階席前列に天皇、皇后両陛下が登場。
大きな拍手が湧きあがった。
2部は若手ピアニストのエネルギッシュなリストや、千住明さん編曲の素敵なバイオリン曲「荒城の月」など、いい感じで進んだのだが、コンサートのまとめが見えてくると、音楽的テンションはだんだん下がったかもしれない。
特に「MIYOTA」とか「川の流れのように」が、あんな風に歌詞不鮮明なまま歌われるのは、わたくしは好まない。
後半やや残念な点はあったものの、力のある音楽家が力を合わせることで叶うことがちゃんとあるのだ。
出演者の皆さんに大きな拍手を送りたい。
コンサートのプログラムは以下の通りです。
<第1部>―――――
~寄り添う心~
ペルゴレージ:
スターバト・マーテル
(悲しみの聖母)より
第1曲、第2曲、第4曲
第6曲、第9曲、第12曲
指揮:梅田俊明
ソプラノ:森麻季 アルト:波多野睦美・・・・・・・・聞けて良かった~!
アンサンブル・カスケード(リーダー:滝千春)
~音楽に勇気づけられて~
千住明/覚和歌子:坂道の歌
合唱:福島県立葵高等学校
宮沢賢治/鈴木輝昭:「イーハトーヴ組曲」から”ポラーノの広場”・・・面白い曲。歌ってみたい。
合唱:福島県立葵高等学校
指揮:瓶子美穂子(合唱部顧問)
ピアノ:鈴木あずさ
<第2部>―――――
~音楽に希望をのせて~
《金子三勇士(ピアノ)》・・・・・・・・パワフルな演奏でした。
リスト:ハンガリー狂詩曲第2番
《千住真理子(ヴァイオリン) 丸山滋(ピアノ)》
滝廉太郎(千住明編):荒城の月・・・・・・・・・美しいアレンジだった。
成田為三(千住明編):浜辺の歌
《仲道郁代(ピアノ)》
ショパン:夜想曲第20番「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」
ショパン:ポロネーズ 第6番 変イ長調「英雄」Op.53
《鮫島有美子(ソプラノ) 丸山滋(ピアノ)》
谷川俊太郎/武満徹:MI・YO・TA
秋元康/見岳章:川の流れのように
小嶋登/坂本浩美:旅立ちの日に