リカリズムな日常

6拍子に彩られた破天荒な毎日

ちょいとお待ちよ車屋さん

2011年04月20日 | 鑑定スケジュールやスピ話

歌に出てくる車屋さんは恋のキューピット役をし損ねる役柄でしたが、
あたしの前世ではその車屋さん本人に恋をするという時代があったようです。
最近はこのビジョンにとらわれてしまっています。

良家のお嬢様と呼ばれて想像しうるキャラそのまんまの人生を送ってた当時の私は交通手段は徒歩でもはいからさんのように自転車でもなく、馬車でした。
女学校に行くにもおけいこごとにいくにもどこぞの御呼ばれに参加するにも、この馬車。
その馬車を管理してる人を「車屋さん」と呼んでました。
その車屋さん、どうやらうち専属のお人らしい。
だいたい15、6歳のころからずっと同じ人でした。

年ごろの私が恋をするのはたやすいこととはいえ、なるほどなかなかいいセンス。
まわりにいたボンボンのヤサオトコや腹黒成金よりも、風来坊にも似たつかみどころのないキャラの彼にどんどん惹かれていったんですね。

世間を知りたい気持ちが強いのに、家柄や女性という世間の目が邪魔してどうにも経験できない。
自分の知らない世界を知ってるであろう車屋さんとちょっとだけする会話はとても興味深かったんです。

その車屋さん、余計なことはほとんどしゃべらない。けれど、ちょっと私が落ち込んでたり世間知らずなことをやらかしたりするとそっとはげましたりやんわり叱ったりしてくれる。
わがままでプライドばっか高かった女でしたから最初はイラっ!としまくってましたが、だんだんと心開いてしまって。
そこからなんとかこちらを向かせたくて、あの手この手で振り回そうとします。
けれど相手はそんな幼稚な作戦に乗ってくるほど馬鹿な男ではなく。いつでもマイペース。

勝手に傷ついたり、勝手にまた好きになってみたり。
そうしてるうちに本気で好きになってしまってました。
本気で好きになりゃ、何も知らない相手でも気持ちがわかってくるもんです。
多分、私を大事に思ってくれていた。きっと私を好きだと、感じるようになってました。
とはいえ、あの時代ですから親睦を深めるなんて無理に等しい。
馬車の前と座席でぽつぽつ交わす会話だけが許される唯一のこと。
私の思いこみも強かった。「女たるものがはしたない事をすべきじゃない」という。
今の私なら、紙切れの一枚も手ににぎりゃせりゃいいじゃんって思うのに。
やんないんだなー。

彼女、名前を「藤子(とうこ)」というらしいです。
藤子が一回だけ、車屋さんにプレゼントをしたことがありました。

車屋さんが送り迎えに来てくれる待機時間、彼がいったいなにをしてるのか知りたくて、学校サボってそっと見てたことがありまして。
そのとき初めて知ったんですね、車屋さんが喫煙家だということを。
お勤めの最中、家族が乗る馬車で煙草を吸うなんて知る人が知れば一大事なんです。
しょっちゅう吸ってたわけじゃなく、ごくたまにしか吸わなかったようですが、それでも藤子は彼の最大の秘密を知った気になって有頂天になります。

彼が吸ってたのは紙タバコだったようですが、上質なキセルをプレゼントしたくてこっそりこっそり準備します。
私本人が買いに行こうものなら大変なことになるので、お手伝いさんの友達のお手伝いさんのお知り合いさんにまで迷惑かけて買ってきてもらいます。

デザインに散々悩んだり、キセルに必要な道具がなんなのかも知らないのでその辺わたわたとしますが、結局、ちょっとおばさんくさい色柄の、ずんぐりとしたキセルが手元に。
もっと色鮮やかなものもあったはずなのに、そういうたぐいのものだとなんだか彼に似合わないのです。
とはいえ結果、なんだかなーってなものになっちゃったけれど、それでも包んでやっとの思いで渡します。
「私はあなたの秘密を知っています。けれど吸ってくださって構いません。そしてあなたを想っています」って意味合いのプレゼントだったんだな。

つっけんどんに渡してしまって飛んで帰り、数日反応を待ったけれど。
これがなんにも言わない。気に入ってもらえたのかそうじゃないのかも怖くて確かめられない。
ああ、きっと捨ててしまわれたんだわと勝手に嘆きながらも車屋さんの顔色をうかがうも、まあこれが確信がつかめない。超絶マイペース男です。
それが最初で最後の告白めいた行為でした。

あの時代で、私は23歳まで結婚を拒否しつづけます。
良縁があっても首を縦に振れなかった。
でもとうとう、24歳の時にはいい加減世間の目に耐えきれず親の言う通りの結婚話に乗ります。

そして結納が済み、白無垢が縫い上がり、大量の紅白餅が用意され、着々と結婚に向けて準備が進む中、車屋さんが私を奪い去ってくれないかと願うようになります。

そして結婚当日が近づくある日、思い余って、いつものように馬車を降りる手伝いをしてくれた車屋さんの手元を握ってしまいます。
何度も言ってしまうけれど、あの時代、あの身分差で相手の手を女から握るなんて今で言うと好きな人の前で裸になるも同然の行為なんです。
無言で握って必死に見つめたけれど、彼から返って来た言葉は「なんですか?」だけ。
そこで、長年の思いを一気にあきらめ、絶望します。


その後どうしたのか。
嫁いだもののわがまま放題やって出戻ったのか。
一家の味噌っかすとして狂ったふりをして一生をやり過ごしたのか。
どんな死に方をしたのかもまだわかってません。

藤子はたしかに私に良く似ている。すごく私っぽい。
環境や条件を優先して感情を押し込められる優雅さを持っていようとするところまで似てる。
ぐじぐじ悩んで遠回りをするところまで似てて嫌いになりそうなくらいです。
けど、結局優雅なんて程遠い性格してたんだから。認めて、ちゃんと立ち向かわなくては。
周りいっぱい迷惑かけて、結局自分のしたいことをしてるんだから、そこは、さー。
って思うけれど。じゃあどうしたらよかったの?って言われたら今の私だってわからない。


けど。
きっとこの結末を導き出すのが、今の私のやるべきことなんだな。
本当にやりたいことを突き通して非難されても胸を張るのか。
前より大きな覚悟を持って自分の感情に折り合いをつけるのか。

より豊かな歌を歌うには、どっちをどう選ぶべきか。
それが問題だ・・・。

まぁ、楽しんでやってこうと思います。


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