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鎌倉を歩く19月影地蔵

2014-03-08 05:34:43 | Weblog
鎌倉を歩く 19
           月影地蔵



                   (写真はクリックしてみてください)

 「おい、知ってる?」「何だ」「彼、入院した」「聞いた。この年齢になると、まあ、
仕方ない」「入院生活はいやだね」「ピンピンコロリで往きたい」「そうだなあ」「ピンコロ
で往くには、それまで元気でなければならない」「そう、適度のウオーキングを続けよう」
「今日はどこを歩く?」「月影地蔵はどうか」「月影?いい名だ。行こう」

歩く:鎌倉駅 江の電で極楽寺駅下車、陸橋を西に向かって歩く

 「月影なんとかという東映のチャンバラ映画をみたことがある」「素浪人・月影兵庫だ」
「よく覚えているなあ」「近衛十四郎と品川隆二」「思いだした。のんびり近衛と、ちゃら
ちゃら品川のコンビがおもしろかった」「あのころ、家にテレビがなく、よく映画館に行
ったなあ」「そう。市川右太衛門、片岡千恵蔵、大川橋蔵、大友柳太郎などの映画。お前
に付き合わされた」「名前をいわれると、役者の顔が頭にうかぶ」

 「話しながら歩いているうちに、月影地蔵に着いた」「おや、婆さん、いや、お姉さま
が二人座ってる。こんにちわ」「あら、お元気なお兄さまたち」「そう言ってもらうと嬉し
い。静かでいいとこですね」「でしょう。おしゃべりにはいいとこよ」「この石墓の文字は
元禄と読める」「もう、いいから、こっちへ来な」「女なら婆さんでも、でれでれしたがる。
昔からだ」「何か言った?」

「お住まいはこの近くですか?」「この山の向こうの月影ガ谷(やつ)です。散歩でここ
まできました」「おや、ここは月影ガ谷ではないの?」「はい。元は月影ガ谷にあった  
お地蔵様をここに移したといわれます」「月影地蔵の本籍はお隣りの谷」「いいとこよ、
月がとってもきれいに見えます」「やはり、そうなんだ。満月の夜は散歩したくなる」
「家に帰って寝るのが惜しいほどです」「案内書に、月影ガ谷の入り口に阿仏邸旧跡の
石碑があります」「ちょっと、わかりにくい所です。ご案内しましょうか」「お願いします」

歩く:極楽寺前に戻り、海(南)に向かって、だらだら坂を下りきる。

「この小さな川が極楽寺川、川に架かっているのが針磨(はりすり)橋です」「これは 
川というより溝だ」「針摩橋の碑がある。これでは見逃すなあ」「鎌倉十橋の一つで、昔、
針摩を業とした者が住んでいた、とある」

「ここから川に沿って少しのぼり、踏切を渡ります」「おやおや、これって、迷路だね」
「線路の横に石碑があります」「なるほど。建治三年京を出でて東に下り、居を月影ガ谷
とす、と読める。建治三年といえば」「1277年だ。一六夜(いざよい)日記を覚えている
だろう」「試験に出るから、覚えている」「そのころ、この谷はすでに月影ガ谷と呼ばれて
いた」「石碑を見ているうちに、彼女たちは消えてしまった」「お礼が言えなかった」

「案内書に、海に向かって歩くと、十一人塚がある」「もう、いい。電車に乗って鎌倉駅
にもどり飲(や)るか」「稲村ガ崎へ出て、鎌倉駅まで歩いて帰ろう」「それはたいへんだ。
前に歩いて、けっこうな道のりだった」「歩くのは健康にいいよ」「そんなこと言うたかて」
「ピンコロを願ってるんだろう?」「当たりまえだ」「お前の軍歌など聴きたい」「そうか」
「のどが乾いてビールがうまい」「歩くあるく」「単純な男だ。すぐのせられる」「え?な
に」「なんでもない」