前の続きです。
さて、昨日の映画に話を戻すと、信頼の置ける雑誌や新聞でかなり高い評価がされて
いたから、期待してたのに、内容がないだけではなく、アジアに対する時代錯誤な偏見
と先入観。こんな映画を評価するこの国のメディアに大きな不信感を抱いてしまいました。
批評に頼りすぎる私もいけないんだけど。
ストーリーもくだらなくて、お抱え営業スパイ(実は変態)を雇っているとある工場の社長(?)
が、自社ロビーに飾るフレスコを担当している陶芸家に恋をする。彼女といい感じになりそう
になると、スパイや部下から邪魔が入り、ようやくめでたく結ばれたところでスパイが彼女の
部屋に仕掛けた隠しカメラが発覚し元の木阿弥に。最後はありふれたハッピーエンド。
主人公の工場は中国企業と提携することになっているらしく、一昔前の日本人のステレオ
タイプを思わせるような、エコノミックアニマルそのものの中国人がよく出てくる上、主役で
ある社長の部屋では、いかにもわざとらしく中国語の会話練習テープがかかっているという
具合。
一方、恋人役の女流陶芸家は、日本びいきで日本語を話すという設定。
この日本語がものすごくうそっぽい上、日本人を名乗る力士もどきが出てきて、おかしな
アクセントの日本語(どこが日本人だ!)で、「ボクハカイダンヲツカウヨ。ダイジョウブダヨ。」
などとのたまい、階段を登りきったところで心臓発作を起こしそうになるなど、フランス人の
アジア理解ってこの程度なのと唖然するような内容が山積み。「箸(バゲット)とバゲットを
絡めた程度低すぎのジョークにはひいてしまった。この監督って俗物の権化なのかな。
こんなくだらないジョークに大喜びできる観客も観客。お陰でこの街の住人への不信感まで
膨れ上がった。こんなにおバカな街だったなんて。
それにしても、パリは中国人街も日本人街もあるんだし、東洋風を狙うのなら、たとえそれが
単なる皮肉だとしても、せめて本物の日本人を使うくらいのことはして欲しかった。
日本語を話せるヨーロッパ人だって今じゃあ山ほどいるのだから、エキゾティックな言語とは
言え、あんな怪しげな俳優を日本人だなんて言ったら、この監督の知的レベルが疑われると
思うんだけど。(実際、私の周りには、私よりうまいんじゃないかと思うような達者な日本語
を話す友人がたくさんいる。)江戸時代ならともかく、いくらシラクが相撲マニアで芸者の愛人
がいるとは言え、日本といえばすぐに相撲と寿司に結びつけるのはやめてくれと言いたい。
やっぱりフランスって、胃の中、じゃなくて井の中の蛙の国なのかな。
トゥールーズ在住のルーマニア人が、ラジオのインタビューに答えて、「ここの人たちったら、
ルーマニア=ローガン、ポーランド人=水道夫の図式しかないんだから、いい加減、いやに
なっちゃうわよ。これって差別じゃない?これから同じ共同体で生きていく国に対してこんな
に無知でいられるなんて信じられない!ルーマニア人の方がよっぽどよく知ってるわ。」と
息巻いてたけど、彼女の気持ち、わかるなぁ。
とそれほど日本に愛着があるわけでもない私がついつい熱くなってしまいました。
長文、ごめんなさい。