2016年3月4日
「道警おとり捜査、違法」 ロシア人、再審決定 札幌地裁
北海道小樽市で1997年に拳銃を所持したとして、銃刀法違反罪で実刑判決(懲役2年)が確定した元船員のロシア人男性、アンドレイ・ノボショーロフさん(46)が「北海道警のおとり捜査は違法だった」とした再審請求について、札幌地裁(佐伯恒治裁判長)は3日、再審開始を認める決定をした。
「国家が作った銃器犯罪」
佐伯裁判長は「捜査協力者が拳銃と中古車の交換を持ち掛け、犯意を誘発した。本件おとり捜査はおよそ犯罪捜査の名に値するものではなく、重大な違法があるのは明らか」などと違法捜査と断定し、無罪を言い渡すべきだとした。
弁護団によると、違法なおとり捜査を認めた裁判所の判断は、極めて異例という。
決定などによると、捜査に関わった元道警警部(事件後に警部補から昇進)は、来道するロシア人相手に中古車販売業を営んでいたパキスタン人の捜査協力者に「何でもいいから拳銃を持ってこさせろ」と日ごろから指示。
このためパキスタン人は、97年8月に初来日して中古車店を回っていたノボショーロフさんに「拳銃があれば中古車と交換してやる」と持ち掛けた。
ノボショーロフさんは同11月に再来日して小樽港を訪れ、父の遺品の拳銃をパキスタン人に渡そうとしたが、待機していた道警の捜査員に現行犯逮捕された。
公判では「捜査協力者にそそのかされた」と無罪を主張。
98年8月、札幌地裁はおとり捜査を認定せず懲役2年の判決を言い渡し、服役した。
その後、元警部が2002年に覚せい剤取締法違反容疑で逮捕されたことをきっかけに、道警側の公判での虚偽証言や虚偽の捜査書類の作成などが発覚。
元警部自身、自らの公判などで違法なおとり捜査があったと証言していた。
13年9月、ノボショーロフさんが札幌地裁に再審請求し、弁護側が元警部の証言などを「新証拠」として提出。
今回の決定はこれを重視して再審開始決定の重要な根拠とした。
決定では「銃器犯罪に縁のない男性だった。しかし犯罪を抑止すべき国家が自ら新たな銃器犯罪を作りだし、国民の生命、身体の安全を脅かした」と道警の捜査を批判。
有罪とした拳銃などの証拠を「将来の違法捜査抑止の観点からも、証拠能力は認められない」と結論付けた。
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