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2016年11月17日
普天間爆音訴訟:国に賠償命令 3395人に24.5億円
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の周辺住民3417人が、国を相手取って米軍機の飛行差し止めと騒音被害に対する損害賠償などを求めた「第2次普天間爆音訴訟」で、那覇地裁沖縄支部は17日、原告のうち3395人について過去の騒音被害を認め、国に総額約24億5800万円を賠償するよう命じる判決を言い渡した。
藤倉徹也裁判長は「1次訴訟の判決確定から4年以上が経過しているが、日米両政府の被害防止対策に特段の変化は見られず、住民の違法な被害が漫然と放置されていると評価されてもやむをえない」と国の姿勢を厳しく指弾した。
米軍機の飛行差し止めは1次訴訟同様に棄却した。
原告側は控訴する方針。
藤倉裁判長は「国民全体が利益を受ける一方、原告らを含む一部少数者に特別の犠牲が強いられていると言わざるを得ず、看過することのできない不公平が存在する」とも指摘。
爆音による被害を再び認めた今回の判決で、普天間飛行場の県外移設を求める県民の声はさらに強まりそうだ。
米軍機の飛行差し止めを巡っては、これまで「国の支配が及ばない第三者(米軍)の行為の差し止めを求めることはできない」とする司法判断(第三者行為論)が定着し、請求が阻まれてきた。
今回も「日米安全保障条約などで国は米軍機の運航を規制制限する立場になく、差し止め請求に理由がない」として退けた。
このため住民側は2次訴訟で新たに、日米両政府が1972年に締結した「普天間基地提供協定」の違憲性を訴え、国が違法な爆音を放置し続けている状態も違憲と主張したが、藤倉裁判長は「具体的な権利義務に関する請求といえず、不適法」などとして違憲の訴えを却下した。
騒音被害については「会話、電話、家族団らんなど日常生活のさまざまな面での妨害、精神的苦痛、睡眠妨害、高血圧症発生の健康上の悪影響のリスク増大も生じている。社会生活上受忍すべき限度を超える違法な権利侵害だ」とした。
騒音の程度を示す「うるささ指数(W値)」が75以上の原告に1カ月当たり7000円、80以上の原告に同1万3000円の慰謝料を認めた。
慰謝料額は1次訴訟の2審・福岡高裁那覇支部判決(2010年7月)より1カ月当たりでそれぞれ約1000円ずつ増額した。
W値が75未満の原告の請求は棄却した。
1次訴訟確定後の12年10月から新たに24機が配備された米軍新型輸送機オスプレイについては「被害が増大したと認めるには足りない」と判断。
1次訴訟の2審判決が認めた普天間飛行場の常駐機の主力部隊となるヘリコプターなどの低周波音による被害については「圧迫感など心理的負担を生じさせ、生活妨害、精神的被害、睡眠妨害の一因となっていると認められる」として引き続き認容した。
将来分の騒音被害に対する損害については、厚木基地(神奈川県)の騒音を巡る第4次訴訟の東京高裁判決(15年7月)が初めて認めたため今回も判断が注目されたが、却下した。
1次訴訟では、原告約400人の過去の騒音被害を認めて国に総額約3億6900万円の賠償を命じ、米軍機の飛行差し止めは退ける2審判決が確定。
周辺住民らはその後も国が騒音被害を放置しているとして12年3月に2次訴訟を起こした。
原告は宜野湾市と周辺の浦添市、北中城村の住民で、1次訴訟の8倍以上。
ほとんどがW値が75と80の区域に居住し、区域から外れているが境界付近に住む住民約20人も原告に加わった。
沖縄県宜野湾市の中心部にある米海兵隊基地。
面積は約480ヘクタールで、市域の4分の1を占める。
米軍新型輸送機オスプレイ24機やヘリコプター、固定翼機など40機以上が常駐する。
1945年の沖縄戦で米軍が土地を強制的に接収して建設し、周囲には土地を奪われた住民らの住宅や学校などが密集。「世界一危険な飛行場」とされ、2004年には隣接する沖縄国際大にヘリが墜落した。
日米両政府は1996年4月に県内移設を条件に全面返還で合意。
名護市辺野古への移設を進めるが、2014年の知事選で移設阻止を訴えて初当選した翁長雄志(おなが・たけし)知事が反対し、激しい対立が続いている。
加重等価平均騒音レベル(WECPNL)の略称。
国際民間航空機関が定めた航空機騒音の評価指標で、騒音の高低だけでなく、飛行回数や時間帯を加味して算出する。
環境省の環境基準は、住宅地を中心とする地域はW値70以下と定め、国の防音工事助成措置はW値75以上の区域で実施される。
菅義偉官房長官は17日午前の記者会見で、那覇地裁沖縄支部判決について「国の主張に裁判所の十分な理解が得られなかった。今後の取り扱いは関係省庁が調整し、適切に対応していく」と述べた。
毎日新聞