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アオムシコマユバチApanteles glomeratus L. に関する豆知識
インターネット情報で調べてみた程度で申し訳ありませんが下記のような記述を見ています。私なりに要点をまとめました。原著にはあたっていませんがそれぞれとても興味深いものです。
DANILEVSKY(1961)の総説によれば,アオムシコマユバチApanteles glomeratus L.は,多化性のオオモンシロチョウPieris brassicae L.を宿主としたときは比較的低温でしかも短日の条件のときに前始期での休眠に入るが, 年1化のエゾシロチョウAporia cratagei L.に寄生した場合は1令期に宿主の休眠幼虫体内で越冬し,春になってエゾシロチョウ幼虫の休眠が終了しない限り,活性化されない。
日本ではアオムシコマユバチはモンシロチョウ幼虫を主要な宿主としているが エゾシロチョウにもよく寄生する。エゾシロチョウの場合は1令幼虫期に卵を産み付けられ越冬後、終令幼虫近くになって幼虫体内で急速に大きくなるのではなかろうか。
また北海道に侵入・繁殖したオオモンシロチョウにも寄生する。モンシロチョウとオオモンシロチョウは蛹越冬なので、アオムシコマユバチ幼生はこれらの蝶の蛹のなかで休眠し越冬するのだろうか。
夏場はこの寄生蜂は、モンシロチョウの幼虫の体内に約80個の卵を産卵する。産卵後約14日で、アオムシ(サムライ)コマユバチの幼虫は寄主の体を食い破り、繭を作って蛹化する。蛹化後約7日で寄生蜂の成虫が羽化する。
このタッパの中で羽化したアオムシコマユバチがワンワン飛んでいます。
性決定は他の多くのハチと同じく、半数倍数性であり、受精卵(2n)からはメスが、未受精卵(n)からはオスが生まれる。
キャベツなどのアブラナ科植物は、モンシロチョウの幼虫に加害されると特徴的な揮発性の化学物質を放出する。食害された植物が S0S を発信するのだ。この物質はカイロモンと言われ、アオムシコマユバチのメスは、このカイロモンを頼りに飛来する。その後、触覚で葉をドラミングすることで、モンシロチョウの幼虫の居場所を突き止める。
メス蜂が産卵する時に、寄主制御物質としてvenom(毒液)、polydnavirus(ポリドナウイルス)、卵巣タンパク質を卵と共に寄主に注入する。モンシロチョウの幼虫は、免疫系として、フェノールオキシダーゼによる液性免疫と血球による細胞性免疫を有しているが、これらは、寄主制御物質により抑制される。このため、寄生蜂の卵及び孵化した幼虫は、異物と認識される事がなく、寄主体内で免疫系に攻撃されることなく生育が可能となっている。
寄主体内に産卵された後3日ほどでアオムシコマユバチの1令幼虫が孵化する。孵化する際に、卵の漿膜由来の細胞が寄主体内にばらまかれ、この細胞をテラトサイトと呼ぶ。
寄生蜂の幼虫は、寄主の体液を吸収して生育しており、親蜂の注入した物質やテラトサイトがその生育に関する補助を行っている。ただし、テラトサイトの機能については、寄生蜂の種ごとに様々な機能が報告されており、研究が進んでいる途中である。アオムシコマユバチは、一度脱皮をし、寄生後約14日で、80匹が一斉に寄主表皮を食い破って外部に出てくる。この時に、最後の脱皮をしながら出てきて、寄主の上で黄色い繭の集塊を形成する。
アオムシコマユバチの蛹に対する高次寄生蜂としてアオムシコバチが存在する。こんな小さな寄生蜂に、さらに寄生する超小型の寄生蜂がいるとは驚き。もしかしてさらに高次の寄生蜂がいたりして.....。
4-5日、そのままにしておいたらアオムシコマユバチの多くはタッパの中で死んでいた。
生きているのも少しいた。
ルーペでみながら計測すると このアオムシコマユバチたちは 脚は飴色、体長約2~2.5mm 羽根の開長約4.5~5.0mm 触角の長さは約2.5~3.2mm, 透明な羽の前縁の黒点がある。
エゾシロチョウはユーラシア大陸北部に広く分布しているが、日本では北海道だけに分布する。道内では平地から低山地に普通に見られ、住宅地に植栽されているバラ科の植物で大発生することもあるが、寄生蜂アオムシ(サムライ)コマユバチによる攻撃も多く、それによって発生量のバランスがとれているように見える。
エゾシロチョウは一般的に食害してもその木を枯らすようなことはないと言われるのは寄生蜂による適度なコントロールが効いていることを示唆しているのかもしれない。
寄生蜂による適度なコントロールが失われるとエゾシロチョウは爆発的に大発生し、食樹を枯らして全滅させ、結果みずからの存続をも出来なくなり絶滅してゆく可能性があるとおもう。ただ、エゾシロチョウの食樹には実に多くの種類があり( バラ科、ツツジ科、カバノキ科、さらにはヤナギ科など )、滅多なことではそんな危機はこないかもしれない。ナナカマドまで食べていることを私が報告したことがある。
寄生性昆虫の中には、寄主の脳を乗っ取り、行動を操作することにより天敵から逃れるものがいる。この脳ののっとりはきわめて興味深い。
多寄生性寄生蜂アオムシコマユバチは、自らの繭塊を二次寄生蜂から守るために、寄主幼虫オオモンシロチョウの行動を操作する。本種寄生蜂はオオモンシロチョウ幼虫から脱出するとその場で繭塊を形成するが、オオモンシロチョウ幼虫はすぐには死なずに、繭塊に近づくものに対して威嚇し追い払う行動をとる。
寄生されたモンシロチョウ幼虫の行動は活発ではなくへたり切って、オオモンシロのような行動はとらない。
さて、エゾシロチョウではどうだろうか。 今回、我が家の庭の赤ボケに発生した数百匹のエゾシロチョウ幼虫を観察する機会があり、さらに色々のことを知った。
この項 続く。
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アオムシコマユバチApanteles glomeratus L. に関する豆知識
インターネット情報で調べてみた程度で申し訳ありませんが下記のような記述を見ています。私なりに要点をまとめました。原著にはあたっていませんがそれぞれとても興味深いものです。
DANILEVSKY(1961)の総説によれば,アオムシコマユバチApanteles glomeratus L.は,多化性のオオモンシロチョウPieris brassicae L.を宿主としたときは比較的低温でしかも短日の条件のときに前始期での休眠に入るが, 年1化のエゾシロチョウAporia cratagei L.に寄生した場合は1令期に宿主の休眠幼虫体内で越冬し,春になってエゾシロチョウ幼虫の休眠が終了しない限り,活性化されない。
日本ではアオムシコマユバチはモンシロチョウ幼虫を主要な宿主としているが エゾシロチョウにもよく寄生する。エゾシロチョウの場合は1令幼虫期に卵を産み付けられ越冬後、終令幼虫近くになって幼虫体内で急速に大きくなるのではなかろうか。
また北海道に侵入・繁殖したオオモンシロチョウにも寄生する。モンシロチョウとオオモンシロチョウは蛹越冬なので、アオムシコマユバチ幼生はこれらの蝶の蛹のなかで休眠し越冬するのだろうか。
夏場はこの寄生蜂は、モンシロチョウの幼虫の体内に約80個の卵を産卵する。産卵後約14日で、アオムシ(サムライ)コマユバチの幼虫は寄主の体を食い破り、繭を作って蛹化する。蛹化後約7日で寄生蜂の成虫が羽化する。
このタッパの中で羽化したアオムシコマユバチがワンワン飛んでいます。
性決定は他の多くのハチと同じく、半数倍数性であり、受精卵(2n)からはメスが、未受精卵(n)からはオスが生まれる。
キャベツなどのアブラナ科植物は、モンシロチョウの幼虫に加害されると特徴的な揮発性の化学物質を放出する。食害された植物が S0S を発信するのだ。この物質はカイロモンと言われ、アオムシコマユバチのメスは、このカイロモンを頼りに飛来する。その後、触覚で葉をドラミングすることで、モンシロチョウの幼虫の居場所を突き止める。
メス蜂が産卵する時に、寄主制御物質としてvenom(毒液)、polydnavirus(ポリドナウイルス)、卵巣タンパク質を卵と共に寄主に注入する。モンシロチョウの幼虫は、免疫系として、フェノールオキシダーゼによる液性免疫と血球による細胞性免疫を有しているが、これらは、寄主制御物質により抑制される。このため、寄生蜂の卵及び孵化した幼虫は、異物と認識される事がなく、寄主体内で免疫系に攻撃されることなく生育が可能となっている。
寄主体内に産卵された後3日ほどでアオムシコマユバチの1令幼虫が孵化する。孵化する際に、卵の漿膜由来の細胞が寄主体内にばらまかれ、この細胞をテラトサイトと呼ぶ。
寄生蜂の幼虫は、寄主の体液を吸収して生育しており、親蜂の注入した物質やテラトサイトがその生育に関する補助を行っている。ただし、テラトサイトの機能については、寄生蜂の種ごとに様々な機能が報告されており、研究が進んでいる途中である。アオムシコマユバチは、一度脱皮をし、寄生後約14日で、80匹が一斉に寄主表皮を食い破って外部に出てくる。この時に、最後の脱皮をしながら出てきて、寄主の上で黄色い繭の集塊を形成する。
アオムシコマユバチの蛹に対する高次寄生蜂としてアオムシコバチが存在する。こんな小さな寄生蜂に、さらに寄生する超小型の寄生蜂がいるとは驚き。もしかしてさらに高次の寄生蜂がいたりして.....。
4-5日、そのままにしておいたらアオムシコマユバチの多くはタッパの中で死んでいた。
生きているのも少しいた。
ルーペでみながら計測すると このアオムシコマユバチたちは 脚は飴色、体長約2~2.5mm 羽根の開長約4.5~5.0mm 触角の長さは約2.5~3.2mm, 透明な羽の前縁の黒点がある。
エゾシロチョウはユーラシア大陸北部に広く分布しているが、日本では北海道だけに分布する。道内では平地から低山地に普通に見られ、住宅地に植栽されているバラ科の植物で大発生することもあるが、寄生蜂アオムシ(サムライ)コマユバチによる攻撃も多く、それによって発生量のバランスがとれているように見える。
エゾシロチョウは一般的に食害してもその木を枯らすようなことはないと言われるのは寄生蜂による適度なコントロールが効いていることを示唆しているのかもしれない。
寄生蜂による適度なコントロールが失われるとエゾシロチョウは爆発的に大発生し、食樹を枯らして全滅させ、結果みずからの存続をも出来なくなり絶滅してゆく可能性があるとおもう。ただ、エゾシロチョウの食樹には実に多くの種類があり( バラ科、ツツジ科、カバノキ科、さらにはヤナギ科など )、滅多なことではそんな危機はこないかもしれない。ナナカマドまで食べていることを私が報告したことがある。
寄生性昆虫の中には、寄主の脳を乗っ取り、行動を操作することにより天敵から逃れるものがいる。この脳ののっとりはきわめて興味深い。
多寄生性寄生蜂アオムシコマユバチは、自らの繭塊を二次寄生蜂から守るために、寄主幼虫オオモンシロチョウの行動を操作する。本種寄生蜂はオオモンシロチョウ幼虫から脱出するとその場で繭塊を形成するが、オオモンシロチョウ幼虫はすぐには死なずに、繭塊に近づくものに対して威嚇し追い払う行動をとる。
寄生されたモンシロチョウ幼虫の行動は活発ではなくへたり切って、オオモンシロのような行動はとらない。
さて、エゾシロチョウではどうだろうか。 今回、我が家の庭の赤ボケに発生した数百匹のエゾシロチョウ幼虫を観察する機会があり、さらに色々のことを知った。
この項 続く。
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