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2013年3月9日(土) 晴れ
浦山大日堂→天目山林道→大ネド尾根→稜線→福寿草自生地→稜線→峠ノ尾根→地蔵峠→浦山大日堂
早春の花が咲く頃になると大ドッケの福寿草を思い出す。登山道もなく、山の斜面にまだ雪が残る山間にぽっかりと大きく広がった福寿草の大群落。太陽の光を浴びて、静かに黄金の色を輝かせている姿が忘れられない。この自生地が見頃となるのはいつも決まって春分の日あたりである。今回は雪の中から顔を覗かせてる福寿草を観たく、少々早目に訪ねることにした。この自生地を紹介している情報はたくさんある。新ハイキングや山と渓谷の本にも紹介され、「秘密の花園」とも呼ばれていた。今はネット社会でもあり、その手の情報は多く、「花新田」とか「大ドッケの福寿草」とかで紹介されているようだ。また、松浦本にもこの地のことが詳細に書かれ、興味ある山の経験豊富な方もやって来る。しかし、安易に訪れることは遭難する可能性もあるだろう。単独でやって来た方が間違った沢へ入ってしまい、たどり着けなかったという話しを去年聞いた。崩落した場所もあり、登山道もなく、勿論標識も何もない。それに入る沢筋が不明瞭な場所だ。しかし、今となっては秘密の花園もへったくれもない。某会社では今年、4月にツアーまで組んでいる様子。数十名の団体で押し寄せるツアー会社の商売から、この地が荒れてしまうのではないかと心配するのは小生だけではないようだ。地元の方に見守られてきた大切な自然をいつまでも残したい。そんなこともあり、訪れるときは遠巻きに眺める事を心がけている。その為に、いつも三脚と望遠レンズは欠かせない。川俣橋を渡り「新秩父線61号に至る」を目印に右の細い道へ入るのが一般的だが、ひねくれ者の私は今回天目山林道を直進し、大ネド尾根から入ることにした。
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<壊れた作業小屋>
いつもの大日堂バス停横に駐車する。まだ福寿草は咲いていないのか、一台も車はなかった。集落の家の煙突からは煙がもくもくと立ち上がっている。ジャラジャラと熊よけの鈴を鳴らし天目山林道へ入った。途中の民家では黒い犬が放し飼いにされていた。鈴の音を聞いたのか、ワンワンと吠えはじめる。知らん顔して通り過ごそうと思ったが、しっぽを振り振り近寄って来た。それも大きい黒い犬だ。幼い頃、背後からがぶっと噛まれた想い出があり、犬は嫌いな動物である。近づいた時は一瞬その恐怖心を思い出した。尾根への取り付きは水道の施設を過ぎ、黄色い保安林の看板があるところに作業道だと思うが、薄い踏み跡が付けられている。そこから進行方向から右斜め上へ戻る感じで登る。天目山林道からは壊れた小さな作業小屋が見える場所だ。
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<大ネド尾根の下部>
壊れた作業小屋を横目に、斜め左へ曲り緩やかに登る。すると植林から抜け出た尾根先端の場所へ導かれた。あとは忠実に尾根に沿って進むだけである。手入れが行き届いた綺麗な明るい杉林が続き、のんびり歩いた。
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<峠ノ尾根を>
しばらく登ると一つ目のピークに出た。合い向かいに峠ノ尾根が眺める。大持山の西尾根ものぞめるが見晴しはあまり良くない。冬枯れの雑木林越しの眺めだ。
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<明るい雑木林>
標高を上げるに連れ、北側の斜面に雪が目立ちはじめた。日当たりの良い南側は相変らず杉の木が植林されいるままだ。
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<自然林がきれい>
休憩場所を探しながら登って来たが、やっとその場所に到達する。冬の木立が広がる明るい平地だ。この先どれほど登るのか分からないが、峠ノ尾根を見る限り、それほどまだ登っていないようだ。横たわった大木に腰を下ろし、にぎり飯とパンを食べる。ここ連日暖かい日が続いているが、今日も初夏を感じさせるような暑さだ。
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<三ツドッケが近くに>
尾根上の平らな広い場所を進むにはいささか注意が必要だ。進むべき尾根の方角を見定める必要がある。ここまで目印となるものを探して来なかった。常に高い場所を選んで狭い尾根を登るだけであったからだ。時々目にするリボンを頼りに、また近くに見える山の位置を参考に現在歩いている場所を頭の中でイメージする。
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<尾根上部>
尾根を上がれば上がるほど景色が変化した。植林から雑木林へ、そして枯れたスズタケが生い茂げり、たくさんの大木が現れた。自然がたくさん残るいい風景だ。
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<尾根上部>
とても明るい尾根だ。人間もこんな場所がいいと思えば熊も同じだろう。この辺りには上を見上げれば熊だな、足元には熊の糞が至る所にあった。乾燥しきった糞なので恐らく時間はだいぶ経過している。雪の上には熊の足跡もなく、鹿が歩いたトレースだけで安心した。
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<もう直ぐ稜線へ>
大平山へ進む稜線へじきに上がれるようだ。目の前の青い空が低く見えはじめた。武甲山の姿も現れ、だいぶ上がって来たことが実感できる。このクソ暑い日に3時間ちかく登って来た。それとも真冬のいでたちで来たのが間違ったのか。いずれにしても汗が噴き出る思いである。
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<稜線から福寿草自生地への降下点>
やれやれ、やっと稜線に出た。雪は残るものの去年より少ないようだ。いよいよ福寿草の自生地へ降下する。どんな感じで花が迎えてくれるか、ワクワクする。踏み跡はなかったが、ここへ来ると一人分の足跡が残されていた。まだ新しく、本日のものだ。足跡の方向からすれば峠ノ尾根を登って、ここから自生地へ降りて行った様子。早速私も下る。
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<福寿草自生は右の谷間>
思ったほど雪は残っていないようだ。日当たりの良い場所はすっかり地肌が見える。下から男性2名が上がって来た。二人とも長靴である。福寿草はちょうどいい感じで咲いているという。自生地には誰もいない様子だ。高ぶる気持ちをおさえ、見覚えのある場所へ降下した。まだ、まばらだが目的の黄金の花、福寿草が明るい日差しを受けて咲いていた。雪はまったく残っていない。これから辺り一面に咲き出すのだろう。足元に気を使い、花芽は踏まない、落石もさせない、抜き足、差し足、忍び足で最下部へ下った。合い向かいの谷間に陣取り、三脚と望遠をセットする。下から覗き込むように撮りだす。以下は自生地で咲き出した福寿草だ。
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<福寿草自生地>
雪が解けてしまい拍子抜けしたが、福寿草の大群落に夢中になり長い時間を過ごしてしまった。お腹が空いてきた。ご飯を食べてそろそろ切り上げよう。ポカポカ陽気なので訪れる人も数人いるだろうと考えていたが、誰も訪れる様子がない。時々、頭上でガラガラと落石の音が聞こえるだけだ。このまま下りたいが、予定通り再び稜線へ登り返す準備をする。
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<武甲山>
食べた後は体が重い。急坂を下ったのだから、その分急登である。大ドッケへは沢の右側、大群落の右寄りの支尾根に踏み跡をたどって乗る。
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<登り返し>
支尾根からは一直線に笹ヤブに捕まりながら稜線を目指す。雪があると難儀するが、今日はまったくない。しかし、落葉の積もった土は柔らかく、足を取られながらの急登である。
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<大平山への稜線>
一汗かいて登り上げた。さて、これからは下る一方だ。足元は凍っているが小枝に捕まり、ストックを使えばアイゼンがなくても差し支えない。
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<時々空を眺めて>
ここの尾根を下るのは数年ぶりだ。時々、振り返りながら記憶の景色を呼び戻す。大ドッケは一般的に1,315m点とされているが、そこには「大平山方面・川俣毛附」と書かれた道標があるだけだ。
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<秩父さくら湖>
緩やかに下り、次に1,260mあたりの小さなコブに乗る。ここから派生するのはバラモ尾根と峠ノ尾根である。踏み跡の濃い右の峠ノ尾根へ下山だ。古びた赤いテープがいくつも巻きつけられ、ここが大ドッケだという平成24年7月の日付の入った新しいプレートが掛けられていた。ここの小コブを最近の昭文社の山と高原地図では大ドッケだと改版されていた。しかし、同じ昭文社でも2,000年度版では1,315mが大ドッケと記してある。
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<仙元尾根>
峠ノ尾根を下ればしだいにヤブは薄くなり、前方に大持山、武甲山が、更に下れば右側に伐採地が広がり、天目背稜の北面が一望出来る。今朝登った大ネド尾根の上に仙元峠から落ちる仙元尾根が重なり、有間山がその奥に眺められた。
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<峠ノ尾根>
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<高ワラビ尾根>
左に雑木と送電線の鉄塔を眺め、右側が植林された尾根を急降下する。尾根から外れ右の巻き道をたどれば新秩父線61号の鉄塔下へたどり着いた。あとは巡視路の標識を確認しながら下るだけだ。途中、細久保集落からの山道と合わさるが、そこには大平山へのプレートが置かれている。
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<地蔵峠>
ここまで下山すると安心だ。いつものお地蔵様が出迎えてくれる地蔵峠だ。更に巡視路を下れば天目山林道と交わり渓流荘前のバス停に出る。春本番の陽気に誘われ、今年も大ドッケの福寿草に出合うことが出来、程よい疲れで充実感を味わう。水の流れる沢の音を聞きながら歩けば、地元の方から声を掛けられた。盆栽の手入れをしていたその方と世間話しをしているうちに、家の中へ案内されてお茶までご馳走になってしまった。ちょうど2リットルの水を全部飲み切ってしまい、喉が乾いていたのでそのお言葉に甘えてしまったわけだ。見ず知らずの私に何杯もお茶をついでくれて、きんぴらやら漬物やらお茶菓子が出てきた。恐縮しながら頂き、山間に暮らす地元の温かい心に感謝した。
福寿草、いい具合に咲いていますね。まだ少し早いかなと思っておりましたが。積雪もそんなにないようですね。昨年のどなたかの記事に荒らされている写真が載っていましたが大丈夫のようでした?
あんぱんさんの記事でこれから混むかも。
大ネド尾根からですか。あんぱんさんの過去のHP記事も拝見いたしましたが、なかなかのお歩きですね。感心しております。
たそがれさんが歩いたバラモ尾根、考えてみましたが私にはまだまだ修業が足りないような尾根でした。それに大ネド尾根も興味深々で拝見していましたよ。
福寿草は咲きはじめてまだ間もない様子で、落葉の下に眠っている芽もありました。見頃はやはり春分の日あたりでしょうかね。
それから、行きたい山を検索すると、たそがれさんが度々出てきますが、やはりたそがれさんはただものではありませんでしたね。
昨年こちらでお会いしてから一年が過ぎたのですね。
実は私たちも10日ここに登ろうと思っていたのですよ。
でもずっと行きたかった浅間山の天気が大丈夫そうで、
そちらに行ってしまいました。お会いできず残念!
もうずいぶん咲きそろっている様子ですね♪
ご無沙汰しています。っていうか彩さんの活躍拝見していますよ。花が咲きはじめたこの時季、あっちこっちへ飛び回っていることを。まさしく彩さんの季節になったわけですね。お元気でなによりです。でも、連日蝶のように山から山へ、びっくりです。
大ドッケの福寿草がこれほど咲いていたとは、私も驚きました。2週間前にはすっぽり雪で覆われていましたからね。ほんとあれから1年、早いですね~。また、どこかで、その時は宜しくお願いしますね♪