ヤマヒデの沖縄便りⅣ 歩き続けて 歩き続ける 再び

「基地の島」沖縄を歩き続け34年、気ままに綴ります。自然観察大好き。琉球諸島を戦場に据える「島嶼防衛」は愚の骨頂。
 

「ジュゴンの帰る海」ーやんばるの海を緻密に、愛を込めて描く(20210823)

2021年08月23日 | 本の紹介・書評

 先日、浦島悦子さんから「ジュゴンの帰る海」(作・浦島悦子 絵・なかちしずか ハモニカブックス2021年7月刊)を買い求め、読んでみた。

 イントロがいささかたどたどしいが、読み進めば、やんばるの海と里に、80年近くの歴史に引き込まれていく。

 浦島さんは、沖縄在住30年で、大浦湾の二見以北10区の会メンバー。フリーライター。絵を描いたなかちしずかさんと私は面識はないが、文と絵が上手くマッチしている。暗い場面への踏み込みがやや不足ぎみかもしれないが、地元在住の画家ならではのタッチが好ましい。

 絵本というのはなかなか難しいものだ。論旨を背後に置きながら、こどもの実感をきちんと前に据えて描くものだから。この意味での手抜き作品は多々あるが、このお二人の創作はぎゅっと詰まっている。

 マカトという女の子とジュゴンの出会いの中から沖縄やんばるの歴史に分け入り、ジュゴンが追い出されている今を問う。「ジュゴンの帰る海」を案じるばかりか、先を見通そうとしており、他人事で済ませない雰囲気が漂っている。

 それにしても沖縄戦で大地が焼き払われ、人間の食料がなくなり、海の幸を求めたと聞いていたが、ジュゴンが減ったのもそのせいだったのか。ジュゴンは神のお使いだと言われながら、こうなってしまったのは、不条理といわずして何というのだろうか。それも再び戦争に備える米軍基地をつくるためにジュゴンの餌場が潰され、追い出されているのだから、ますますもって!

 ラストにこうあります。

「マカトは孫に言います、おばぁがマカトに言ったように。

『ザンは神さまのおつかいだよ。大切に仲よくすれば、私たちを守ってくれる』

オール-島の岬に立ってごらん。

おやこのザンがなかよくとおりすぎるのが、きょうも見えるはずだよ」。

 親も子も戦争を知らない時代の中で、どうしたら戦世(いくさゆ)を伝えていけるのか? 命の営みを伝えていけるのか? 本書が地域のお話会で読まれ、語り継がれることを私も希望しています。

 



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