入院して10日もすると、同室の患者さん達は、次々と退院していった。
私のいる病室はベッドが4つ。今、3つのベッドに誰もいない。残ったのは私一人になった。
昼間はいいが、夜になると病室にたった一人はいやなもんだ。
夜中、救急車のサイレンの音が聞こえたりすると、救急車でかつぎこまれたあのつらかった事を思い出したりした。
一週間位で退院できると思っていたので、「いつごろ退院できそうですか?」と主治医に聞くと「さんざん痛めてきた胃は、そう簡単には治りませんよ、もう少し頑張ってください」と言われてしまった。
朝昼夕の食事は待ちどうしいが、流動食は物足りなくて、食べてもすぐ腹が減った。
空腹をがまんできなくなると、ラウンジにある自動販売機でホットミルクティーを買って飲んだりした。
朝食後は、休養・安静した後、ラウンジで新聞を読んだり、あとはベッドで本を読んだり、絵を描いたりの毎日だ。
「具合はどうですか?」と聴診器を腹にあてにくる看護婦さんには「絶好調!」と答えた。
3つ空いてたベッドも、次から次と入院してきた為すぐいっぱいになった。
その中の一人、私の隣のベッドにいる私と同世代の男性は、自分のベッドのカーテンを開けっ放しだ。
何度か話しをする事ができた。腸が伸びてしまっているらしい。
この病院は2回目の入院だというから私より先輩だ。
そして入院13日目の日、私の退院は10月3日に決まった。(つづく)