武弘・Takehiroの部屋

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機密費について

2024年04月15日 14時24分36秒 | 政治・外交・防衛

<機密費が問題になっているので、2010年5月20日に書いた以下の記事を復刻します。>

“官房機密費”が問題になっているが、機密費について考えてみたい。
国家がある限り、機密費は必要だと考える。古来、どんな国家にも機密費はあったと思う。例えば日本の場合、最も有名なのが日露戦争の頃の明石元二郎陸軍大佐の「工作資金」である。
日本は大国・ロシアと戦争に突入したから、どんな事をしてでもロシアに勝たなければならない。このため、明石大佐は当時の金で100万円、今で言えば400億円以上といわれるほどの巨額の資金を持って、ヨーロッパ中で工作活動に当たった。(末尾のウィキペディア記事を参照)
彼は亡命中の革命家・レーニンとも会い資金援助を行なった。要するに、ロシア国内に革命運動を起こさせ、内部からロシアを混乱させ崩壊させようという狙いがあったのだ。明石大佐はこの他にもあらゆる謀略・諜報活動を行ない、日露戦争の勝利に大いに貢献したのである。なお、工作資金はもちろん「機密費」なので返す必要はないが、律義な明石は使い切れなかった27万円を、明細書を付けて全額陸軍に返却したという。
 
官房機密費の10数億円に比べると、余りにもスケールが違う話をしてしまったが、事ほど左様に「国家」には機密費が必要なのである。
現代に話を移せば、6年前に高遠菜穂子さんら3人の日本人が、イラクで武装グループに拘束され、その救出のために多額の“身代金”が支払われたという。一説には20億円(?)とも言われるが、これも我々の税金である機密費から出ているのだ。
あの時は、人道支援と言いながらも危険なイラクになぜ行ったのだという非難の声が上がった。「自己責任」論などが噴出したのだが、高遠さんらはとにかく日本の機密費によって救出されたのだ。このように、有事の際や外交問題を考えると、機密費というのはどうしても必要なのである。
 
問題は官房機密費である。1年間に14億6千万円といえば国家予算の中では微々たるものだ。しかし、この金が国会議員や政治評論家などにバラ撒かれていたとすれば、黙ってはいられない。前の某官房長官は退任する時に2億5千万円を引き出したという。前述の明石大佐に比べると、余りにも卑しいではないか。
機密費というのは、国家の一大事や外交問題が起きた時に使われるもので、一政権の要人が、自分の私利私欲のために使うべきではない。あくまでも「公用」のために使うもので「私用」のためにあるのではない。
こう考えると、官房機密費の使途についてはやはり公表すべきである。公表することになれば、受け取る方も慎重にならざるを得ないだろう。また、使う方(官房長官)も私利私欲のためにこれを流用するわけにはいかなくなる。
戦前は「機密費」というのは予算の一費目として認められ、議会にも使途を明らかにする必要はなかったが、戦後は機密費自体が認められていない。われわれが“官房機密費”と呼んでいるのは「内閣官房報償費」であって、本来は使途を明確にすべきものであろう。
14億6千万円とはいえ国民の税金なのだから、不透明な“裏金”にならないよう公表を義務付けるべきである。(2010年5月20日)

明石元二郎・http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E7%9F%B3%E5%85%83%E4%BA%8C%E9%83%8E


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