おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

チンパンジーが人類を「観察」:旭山動物園

2006-01-12 10:35:12 | 動物・ロボット・植物
 日本最北の動物園でありながら、今や日本最大の入場者数を誇る旭川市の旭山動物園。人気の秘密は何と言っても動物の「ありのまま」を見せる独創的な「展示」方法だ。「珍獣」を見せるのでなく、誰でもが「知っている」という動物の知られざる姿を見せて驚きを誘う。
 その旭山動物園が今夏よく知られた「動物」を全く違うプレゼンテーションで紹介するという。その「動物」とはホモ・サピエンスつまり我々、しかも「観客」はチンパンジーなのである。1月11日の共同通信が伝えている。
 今夏完成の<新施設「ちんぱんじー館(仮)」は屋内外でチンパンジーを放し飼いにする。約450平方メートルの屋外放飼場には、地上5メートルの高さにアクリル製で直径約2.5メートルの透明なトンネルをL字形に設置。途中の観察ホールにはカプセル状の窓を内側に向けて設けることで、チンパンジーが外から中の人をのぞくような形になる。」> チンパンジーの側からすれば自分たちの住居の中を”ホモ・サピエンス”が移動するのを観察できる。<坂東元副園長は「好奇心旺盛なチンパンジーの方がトンネルを通る人を観察するような施設にしたい」と狙いを話している。>

◆サルたちの急追

 どれだけの人類が気付いているだろう。「万物の霊長」として頂点に君臨してきた人類が、まるで老いたサル山のボスのように、頂上から転げ落ちる危機に瀕している。米科学誌「サイエンス」は2005年の科学界の最重要発見の一つとして、チンパンジー「クリント」の遺伝子配列がすべて解読されたことをあげている。人類と比べるとDNA配列は4%の違いしかなかった。
 このBlogでも取り上げたニホンザルは方言を駆使するというニュースも、人間の「特権」が危ういことを示唆している。この「ちんぱんじー館」で、我らホモ・サピエンスの愚行が彼らにつぶさに観察されて、その情報が他のサルたちに伝わる(彼らは今や「言語」を駆使することに注意して欲しい)ことにでもなれば、人類のメンツは完全に失われることになる。

◆人類の「展示」は失敗

 実はホモ・サピエンスを動物園で展示するという企画は、昨年の夏「ロンドン動物園」で行われたばかりだ。連休の特別企画として、男女8人を、クマがいた園内の小山において、「動物界の一員としての人間の姿」を入園者に見せた。

 上に掲げたのがその8”匹”の写真だが、もうこれを見ただけでこの企画は完全にすべったということがお分かりだろう。「慎み深さを表すために大事なところは葉っぱで覆い」というのがすでに「人の道」に外れている。飼育員が他の動物と同様の世話をするが、夜間は帰宅を許されているし、たった4日間だけ。そもそも文明に”汚染”された人類を観察してもホモ・サピエンスの実相は分かるはずもない。
 この企画の唯一の収穫は、人類というのは動物園で飼うにはもっともつまらない不適な動物であることを悟ったことだ。何一つ”芸”をしないし、見栄えもしない。騒々しくて食い物にうるさく、不思議なことに年中「繁殖期」なのでケアが大変だ。

◆「いい家系」では指導者たり得ず:サル社会

 旭山動物園のチンパンジーたちが人類を観察してどのような「教訓」を引き出すのかは分からない。ただ、人類と言うか特に日本人だが、これまでにサル社会を観察して多くの教訓を学んでいることは事実だ。
 政治の世界や大組織にいる人間にとっては「サル山」の順位争い、特にボスの交代の力学が関心の中心だ。だいぶ昔だが、総裁争いの渦中にあったある与党幹部は、秘書に「サル山」ウオッチングを命じたということだ。

 日本での(と言うか世界での)「サル山」研究のメッカと言えば、宮崎県にある幸島(こうじま)だ。幸いここを管理する串間市観光協会が幸島のサルについてのHPを開いているので、簡単に彼らの政体(?生態)を知ることが出来る。
 のっけからあまりにも「人間くさい」質問で恐縮だが、「サル社会で最高権力者になるのはどういう人物、いや猿物ですか?」
 「どんなサルがボスになるのか、いまのところ定説はありません。幸島での例を見る限り、高順位のいい家系出身のオスはどうもボンボンすぎて覇気がないようです。」

 あ痛たた・・耳が痛い。と言うのも、マスコミが日本国次期”ボスザル”ともてはやす「麻垣康三」の4人はみな、「高順位のいい家系出身」だからだ。「麻」は祖父がボスザル。「垣」は父が大臣ということは準ボスザル。「康」は父がボスザル。「三」の父はボスザルに次期後継者と指名される寸前だった。誰がなっても「ボンボン」だ。サルの世界ではとうてい「ボス」の器ではないということだが、永田島では逆だ。

 幸島では「低順位の家系に生まれたサルが、ちょっとしたチャンスをつかんでボスザルになっています。」というから、日本は貴族制、サル社会は民主政体と言っていい。民主制の方が貴族制よりも歴史的には後から誕生したものだから、やはりサルの方が人類より(少なくとも日本人より)も進化している。旭山動物園の「サルが人間を観察する」コンセプトはむしろ自然なものだということに気付くのである。