おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

初の民間公募の地図記号決まる

2006-01-30 10:25:08 | 発見
 国土地理院の新しい地図記号が初めて公募で決まった(1月25日公表)。
 追加されたのは上の二種類。風車と老人ホームだ。驚いたのは入選者が小中学生だということだが、そもそも昨年の10月に公募したときに応募者を小中学生と限定したのだ。
 風車の方は、中学1年生、老人ホームの方は小学6年生の図案だ。「老人」を表すために杖を使ったのはなるほどと思ったが、優秀賞のデザインを見ても多くが杖を使っている。ごく自然な発想なのだろう。

 この地図記号の公募については国土地理院のページのここに詳しい経過が紹介されている。

 公募は今回は初めてということは、これまでは「お上」が勝手に決めていたということだ。また国土地理院の地図記号は日本独自のもので国際性はない。そのため時にそのシンボルが誤解を受けて思わぬ波紋を呼ぶことがある。

 昔日本にやってきたドイツ人が、国土地理院発行の二万五千分の一の地図を見て愕然とした。「日本にはなんとナチスの事務所が多いのだ。とんでもない田舎にも必ず一つはある」。もちろんお寺のマーク「卍」ですよね。
 日本の漢字(と言うより記号)の卍はインド起源。サンスクリットではスヴァスティカといい、ビシュヌ神(ヒンドゥー教の最高神)の胸毛をデザインしたものらしい。陽光の象徴、仏教では仏心を表す。
 一方のナチスの鈎十字(ハーケンクロイツ)は、卍と鏡像の関係つまり”回転方向”が逆だ。つまり別物だが、油断していると同一記号だと思ってしまう。ドイツだけでなく欧州の多くの国でこの記号の使用は禁止されている。第二次大戦の直後、いくつかのアメリカインディアンの種族は、美術品に卍を使用しないとする法令に署名させられたほどで、政治と無関係でも”弾圧”されるほどである。
 昔ポケモンカードの背景に卍が描かれており、著作権者の任天堂がこの英語版を作る際には卍を削除した。明らかに別の記号であり、卍の方が先輩なのだが、文化や感情の問題なのでトラブルを避けたかったのだろう。

 現在国土地理院が使用している地図記号の一覧は、こちらにあるが、今回風車と老人ホーム記号が初めて付け加えられたことでも分かるように、まだまだ必要な記号が完備していないという気がする。

 今緊急に追加する必要のある記号は何か?言うまでもない。耐震強度偽装の大型建築物である。姉歯物件以外にもたくさんありそうだ。政治家の介入がなければドンドンこれから登場してくるはず。地震の時に近くにいると危ないという意味で、地図には明記が必要だ。僭越ながらそのデザインを提案させていただいた。三か月前の日本人では某一級建築士を除いて誰一人としてこの記号の意味するところを理解できなかっただろう。しかし今は、説明は不要。崩れ行く日本の信頼性をも象徴している。