たぶん世界の数ある喜劇の中で、ウクライナの天才ゴーゴリが書いた『検察官』ほど可笑しい作品はないだろう。帝政ロシアの官僚制度の腐敗を題材にしているが、いわば人間の弱さ卑屈さを普遍化していて現在の日本社会の風刺作品としても通用する。だから、いま日本にゴーゴリがいたら、例えばあの姉歯事件を題材にしたらどんな可笑しい作品に仕立て上げたろうと思うといささか残念ではある。
帝政ロシアに負けず劣らず腐敗しているのが官僚制日本だ。日本にはゴーゴリのような天才はいないが、笑いのめすべき不祥事は同じくらいあるはず・・・と思わせる事件が昨日明らかになった。巧まずして記事自身が『検察官』の滑稽味を帯びているのだ。(以下は毎日新聞と産経新聞の記事から抜粋)
◆またまた新手の振り込め詐欺
「あんたの悪いことしてるの知ってるよ。金出さなきゃバラすよ」というごくありふれた恐喝事件、振り込め詐欺なのだが、この手紙を受け取ったのがみんな公務員の「幹部クラス」だったという。
「農林水産省とその出先事務所に約200通▽都市再生機構(横浜市)に97通▽厚生労働省山梨労働局(甲府市)に1通▽北海道・釧路市役所に14通▽滋賀県・彦根市役所に6通――など。数は不明だが、日本郵政公社の職員にも送られている。」(毎日)
◆「小泉改革」に便乗
面白いのはその文面で、「小泉内閣の構造改革による内閣府の命を受けて、公務員の緊急調査を行った」として「貴殿と取引先民間業者との癒着、公金横領が明らかになった」と、ちゃっかり「小泉改革」に便乗している。「詐欺は世に連れ」というか、詐欺師も時流に乗り遅れてはならないことがよく分かる。<「国家公務員犯罪摘発強化委員会」から公務員の調査依頼を受けた
>(産経)とあるそうで、ギクリとした幹部公務員も多かったはずだ。
「実際に振り込んだ例は報告されていないが」とあるが、ククク・・当たり前でしょ、警察に「私振り込みました」と被害届を出した途端、「容疑者」に変わるわけだから。<「処分費用と口止め料」として1週間以内に50万円>を振り込んだ汚職幹部の人数は従って不明と言わざるを得ない。
ホントなら、というか本人が清廉潔白なら一笑に付すべき中味なのだが、日本のお役所は深刻にとらえていて、厚生労働省などは「全職員にメールで注意を呼びかけたという」(毎日)。つまり「身に覚えがあっても振り込まないように」ということだから、厚生労働省のお偉いさん相当”汚れて”いるんだね。「取引先民間業者との癒着、公金横領」ウィルスが蔓延しているらしい。早急に治療薬の開発が必要だ。
それにしてもこれが事件の全容だろうか。なにせ「小泉改革」の旗手?とも言うべきこの詐欺犯のこと、幹部公務員だけでなく、政治家にも同様の文書を送りつけているのではないだろうか。そしてすでに何人かの政治家が振り込んでしまって・・・・(当然「先生この件内密にしときますからご配慮よろしく」と警察幹部の暗黙のサイン)と考えると、あまりにもありそうな次のような妄想が浮かんで来るのを止められないのだが。
◆「姉歯」と汚職政治家の対話
ああ弱った弱った。この思わせぶりな書き方は何か証拠を握っているに違いない。バラされたらオレの政治生命は終わりだ。
「フフフ、先生らしくもありませんな。そんなことでお悩みとは。」
そ、そういう君は、ま、まさか・・
「フフ、鉄筋なきマンションこそ我が理想。そう、建築界のブラックジャック、姉歯秀次です。この前は証人喚問の時にお会いしましたかな。」
あ、姉歯君、偽装の天才の君なら分かるだろう。政治資金収支報告を何とか誤魔化さないといけないんだ。ワシに力を貸してくれ。
「どうして偽装する必要などあります? ワイロは政治の潤滑油、いや、むしろ鉄筋と言った方がいいかもしれません。これを無くすことは許されません!ワイロの”低減”こそ犯罪でしょう。」
そんなことを言っても、日本は法治国家だ。法律に違反すれば逮捕される。
「自分だけが”悪”をしょい込むのはお止めなさい。私の場合は、建築主・施工者・検査機関、みんなグルになったからごまかせたのです。日本の良き伝統である政・官・業の癒着構造をどうして活用しないのです。」
ちゃんと買収しなかったのが悪いと言うのか。しかしワシはホリエモンではない。そんなカネがどこにある?オヤジが政治家だったから「世襲」で当選。苦労知らずのボンボン育ち、そんなワシにマネーゲームの才能などあるわけないじゃないか。
「いずれにしても、収支報告の偽造はお勧めできません。”専門家が見ればすぐに偽装が分かる”シンプルな方が騙しやすいのですが、政治資金はそれ自身が複雑ですから、下手に細工するとかえって墓穴を掘ります。」
しかし正直に公表するとマスコミが書き立てる。野党は証人喚問だと騒ぎ出す。
「証人喚問はお受けになればいいのです。そのコツについては小嶋社長を紹介しますよ。マスコミからはしばらく姿をくらましてください。私の設計したホテルが、いまは全室”空き室”になってますからご自由にお使いください。地震の時?もちろん倒壊しますが、なに、上の部屋に泊まっていれば命は大丈夫でしょう。ただし、ヘルメット被って就寝してくださいね。」
あ~あそれでも心配だ。姉歯君、君の立場でどうしてそれほど元気でいられるのかね。ワシは不思議でしょうがない。
「先生は昨日のニュースをお聞きになっていないのですか?アメリカ産の牛肉に”危険部位”が残っていましたよね。”背骨”を抜き取るのを忘れてたんですよ。まったくアメリカ人というヤツは本当に大雑把で困ります。日本の消費者の”安全”をどう考えているんでしょうね。そこで”骨抜き”は私の得意技。この妙技をアメリカ人に教えてやろうと企んでいるのですよ。そう言えば、先生も政治資金規制法を骨抜きするのに暗躍されたとか。どうです。いっしょにアメリカに渡って”安全な”牛肉を日本人に供給するのに暗躍、いや活躍しませんか?」
帝政ロシアに負けず劣らず腐敗しているのが官僚制日本だ。日本にはゴーゴリのような天才はいないが、笑いのめすべき不祥事は同じくらいあるはず・・・と思わせる事件が昨日明らかになった。巧まずして記事自身が『検察官』の滑稽味を帯びているのだ。(以下は毎日新聞と産経新聞の記事から抜粋)
◆またまた新手の振り込め詐欺
「あんたの悪いことしてるの知ってるよ。金出さなきゃバラすよ」というごくありふれた恐喝事件、振り込め詐欺なのだが、この手紙を受け取ったのがみんな公務員の「幹部クラス」だったという。
「農林水産省とその出先事務所に約200通▽都市再生機構(横浜市)に97通▽厚生労働省山梨労働局(甲府市)に1通▽北海道・釧路市役所に14通▽滋賀県・彦根市役所に6通――など。数は不明だが、日本郵政公社の職員にも送られている。」(毎日)
◆「小泉改革」に便乗
面白いのはその文面で、「小泉内閣の構造改革による内閣府の命を受けて、公務員の緊急調査を行った」として「貴殿と取引先民間業者との癒着、公金横領が明らかになった」と、ちゃっかり「小泉改革」に便乗している。「詐欺は世に連れ」というか、詐欺師も時流に乗り遅れてはならないことがよく分かる。<「国家公務員犯罪摘発強化委員会」から公務員の調査依頼を受けた
>(産経)とあるそうで、ギクリとした幹部公務員も多かったはずだ。
「実際に振り込んだ例は報告されていないが」とあるが、ククク・・当たり前でしょ、警察に「私振り込みました」と被害届を出した途端、「容疑者」に変わるわけだから。<「処分費用と口止め料」として1週間以内に50万円>を振り込んだ汚職幹部の人数は従って不明と言わざるを得ない。
ホントなら、というか本人が清廉潔白なら一笑に付すべき中味なのだが、日本のお役所は深刻にとらえていて、厚生労働省などは「全職員にメールで注意を呼びかけたという」(毎日)。つまり「身に覚えがあっても振り込まないように」ということだから、厚生労働省のお偉いさん相当”汚れて”いるんだね。「取引先民間業者との癒着、公金横領」ウィルスが蔓延しているらしい。早急に治療薬の開発が必要だ。
それにしてもこれが事件の全容だろうか。なにせ「小泉改革」の旗手?とも言うべきこの詐欺犯のこと、幹部公務員だけでなく、政治家にも同様の文書を送りつけているのではないだろうか。そしてすでに何人かの政治家が振り込んでしまって・・・・(当然「先生この件内密にしときますからご配慮よろしく」と警察幹部の暗黙のサイン)と考えると、あまりにもありそうな次のような妄想が浮かんで来るのを止められないのだが。
◆「姉歯」と汚職政治家の対話
ああ弱った弱った。この思わせぶりな書き方は何か証拠を握っているに違いない。バラされたらオレの政治生命は終わりだ。
「フフフ、先生らしくもありませんな。そんなことでお悩みとは。」
そ、そういう君は、ま、まさか・・
「フフ、鉄筋なきマンションこそ我が理想。そう、建築界のブラックジャック、姉歯秀次です。この前は証人喚問の時にお会いしましたかな。」
あ、姉歯君、偽装の天才の君なら分かるだろう。政治資金収支報告を何とか誤魔化さないといけないんだ。ワシに力を貸してくれ。
「どうして偽装する必要などあります? ワイロは政治の潤滑油、いや、むしろ鉄筋と言った方がいいかもしれません。これを無くすことは許されません!ワイロの”低減”こそ犯罪でしょう。」
そんなことを言っても、日本は法治国家だ。法律に違反すれば逮捕される。
「自分だけが”悪”をしょい込むのはお止めなさい。私の場合は、建築主・施工者・検査機関、みんなグルになったからごまかせたのです。日本の良き伝統である政・官・業の癒着構造をどうして活用しないのです。」
ちゃんと買収しなかったのが悪いと言うのか。しかしワシはホリエモンではない。そんなカネがどこにある?オヤジが政治家だったから「世襲」で当選。苦労知らずのボンボン育ち、そんなワシにマネーゲームの才能などあるわけないじゃないか。
「いずれにしても、収支報告の偽造はお勧めできません。”専門家が見ればすぐに偽装が分かる”シンプルな方が騙しやすいのですが、政治資金はそれ自身が複雑ですから、下手に細工するとかえって墓穴を掘ります。」
しかし正直に公表するとマスコミが書き立てる。野党は証人喚問だと騒ぎ出す。
「証人喚問はお受けになればいいのです。そのコツについては小嶋社長を紹介しますよ。マスコミからはしばらく姿をくらましてください。私の設計したホテルが、いまは全室”空き室”になってますからご自由にお使いください。地震の時?もちろん倒壊しますが、なに、上の部屋に泊まっていれば命は大丈夫でしょう。ただし、ヘルメット被って就寝してくださいね。」
あ~あそれでも心配だ。姉歯君、君の立場でどうしてそれほど元気でいられるのかね。ワシは不思議でしょうがない。
「先生は昨日のニュースをお聞きになっていないのですか?アメリカ産の牛肉に”危険部位”が残っていましたよね。”背骨”を抜き取るのを忘れてたんですよ。まったくアメリカ人というヤツは本当に大雑把で困ります。日本の消費者の”安全”をどう考えているんでしょうね。そこで”骨抜き”は私の得意技。この妙技をアメリカ人に教えてやろうと企んでいるのですよ。そう言えば、先生も政治資金規制法を骨抜きするのに暗躍されたとか。どうです。いっしょにアメリカに渡って”安全な”牛肉を日本人に供給するのに暗躍、いや活躍しませんか?」