(「裸の大将」じゃない。ホリエイカロスだよ)
マクベスは、「グラミスの領主、コーダの領主、いずれは王ともなられるお方」という魔女たちの予言を聞いて、王を殺害して自ら玉座に座ったのだが、果たしてこのような不正義で権力が維持できるのか悩む。しかしまたしても魔女たちの予言を聞いて自信を回復する。「マクベスは滅びはしない、あのバーナムの大森林がダンシネインの丘に攻め上って来ぬかぎりは。」というのである。「バーナムの森が動くわけはないではないか。王座は永遠だ」。しかし「バーナムの森」は動き、マクベスは滅んだ。魔女たちの予言は100発100中だったのである。ただ、マクベスがその予言の意味を取り違えただけであった・・・・
シェークスピアの悲劇の中で『マクベス』がストーリー的には一番面白いと思う。謎の予言、王位の簒奪、栄光の絶頂、反乱、破滅・・とドラマチックな要素が盛りだくさんで展開も速い。そしてシェークスピアなんて難しいという日本の”庶民”のために、役者的には不足があるが同等のストーリー展開で世間を賑わせてくれたのが、ホリエモン逮捕劇だ。
それにしてもホリエモンマクベスはどんな「魔女の予言」を聞いてあそこまで突っ走ったのか。「魔女」と呼ぶのが適当かどうか分からないが、実はホリエモンは年頭に日本で最も有名な(つまり稼ぎ頭ということ)女性占い師に未来を予言してもらっているという。その番組は「仇敵」フジテレビの「幸せって何だっけ カズカズの宝話 新春緊急スペシャル」(1月6日放映)。その中でこの「大占い師」はホリエモンを「日本を変える良い魂と腹を持っている」と絶賛したという(ゲンダイネット1月23日)。さらに「いつ(時価総額)世界一になれるか」というホリエモンの問いに、この先生「私の言うことを聞かないとなれない。十中八九なれる要素はあります」と回答したという。
マクベスの魔女ほどとは言わないが、ホリエモンももう少しいい「予言者」に金を払っていれば運命も少しは好転したかもしれない。いや、それでもマクベスと同じ運命だったかもしれないが。
マスコミのホリエモン評価は昨年とは文字通り手のひらを返したように、もう攻撃一辺倒だ。持ち上げて視聴率を稼ぎ、今度は突き落として世間の喝采を浴びてさらに視聴率を稼ぐ。一つのコンテンツで「二度おいしい」、いつものマスコミの荒稼ぎのパターンだ。ホリエモンは自分にゾロゾロ付いてくる取材陣を従者のように思っていただろうが、実は「バーナムの森」だった。六本木ヒルズの「丘に攻め上って来」る敵軍のように今は彼に襲いかかる。
もうほとんどリンチ状態なので、ホリエモン嫌いの小生でさえ援軍でも出してやろうかという気持ちになるが、すでにこのBlogで書いたように、「BC級」の範疇外になってしまう。ここでは視点を変えて、「play backホリエモンを絶賛したお偉方」。いかに権力者の「言葉」が軽いものであるか、イカロスの翼をくっつけていたロウのように頼りないものであるか、「日本を変える良い魂と腹」を持つためにもじっくり味わってほしい。
【財界】
と言えば経団連だ。ライブドアは滑り込みで経団連への加盟を果たしている。これも経団連会長の覚えめでたかったおかげだ。「個人的に付き合えば(堀江君は)まじめな人。あれだけのお金を運用して利益をあげている。若いが情熱をもった人として付き合っている」(05年10月19日の奥田碩会長の会見) 「まじめな人」が粉飾決算をやりますか。奥田会長は「堀江無罪論」を展開すべきだ。経団連として大弁護団を組織すべきでしょう。
【政界】
<武部勤幹事長>
前回の衆院選で民主党もアプローチしたが、結局ホリエモンは自民党を選んだ。公認候補ではなかったが、応援演説にきた武部幹事長はホリエモンを「わが弟、わが息子」と呼んだ。 幹事長、「息子」が逮捕されたのに何もしなくていいのですか?
幹事長のホリエモンへの入れ込みようは尋常でない。ライブドア社の広報誌「livedoor 2005 winter」で武部氏はホリエモンとの対談でこう絶賛する。「堀江君は素晴らしい青年だと思うな。奔放に広がっていく」、「経験も豊富だし、勉強もしているし、ネットワークも広い」(北海道新聞1月21日) 「奔放に広が」り過ぎたのでしょうか。
<竹中平蔵総務大臣>
昨年のホリエモン選挙応援で、「郵政民営化、小さな政府づくりは小泉純一郎、ホリエモン、竹中平蔵の3人でスクラムを組んでやり遂げる」と締めくくった(8月30日)。 改革「3人衆」の一人がこけたのですから郵政民営化に暗雲が立ちこめてきたのではないでしょうか。
<小泉純一郎総理大臣>
ホリエモン立候補について、「新しい時代の息吹というか、若い感覚をこれからの日本の経営に与えてくれるんじゃないか。反発もあるけど、時代の変革期という感じがする」(2005年8月16日) ご自身は今ホリエモンに「反発」は感じておられますか?
ちなみに上記の占い師の先生はこの番組で、ホリエモン選挙再出馬について「絶対、出ちゃダメ。こんな口下手な人はいないの。結果しか言わないから。政治はやめなさい。風評が悪くなる。」と言ったらしい。もう出たくても出れません。確かに【政界】の先生はホリエモンよりも口はうまいですね。自分の言ったことになんの責任も取らずにスルリと逃げておしまいになられた。さすがのホリエモンも政治家の要領のよさには唖然として言葉もないだろう。「政治はやめなさい」と言われるまでもなかった。
マクベスの魔女たちは劇中不思議な歌を歌っていたことを覚えておられるだろうか。
「♪綺麗は穢い、穢いは綺麗」というのである。そう、世間というのはあるいはマスコミというのは、あるいはお偉方というのは、一瞬にして「綺麗は穢い」と評価を180度転換するものなのだ。喝采は罵倒に、六本木ヒルズは東京拘置所に、時価総額1兆円は買手なしに、一瞬にして変わる。「人の心は金で買える」と豪語したホリエモンだったが、「人の心を変える」ものについての理解は足りなかったのだろう。
マクベスは、「グラミスの領主、コーダの領主、いずれは王ともなられるお方」という魔女たちの予言を聞いて、王を殺害して自ら玉座に座ったのだが、果たしてこのような不正義で権力が維持できるのか悩む。しかしまたしても魔女たちの予言を聞いて自信を回復する。「マクベスは滅びはしない、あのバーナムの大森林がダンシネインの丘に攻め上って来ぬかぎりは。」というのである。「バーナムの森が動くわけはないではないか。王座は永遠だ」。しかし「バーナムの森」は動き、マクベスは滅んだ。魔女たちの予言は100発100中だったのである。ただ、マクベスがその予言の意味を取り違えただけであった・・・・
シェークスピアの悲劇の中で『マクベス』がストーリー的には一番面白いと思う。謎の予言、王位の簒奪、栄光の絶頂、反乱、破滅・・とドラマチックな要素が盛りだくさんで展開も速い。そしてシェークスピアなんて難しいという日本の”庶民”のために、役者的には不足があるが同等のストーリー展開で世間を賑わせてくれたのが、ホリエモン逮捕劇だ。
それにしてもホリエモンマクベスはどんな「魔女の予言」を聞いてあそこまで突っ走ったのか。「魔女」と呼ぶのが適当かどうか分からないが、実はホリエモンは年頭に日本で最も有名な(つまり稼ぎ頭ということ)女性占い師に未来を予言してもらっているという。その番組は「仇敵」フジテレビの「幸せって何だっけ カズカズの宝話 新春緊急スペシャル」(1月6日放映)。その中でこの「大占い師」はホリエモンを「日本を変える良い魂と腹を持っている」と絶賛したという(ゲンダイネット1月23日)。さらに「いつ(時価総額)世界一になれるか」というホリエモンの問いに、この先生「私の言うことを聞かないとなれない。十中八九なれる要素はあります」と回答したという。
マクベスの魔女ほどとは言わないが、ホリエモンももう少しいい「予言者」に金を払っていれば運命も少しは好転したかもしれない。いや、それでもマクベスと同じ運命だったかもしれないが。
マスコミのホリエモン評価は昨年とは文字通り手のひらを返したように、もう攻撃一辺倒だ。持ち上げて視聴率を稼ぎ、今度は突き落として世間の喝采を浴びてさらに視聴率を稼ぐ。一つのコンテンツで「二度おいしい」、いつものマスコミの荒稼ぎのパターンだ。ホリエモンは自分にゾロゾロ付いてくる取材陣を従者のように思っていただろうが、実は「バーナムの森」だった。六本木ヒルズの「丘に攻め上って来」る敵軍のように今は彼に襲いかかる。
もうほとんどリンチ状態なので、ホリエモン嫌いの小生でさえ援軍でも出してやろうかという気持ちになるが、すでにこのBlogで書いたように、「BC級」の範疇外になってしまう。ここでは視点を変えて、「play backホリエモンを絶賛したお偉方」。いかに権力者の「言葉」が軽いものであるか、イカロスの翼をくっつけていたロウのように頼りないものであるか、「日本を変える良い魂と腹」を持つためにもじっくり味わってほしい。
【財界】
と言えば経団連だ。ライブドアは滑り込みで経団連への加盟を果たしている。これも経団連会長の覚えめでたかったおかげだ。「個人的に付き合えば(堀江君は)まじめな人。あれだけのお金を運用して利益をあげている。若いが情熱をもった人として付き合っている」(05年10月19日の奥田碩会長の会見) 「まじめな人」が粉飾決算をやりますか。奥田会長は「堀江無罪論」を展開すべきだ。経団連として大弁護団を組織すべきでしょう。
【政界】
<武部勤幹事長>
前回の衆院選で民主党もアプローチしたが、結局ホリエモンは自民党を選んだ。公認候補ではなかったが、応援演説にきた武部幹事長はホリエモンを「わが弟、わが息子」と呼んだ。 幹事長、「息子」が逮捕されたのに何もしなくていいのですか?
幹事長のホリエモンへの入れ込みようは尋常でない。ライブドア社の広報誌「livedoor 2005 winter」で武部氏はホリエモンとの対談でこう絶賛する。「堀江君は素晴らしい青年だと思うな。奔放に広がっていく」、「経験も豊富だし、勉強もしているし、ネットワークも広い」(北海道新聞1月21日) 「奔放に広が」り過ぎたのでしょうか。
<竹中平蔵総務大臣>
昨年のホリエモン選挙応援で、「郵政民営化、小さな政府づくりは小泉純一郎、ホリエモン、竹中平蔵の3人でスクラムを組んでやり遂げる」と締めくくった(8月30日)。 改革「3人衆」の一人がこけたのですから郵政民営化に暗雲が立ちこめてきたのではないでしょうか。
<小泉純一郎総理大臣>
ホリエモン立候補について、「新しい時代の息吹というか、若い感覚をこれからの日本の経営に与えてくれるんじゃないか。反発もあるけど、時代の変革期という感じがする」(2005年8月16日) ご自身は今ホリエモンに「反発」は感じておられますか?
ちなみに上記の占い師の先生はこの番組で、ホリエモン選挙再出馬について「絶対、出ちゃダメ。こんな口下手な人はいないの。結果しか言わないから。政治はやめなさい。風評が悪くなる。」と言ったらしい。もう出たくても出れません。確かに【政界】の先生はホリエモンよりも口はうまいですね。自分の言ったことになんの責任も取らずにスルリと逃げておしまいになられた。さすがのホリエモンも政治家の要領のよさには唖然として言葉もないだろう。「政治はやめなさい」と言われるまでもなかった。
マクベスの魔女たちは劇中不思議な歌を歌っていたことを覚えておられるだろうか。
「♪綺麗は穢い、穢いは綺麗」というのである。そう、世間というのはあるいはマスコミというのは、あるいはお偉方というのは、一瞬にして「綺麗は穢い」と評価を180度転換するものなのだ。喝采は罵倒に、六本木ヒルズは東京拘置所に、時価総額1兆円は買手なしに、一瞬にして変わる。「人の心は金で買える」と豪語したホリエモンだったが、「人の心を変える」ものについての理解は足りなかったのだろう。