おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

「オホーツク人」の電子紙芝居

2006-01-01 23:20:36 | 発見
 年頭は普段考えもしない長い時間軸で、大きなこと、例えば「民族」の将来に想いを巡らせてみるのもいいかもしれない。許認可権をお役人が握っている電波メディアでは愚民化政策の徹底からなのか、少なくとも正月には決して流さないテーマだからなおさらだ。

 「日本」にある限られた時代にだけ存在して消えていってしまった民族を題材にした電子紙芝居「オホーツクの物語」が公開されたというニュース(北海道新聞2006年1月1日)。作成したのは北海道の枝幸(えさし)町
 この民族の痕跡は遺跡によってのみ知られる。同町の「紙」芝居につけられた解説では、
「オホーツク文化」は本州の古墳時代から平安時代に、サハリンから北海道のオホーツク海沿岸、千島列島にかけて分布した海洋狩猟民の文化です。オホーツク人は続縄文文化の終わりに宗谷海峡の周辺にいた人々がサハリン北部から来たグループと出会ったことで生まれた集団で、オホーツク海の沿岸を巡るように広がっていきました。
 さらに詳しくは北海道新聞社が作成したページなどを参照されたいが、この「オホーツク人」、13世紀頃には姿を消している。民族として滅亡したのか、アイヌ人と合流したのか、果たして「日本人」の中にその末裔がいるのかも分からない。

 この電子紙芝居はその謎の民族「オホーツク人」の少年タオの物語だ。25枚の絵からなる(上はその1枚)ストーリーは乱獲による生態系の破壊など文明批評的要素も含んでいる。

 「オホーツク人」が北海道にやってきたのは4ー5世紀頃の気候の寒冷化がきっかけというが、「国」の概念がない頃は民族の行き来は自由だった。日本列島にも色々な民族がやってきて、あるいは生死を賭けて争い、あるいは混じり合った。したがって他の民族と異なった、固有の「日本民族」を見出すことは不可能である・・・・

 と思っていたら、それはその人の受けた教育によって認識は大きく異なることに気付いた。例えばこのBlogにも登場いただいた麻生外務大臣は「(日本は)一国家、一文明、一言語、一文化、一民族。ほかの国を探してもない」と昨年10月15日に講演している。さすがにこれには少数民族の北海道ウタリ協会から抗議があって釈明したらしいが、麻生氏の年齢から考えても「皇国史観」教育を受けた年代ではないはずだし、少し不思議な気もする。

 今では民族の系譜をたどるにはいわゆる「ミトコンドリアDNA」の遺伝子配列の解読(あの「エッツイ氏」の親戚をつきとめたのもこれだった)が活用され、日本人の「混血性」は明らかである。極めて大雑把に言えば、「原日本人」(縄文人と言おうか)は大陸からの渡来人に駆逐されて、北海道と琉球に逃れた。縄文から弥生で日本列島の中心「民族」の交代があったのだ。だから麻生氏の言う「日本人」とはいったい誰を指すのか実は必ずしも明確でない。外務大臣としてはちょっと困った認識かもしれない。

 しかしそれよりももっと驚くのは「一文化、一民族。ほかの国を探してもない」と民族の”純粋性”が長所だと思っていることだ。犬の血統書なら純粋性を自慢するのは分かるが、これが「民族」の場合は”純粋性”は最大の弱点になるという認識がない。
 そもそもある程度進化した生物が、無性生殖でなくオスメスの遺伝子を混合して子孫を残すのは、遺伝子を多様化して環境に適応する個体を残すためだ。子孫が同じ遺伝子ならば環境の変化でその生物は簡単に絶滅してしまう。「民族」も同じだ。遺伝子的な多様性がないと例えば同じ感染症で全滅ということになりかねない。

 しかし本居宣長以来か、近代・現代史で、日本人の「純粋性」を唱える学説は、繰り返し政治家によって唱えられれ、「皇国史観」なんて極端なものまで教えられたこともあった。とにかく近代以降は、意識の上での国民的同一性が生物学的に不自然なまでに強調され、少なくとも古代日本の「おおらかさ」の正反対になった。つまり遺伝子的には大丈夫なのに、「意識」が環境の激変に耐えられないほど硬直化している恐れが強い(例えば太平洋戦争直前の時には「一億一心」になってしまいその他の選択肢を出せなくなっていた)。

 このBlogでも登場いただいた某有名占い師の方が元旦の番組で「予言」されていた。日本人は30年後に「難民」となるのだという(その理由まではお付き合いしなかったので知らない。そもそも30年後はこの方「私はもう地獄に落ちてるわよ」年齢だから責任を問われることもない)。ついに「日本民族」滅亡の時だ。しかし慌てることはない。昔、北から南から「難民」として日本列島に流れ着いた人達が「日本国」を創ったのだ。それが三々五々「流れ解散」していくだけのことだ。その時に備えて、「いったい日本人って何なんだ?」と外国人が混乱するほど多様な人材を輩出しておくことが生き残るコツだ。そうすれば世界に散らばって”優秀な”遺伝子を拡散して人類の進化に貢献できるだろう。