おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

住職園長、少女買春で逮捕

2006-03-10 18:24:58 | 不祥事
 つい先週、二年間で二人の「盗撮」神職を輩出した神社のことを紹介したときに、これは神道での「罪」の意識が軽いのと、仏教のように「修行」をしないからではないかと書いたが、なかなかどうして、「神」の道に負けず劣らず「仏」の世界も乱れまくっていることを認識させる事件だ。つまり「聖」いや「性」の乱れに「神も仏もない」のが今の日本だ。

 「警視庁少年育成課は10日までに、15歳の少女に現金を渡し、わいせつな行為をしたとして、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で」広島市の浄土真宗本願寺派光明寺の住職兼私立保育園長を逮捕したというニュース(産経3月10日)。

 このクソ坊主、よくあるパターンだが保育園の園長でもあるので教育上まことに困惑の事態だ。「ねぇーねぇー、園長センセどうしたの?」と聞いてくる園児たちに何と説明すればいいのだろう。「オラ知ってるゾ。園長センセは子供にはとっても言えないイヤラシイことしたんだぞ」と、クレヨンしんちゃんみたいにませた子ばかりじゃない。
 しかも「2、3年の間に、15―17歳の少女4、5人と約20回の買春を繰り返していた」というから悪質常習犯。改悛の情を示しているので執行猶予という話にはならないだろう。

 この聖職者にして教育者で現在容疑者という肩書きも加わったこの坊主は、「自分の欲望に負けてしまった。反省している。」と語っているが、御年73歳。煩悩の火は衰えることを知らず、仮の宿りであるはずの彼の肉体を燃やし続けているのである。

 袈裟の裾から坊主頭まで「俗」に浸りきったこの「お聖人」にかかわっている暇はないが、制度的・思想的な「証人」としてしばらく残ってもらおう。

◆宗教と教育ー税制優遇を活用

 まずこの事件の根幹にはゆがんだ日本の税制上の優遇措置があることを指摘したい。なぜ坊さんが園長を兼ねるのか?
 保育所は、法的には「第2種社会福祉事業」というカテゴリーになり、法人税 、道府県民税、市町村民税などは原則(つまり営利を目的にしなければ)すべて非課税だし、固定資産税についても、社会福祉事業の用に供する(つまり保育園ですよと言っておけば)固定資産については非課税だ。
 お寺の多くが保育所を運営しているのは、宗教法人非課税の「功徳」が忘れられないからだ。坊主丸儲け思想の拡張と言っていい。この煩悩坊主が、月1のペースで東京に出かけ、新宿に拠点があるお気に入りの「ロリコン専門」組織で、<いつも「中学生コース8万円」を選んで>いられたのは、まさしくこの「非課税」の特権で蓄積した金があったからだ。

 もちろん坊さんと言っても霞を食って生きるわけにはいかないので、この貨幣経済のなかでは、労組を作って賃上げを要求することも必要かもしれないし、お寺としてお布施以外に現金収入を得る手段を講じる必要はあるだろう。
 しかし最近の宗教法人・学校法人の経営者の金銭への執着は目に余る。例えば最近汚職で逮捕された住職で元学校法人理事長は、大阪府教育委員会幹部の少なくとも38人(処分受けた人数)にワイロ工作を行っていた。宗教と教育が完全にカネで汚染されている。と言うか、宗教と教育は「公益性」の衣をまとって税金逃れの聖域になっているのだ。

 オウムの時も問題になったが、宗教法人への透明性を高めるためにも、現在の原則非課税は根本的に改める必要があることは明らかだ。しかしなぜ政治が動かないかも明らかだ。何しろ与党の一角は、日本最大の宗教団体が産み出した政党だ。まさか母体に逆らうような政策転換を提案できるはずもない。そして最大野党は、今”ポツダム宣言”を受諾して事実上最大与党の占領下にある。

◆宗教はこの「悪人」坊主を「救済」できるか

 そしていわば「思想的」な問題だ。この坊主は浄土真宗の住職だ。浄土真宗と言えば、開祖親鸞。教科書的な浅薄な知識では、親鸞と言えば「悪人正機(しょうき)」説だ。
「善人なをもて往生をとぐ、いはんや惡人をや。しかるを世のひとつねにいはく、惡人なを往生す、いかにいはんや善人をやと。」と言行録『歎異抄』に記されている。善いことをしてその結果「往生」できるのだと教えられてきたが、いや「悪人」こそ往生できるのだと説くのである。

 この「ロリコン」坊主は、まさかこの教えを悪用して、「悪人」になって「往生」を遂げようと買春に走ったのだろうか。親鸞の言う「悪人」は犯罪者の意味ではなかろう。善人は「ひとへに他力をたのむこころ欠けたるあひだ、弥陀の本願にあらず。」 頼るべき「自力」を持たない「煩悩具足のわれら」、社会的にも救われない衆生が「悪人」なのである。その「悪人」が「他力をたのみたてまつれば、真実報土の往生をとぐるなり。」 これが「他力本願」である。今の浄土真宗がどうかは知らないが、最も弱い立場の衆生のための教えと言える。

 それにしても宗教界と言うか、例えば今回なら浄土真宗が、これを個人の不祥事として沈黙しているというのは理解できない。宗教上も教育上も人を教える立場にある(つまり「自力」の人だ)このスケベ坊主は、税金を逃れ、「金力本願」で女性を買いあさるまさしく「悪人性器」人間だ。しかし、若き親鸞に法然が語ったように、こういう煩悩まみれの人間こそ、「阿弥陀仏」の救済の対象であるはずだ。たとえ73歳でも立ち直れる。つまり「悪人」を「正気」に出来ないようでは宗教の意味はないだろう。それならただちに免除されている税を国庫に返却すべきだ。

神職が巫女の着替えを盗撮

2006-03-04 17:01:44 | 不祥事
 ロシアの文豪レフ・トルストイの作品に『神父セルゲイ』という中編がある。最近(1990年)『太陽は夜も輝く Il sole anche di notte 』という題名でイタリアで映画化された。非常にシリアスな中味なのだが、一言で言ってしまえば、自らの性欲と闘う坊さんの話だ。隠遁して聖者になったセルゲイの僧院に、彼を誘惑してやろうという女がやってきた。ただでさえあらぬ妄想に苦しめられているセルゲイは、煩悩を断ち切るために自分の指を切り・・・という凄まじい話だが、普通の人よりもスケベ心をお持ちの方が神に仕える身にならなくとも、とそちらの方が気になってしまう。

 こちらはセルゲイよりももっと次元の低い「神職」の話。「長田神社(神戸市長田区)の神職の男(30)が、巫女(みこ)らの使う神社内の女子更衣室にビデオカメラを置いたとして、軽犯罪法違反容疑で長田署の事情聴取を受けていた」(神戸新聞3月4日)。
 「同神社によると2月14日、女性職員が空きロッカー内に設置されたビデオカメラを発見。宮司が15日に男性職員全員に問いただしたところ、男がカメラを置いたことを認めた」ため、神社からは懲戒解雇されたという。

 呆れるのは、この長田神社、「2003年4月にも、盗み撮りをしたとして神職の男が県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕」されているというから、「神の道」の紊乱ぶりは隠しようもない。

 「神職」という言い方では、この盗撮男の階級は分からない。現在神社本庁は、司・権宮司・禰宜・権禰宜の四職に「神職」を分類しているという。神道は仏教よりも”学歴至上主義”で、宮司になるには、國學院大學文学部神道学科や皇學館大學文学部神道学科で単位を取得し、神道研修部(神社本庁の研修機関)の各研修等を修了しないといけない。ただ、仏教のような厳しい?修行はなく、知識優先という感じだ。
 だからこういう未熟者が聖職に就くと言えそうだが、実際には仏教界からも女子更衣室のロッカーでひたすら待ち続けた坊さんが輩出されているので、神道界・仏教界共に反省が必要だろう。

◆神道における「罪」の意識

 それにしても神道の世界では「のぞき」はいかなる罪(刑法はしばらく措くとして)に当たるのであろう。
 神道で言う「罪」と、現在の日本人の考える罪の意識には大きなズレがある。文献として神道の「罪」が記されいてる最古の文献は平安時代の『延喜式』(905-967年に成立か)だ。この中で「罪」は「天津罪・国津罪」に大別されている。「天津罪」というのは、主に水田工作を妨害する活動が上げられていて、いかにも日本の成り立ちを表しているのだが、傑作なのは「屎戸の罪」で、神殿に屎をまきちらすことをわざわざ列挙している。
 もう一つの「国津罪」として列挙されている「罪」の方が現在の罪の感覚に近いが、殺人は具体的な列挙がなく、代わりに生身の人間及び死者の皮膚を剥ぐこと(生膚断・死膚断)が罪とされている。また母子相姦などは罪だが、強姦は指摘がなく、当然「のぞき」は「罪」だと考えもしなかったようだ。

 いずれにしても神道での「罪」は、キリスト教の「原罪」とは正反対で、一種の”汚れ”(穢)なので、「洗えば」落ちる。いわゆる禊(みそぎ)の考えだ(現在でも政界では禊という言葉は多用されている)。「罪や穢」は祓(はら)えばきれいさっぱり。それでもう悩むことはないんだ。宗教上の教義というより、楽天的な日本人古来の信条を神道が採用したということだろう。

 そうなのだ。日本の宗教は「性」についておおらかと言うか、深刻には考えてこなかった。だから「神父セルゲイ」をイタリア風にrewriteして映画は作れるが、主人公を日本人の神主にすると滑稽映画になってしまう。

 次々と盗撮神職を輩出したこの神社の宮司のコメントが秀逸だ。「今後は心を鬼にし綱紀粛正を図りたい」。神職というよりは、たるんだ官庁の管理職のコメントだ。俗人と聖人は行動からはもう区別できない。だから袈裟があり、あるいは神祇装束を身につけて差別化するのだが、今回はその「俗」から「聖」への”変身の瞬間”を狙われた

日本政治家の『入院』事情

2006-02-28 15:59:52 | 不祥事
 永田議員の記者会見が行われた。なぜあの「偽メール」を信じたのかという根拠については納得を得られるような説明はなかった。武部疑惑も解明されていないのだが、このお調子者をどのような勢力が利用したのかその政治的背景についても、新たに「巨大な闇」(前原)が誕生したわけだ。

 永田議員はめでたく退院されたが、病院側はいい迷惑だったに違いない。一番困ったのは他の入院患者だ。報道陣が押しかけてとても治療どころではない。
 「永田氏にみる政治家の『入院』事情 不祥事の避難所」と題する本日の東京新聞の皮肉な記事。< 国道沿いには、報道関係などの車両が並び、「こんな所に入院している永田さんって本当に非常識よ。交通だってこんなに渋滞してる」と、自転車に乗った主婦が甲高い声をあげながら、報道陣の間を縫うように歩道を通りすぎる。>

 この記事は、「政治家の緊急入院は“永田町のお家芸”と化している」として、(1)1992年共和汚職事件での、阿部文男元北海道・沖縄開発庁長官の入院、(2)同じく92年金丸信元自民党副総裁が、東京佐川急便ヤミ献金疑惑で小田原市の病院に緊急入院したことを指摘している。
 しかしこの両名はこの時すでに高齢だった。永田町の「トリックスター」永田は元気溌剌の37歳。「若い人なのに、自民党の年配議員が雲隠れに使っているみたいで何か潔くないね。記者会見して謝るんだったら早く謝るしかないんじゃないか」という同じ病院の患者のコメント。
 永田議員のHPを開くと、「時代はスピーディな政権運営を求めている」という金言が流れる。しかし自身の不祥事への対応はスローを極めて墓穴を深くしている。

 永田議員の説明によると、国会での質問の前に、野田国対委員長に相談し、前原代表にもこのメールを見せたという。しかし彼らは国会で暴露後の展開をどのように読んでいたのか?たとえ真実であっても武部側は否定するに決まっている。メールは証拠にならんとつっぱねられたらそれでおしまいなことは明らかだった。永田・野田・前原の三人は緊急入院してMRIなどで脳の検査を受けることをお勧めしたい。これが謀議でないとしたら、つまり自民党を追い詰めると判断していたとしたら、脳が正常に機能していないとしか考えようがない。

 永田君はもちろん道化役だが、彼を育てた(匿ったと言おうか)民主党自身が完全なピエロだ。いつでも「主役」を引き立てるためにわざと?すべってみせる。例えば昨年の総選挙だ。
 与党分裂で総選挙という野党にとっては願ってもない展開。そこで掲げたスローガンが、「日本をあきらめない」。えっ? 対する自民党は「改革を止めるな」。これは攻守全く逆だ。この完全にすべったスローガンを聞いて民主党を「あきらめた」人も多かったためか、おかげで自民党大勝。これは契約した広告代理店が自民党のエージェントだったからなのか、心の中では自民党に勝って欲しいと幹部が思っていたためなのか。

 そして「4点セット」で小泉政権誕生以来の最大の危機で国会論戦がスタートした矢先の「偽メール騒動」である。世間の関心は、永田町のピエロとその後見人たちの道化ぶりに関心が集中して、例えば伊藤ハム介の政治倫理審査会の証言など誰も気にも留めなくなってしまった。

 自民党は思いもかけずなのか思い通りなのか、とにかく民主党の生殺与奪の権を手にした。このネタだけで、今国会は完全に自民党がコントロールできるだけでなく、民主党の幹部(特に前原)に貸しを作ることで、長期間のリモートコントロールまで手に入れた。
 確かに民主党は岡田代表の時代から、「僕たちを野党と呼ばないで」と言い続けてきた。政権に難癖つけるだけの「野党opposition party」の”悪い”イメージを変えたいということらしいが、それにしてもこれだけ自民党を助ける政党は想像するのも難しい。与党の公明党だってここまで自民党に「役に立って」はいないのだから。
 そして今日の民主党幹部の対応を見ていると、ケジメをつけないことで民主党の信頼をより失わせ、そのことで今後さらに相対的に自民党を高めようとしているようだ。そこまで自虐的になるのなら、小泉の誘いを受けて自民党と合併すればいいのにと思うのだが、そうすると完全に一党独裁になって中国や北朝鮮と区別できない。いわば今後とも「偽装野党」として生きていく覚悟のようだ。もちろんこう言ったからとて民主党を誹謗中傷したいわけではない。政治はオリンピック以上に結果がすべての世界である。結果として自民党を応援していることはその評価を問わず衆目の一致するところである。

 タイやフィリピンでは首相や大統領がいま大変である。腐敗停滞した政権は打倒されるのが古今東西の政治法則だ。しかし日本は例外だ。前原党首は、自民党に「提案競走をやろう」と持ちかけた。小泉首相は、そんな面倒なことやるくらいなら「いっそ前原君自民党に来い」と公然と持ちかけた。確かにこうなると、与党も野党も体制も反体制もない。「みなさんごいっしょに」の完全翼賛化だ。そして自民党の「危機を救った」民主党の今回の「ファインプレー」。90年代には社会党が身を挺して自民党の危機を救って、その結果自身は「絶滅危惧種」(辻元清美)にまで衰退した。これが日本の政治文化だ。「反対」勢力が自らを貶めることで権力を高める。謙譲の美徳と言っていい。

 しかし民主党前原体制が続くようだと、国民の目からは「ああやっぱり。前原は自民党に命乞いをしたんだな。裏取引があったんだな」と見られることは間違いない。これからの民主党の行動はすべて「偽装」と見られてしまう。
 今でもすでにそうだが、与党から、「このまま党首でいて欲しい」と期待される”野党”党首というのも奇妙奇天烈・奇々怪々・摩訶不思議な存在と言わざるを得ない(本人は結構悦に入っているようだが)。

 前々党首の菅直人氏が「未納三兄弟」発言で、党首を辞して頭を丸めて四国88ヶ所巡礼の旅に発ったことを覚えている。前原代表も、「自民お助け隊隊長」と見られたくない、野党として政権を奪取すると言うなら、まず今は頭を丸めてお遍路さんになるのがいいだろう。できれば民主党国会議員全員辞職してお遍路さんになるのもいい。それでは「野党」がいなくなる。しかし「偽装野党」よりは一党独裁の方が分かりやすいし、自民党も自分で全部責任を負わないといけなくなるので政権には打撃だろう。

「ホリエモンメール」で謝罪へ:民主党

2006-02-26 14:27:32 | 不祥事
 「ふふふ、前原よ心配することはない。お前はワシらにとっても役に立つ男よ。間違っても石田三成にはせん。」
 「寛大なる御沙汰、辱のう御座います。上様のお心遣い、この前原一生忘れることは御座いませぬ。」
 「まあそう鯱ばることもあるまい。儂とお主の間柄じゃ。一時は”四点セット”などと申して、血迷うて謀反でも企んだかと案じておったがのう。まあ改めて恭順の意を表してもらうことにはなるがな。」
 「御意。無論今国会の”セット”はゲームセットといたします故、上様におかれましては国会運営に関していささかの妨げもございません。今後はこの前原、大御心のままに忠良な家臣として永田町にて粉骨砕身、遠くから上様にお仕えすることをお誓い申し上げます。」

 民主党は「ホリエモンメール」について謝罪するという(共同)。すでに先週このBlogに書いたとおりの展開だ。その時には「小泉か前原のどちらかの首が飛ぶ」と予測していた政治記者もいたが、日本の政治風土を考えれば”裏取引”が常道だ。
 昔なら、与野党の国対関係者が料亭で会って直接交渉だったろうが、料亭政治の衰退で、意志疎通は”オープン”になっている。自民党幹部から、「深追いして前原を追い落とすと損だと」声が上がっていた。これはある意味、「改革」の成果かもしれないが、党首討論で、「前原さんには頑張ってもらいたい」と小泉首相自ら前原にエールを送ったのは皮肉というより、本音なのだ。もちろん「交換条件」まではオープンにしないが、そこは日本文化の精華「以心伝心」だ

◆事件のウラのウラのウラのウラの・・・・

 自民党は「民主党のオウンゴール」と賞賛?するが、攻め込んで相手ゴール前で「オウンゴール」は常識ではあり得ない。民主党の攻撃を殺いだだけではない、「貸し」を作ることで民主党とりわけ党首をリモートコントロールできるし、武部ファミリーがクリーンであるという「誤解」まで生むことが出来て、自民丸儲け。うそ臭くて漫画にもできないような筋書き通りの展開である。

 こうなると世間の関心は、永田町のお調子者の永田君に「ガセネタ」を掴ませて操った「黒幕」に向かう。ちょうど本能寺の変の「黒幕」は誰かという詮索と同じで、「ウラのウラのウラ・・」読みになってしまう。光秀を動かした黒幕が、天皇か本願寺か家康かはたまた秀吉でないのかという様々な陰謀説に決着は着かないように、「永田光秀」を操ったのは、例の札付きガセネタ切り売りジャーナリスト一人と考えるのではつまらない。
 自民党サイドの陰謀説はあまりにもストレートだ。「ウラのウラ」読みは、前原追い落としを狙う民主党の勢力を指摘するが、完全に逆効果になっている。「ウラのウラのウラ」は、前原自身が自民党に刃向かいかけた民主党の勢いを逆転させるために仕組んだというもので、逆にこれはあまりにもきれいな筋書き過ぎて(完全に「狙い」が実現)弱い面がある。

◆永田町の「トリックスター」の永田君

 それにしても今や日本一有名な「入院患者」となった永田町の永田君だが、「二,三日食事も喉を通らない」ながら、ホテルで大型「クラブサンド」のモーニングを注文して軽く平らげるなど気丈な一面のある愛すべきキャラクターだ。今回が初の「お茶の間デビュー」のはずなのに、もう何度でも彼に会ったことがあるような気がするのはなぜだろう。

 そうそれは永田君が文化人類学で言う「トリックスターTrickster」だからだ。神話には必ずこのトリックスターが(よく「道化」の形で)登場する。神話や物語の中で、神や自然界の決まり事を破り、物語を引っかき回す役割を負うもののことである。
 心理学者のユングによると、トリックスターは以下の4つの特徴を備えている。1.反秩序、2.狡猾なトリック、3.愚鈍、4.セックスと飢え。
 永田君について、1.はいいだろう。若手とは言え、懲罰動議5回は現役国会議員最多。2.も「狡猾」とは言い難いが今回の詐欺的行為を見て欲しい。3.は「トリックスターの意識は究めて幼児的で初歩的であり、愚かな者たちをトリックで騙す事しか出来ない。」という記述に完全に合致する。4.は永田君が本会議場で丁髷松浪に水をかけられたのが、「お前は××(女性党首の名)と何発やったんだ」と卑猥なやじを飛ばしたのが原因であることを思い出して欲しい。

 それぞれのトリックスターによって上記4点のどれが前面に出るかが異なる。永田君の場合には、今回は2.と3.が前面に出て、1.は、「反秩序」どころか自民党の「秩序」化を促進することになった。いずれにしても”永田町神話”を分析する材料を与えてくれたことに感謝したい。

◆憲法改正の「神話」の実現へ

 家康は三成を探し出して鴨川の河原で首を刎ねた。一方小泉は鴨川で育った前原の首を取るどころか激励を続けている。それはもちろん憲法改正という自民党半世紀の「神話」を実現する"同志"と考えているからである。その触媒としてお調子者永田という「トリックスター」が必要だったのだ。「低俗なトリックスターは破壊のみをもたらし、高尚なトリックスターは破壊の後に新しい秩序をもたらす。」(上記URLから)。永田町の永田君は、「低俗」か「高尚」か、まもなく答えが見えるだろう。


Winnyで海自から「機密」情報ネットに流出

2006-02-23 15:12:20 | 不祥事
 昨日、ホリエモンが「交際」相手の女性タレントにくれてやったノートパソコンに粉飾指示のメールが残っていたという報道があった。(毎日など。)ケチだネー、ホリエモン。腐るほど金があるんだからせめて愛人には新品を買ってやれよ。という話はさておいて、「IT企業」社長としてのセキュリティー意識が皆無だ。すでにこのBlogでも何度か(ここここ)、livedoorのIT能力の低さを指摘したが、ここまでプロ意識に欠けているとは思わなかった。こんなことでは検察の追求を待たずに不正行為メールがネットに流出するのも時間の問題だっただろう。

 プロ意識の欠如という観点からは、しかしもっと悲惨なニュースが。海上自衛隊の「極秘」情報がネットに流出したというのだ。しかもそれは恐るべき海外諜報機関の手によるのでなく、自衛隊員自身が自分の?パソコンにWinnyをインストールしていたためという、いわばオウンゴールだったようだ。

 <ファイルの内容などから、海自佐世保基地配備の護衛艦「あさゆき」(基準排水量約3000トン、乗員約200人)の関係者のパソコンが「暴露ウイルス」に感染したことが原因とみられる。>(毎日2月23日)。まだどの隊員のパソコンから流出したかは調査中という。流出した情報は、「暗号関係の書類や、戦闘訓練の計画表とその評価書など」、防衛庁では「極秘」に指定された情報という。ちなみに、防衛庁は、秘密情報を秘匿性の高い順に「機密」、「極秘」、「秘」と分類している。「機密」、「極秘」合わせて15,000件程度あるという。

 Winnyというのはインターネット上でファイルを交換するためのソフト。作者が逮捕されるという事件もあったが、現在でも誰でも無料で入手使用できる。多くの人は、自分の欲しい音楽ファイルやスケベ画像を入手するために使っている。インストールして、適当なキーワード(例えば裸 nudeとか)を設定しておくだけで、それを含むファイルを自動的にネット上で見つけてくれて、自分のパソコンにダウンロードしてくれる。
 便利なことこの上ないソフトだが、どんな悪質なファイルが自分のパソコンに侵入するか分からない。いわゆる「暴露ウィルス」というパソコンの中のファイルを勝手に流出させるウィルスにやられて、秘密のデーターを「流出」させるという事件が後を絶たない。同じ日に、栃木県警の捜査資料が、これもWinnyを使っていた警部のパソコンから流出するという事件が報じられた。(読売)。

◆危機管理の出来ない「危機管理」のお役所

 自衛隊や警察という「危機管理」のプロが、もうこれまで何度も情報「流出」事件を起こしている。(1)公務で使用するパソコンには絶対Winny(とそれと類似のソフト)をインストールしない、(2)私物パソコンでは、公務で使用するデーターを入力しない、(3)データーをどの様な形でも絶対に外部に持ち出さない。以上の3点が徹底していればほぼ完全に防げるのに、こんな簡単なことが出来ないお役所が、国民に「危機管理」をお説教するだけでなく、そのための予算を獲得して、「訓練」まで行っているというのだからホントに背筋が寒くなる。

 自衛隊からの情報流出は毎度のこととは言え、今回はいわゆる暗号情報が流出したことがこれまでと違う。<この中には、暗号の解読機とみられる「符号変更装置」の操作手順の詳細な記述があった。また、「極秘」と記された、非常用暗号書や乱数表などの書類の名称と整理番号をまとめた「暗号書表一覧表」があった。>(毎日)という。
 自衛隊というのはまあ体質もあるんだけど、不必要に情報を隠したがる。例えばミサイルの射程などは「秘」扱いのはずだ。しかし例えばこんなのは然るべきミリタリーオタク本を見れば当たり前のように(たぶん正確な値が)書いてあることだ。もっとも秘密にしなければならないのが暗号情報であることは、あの山本五十六の搭乗機が撃墜されたのも米軍に暗号を解読されていたためであることを考えただけで分かる。

◆自衛隊”幹部”は「戦争ない」論

 暗号情報を扱っていることから、今回の流出の犯人は自衛隊の幹部クラスの人間であろう。公務で使用する「機密」情報満載のパソコンにWinnyをインストールして、職務の合間にあるいは職務中にスケベ画像を楽しんでいたのだろう。「情報保全」の意識もないのだが、それ以上に自分の仕事をなめきっている。建前としては、C国やN国の「脅威」を強調して5兆円もの血税を要求しておきながら、「敵」に対する警戒心が全くない。つまり「バカ言ってんじゃねぇよ。どこの国が日本を攻めてくるってんだ。ミサイルよりもオレはハダカを見る方が好きだな」と、最前線基地佐世保の幹部が言っているも同然である。

 日常的にC国やN国の艦船を監視している幹部が、戦争なんてありっこないと思っているのだから、それは正しいのだろう。しかし国民の立場からするとこれは詐欺だ。もっと他のことに税金を投入できたはずだ。

 昨日防衛施設庁の「談合三兄弟」が再逮捕された。在日米軍基地建設でのゼネコンとの談合容疑だ。米軍基地建設には日本人の税金が投入されるが、施設庁では何と40年間も談合を続けて天下り先を確保してきたという。今初めて、米軍基地の真の存在意義が明らかになったわけだ。施設庁のお役人に天下りを保証し、ゼネコンに甘い汁を吸わせるためだという。

 額賀防衛庁長官は、施設庁を解体するという。しかし”本体”の防衛庁も、このWinny事件で、遊び半分で「戦争ごっこ」をやっているのが自衛隊幹部であることが分かったからには、真剣に解体を検討しなければならない。大事なのは、国民の安全保障であって、施設庁や自衛隊の腐敗した幹部の身分を保証することではないからである。


公費旅行の市議、海外で泥酔して「強制送還」

2006-02-21 11:33:08 | 不祥事
 昨年の国政選挙だったか、初当選したある新人議員が、「議員ってすごいなぁ。グリーン車乗り放題ですよ」という”初々しい”コメントをして話題になった。このone of「コイズミチルドレン」、今でも感動しながら新幹線に乗っておられるのだろうか。センセイ、初心を忘れないでください。
 しかし議員の特権はこんなものではない。国政だけでなく地方議員も楽しめる特権と言えば、無料海外旅行の特典である。まるでテレビのクイズで優勝したようなこの特典は、通常「視察旅行」と呼ばれるが、堅苦しく考える必要はない。名所をめぐり、夜は飲んで騒いで、旅行社のパックツアーよりも自由度は高くて豪勢である。

 そのスポンサーはだれかと言えば、もちろん我々が汗水垂らして稼いだカネ、血税である。さすがに格差拡大で「負け組」の生活が苦しくなるに連れて、「いったい先生たちは何を”視察”してるんだ」という声もチラホラ出て来はじめた矢先、あまりにも象徴的な不祥事が起きた。

 姉妹都市への「視察・親善旅行」で、市議が酔いつぶれて外国で乗り継ぎ便への搭乗を拒否されて、日本に”強制送還”されるという”国辱もの”の不祥事を起こしたらしい(毎日新聞2月20日)。この大分県のB市の58歳のA市議(S民党)は、NZの姉妹都市ロトルア市への公式訪問(市議5人、市職員6人、市民10人)に旅立つ大分空港ですでにでき上がっていたらしい。
 まず大韓航空のソウル便に搭乗したが、機内でもさらに聞こし召されて、もう完全な泥酔状態。
「機は午後7時20分に韓国・仁川空港に着き、A市議は車イスで降ろされた。同9時半の大韓航空ニュージーランド・クライストチャーチ行きに乗り継ぐ予定だったが、大韓航空はA市議の搭乗を拒否。一行はA市議と分かれ、予定通り6日間の公式訪問を終え17日、帰国。A市議は帰国後に入院した。」(毎日、原文は固有名詞明記)

 「強制送還」は正解だ。姉妹都市でこの醜態を見せられたら、何しろ市民の代表の議員なんだから、B市民が同じ目で見られてしまう。<家族は「申し訳ない」と、キャンセル料を含めた費用の全額弁済を市に申し出ている>というが、返還は当然、公費で酔っぱらいを送迎してどうする。問題は、この公費による旅行が最初から物見遊山であったことを証明していることにある。誰が大事な出張の朝に酔っ払って乗車しますか。

◆知られざる「視察旅行」の費用実態

 国、都道府県、市町村を問わず、こういう議員の公費での「視察旅行」は例外なく行われているのだが、いったいそれにどれだけの費用がかかっているのかは通常公表されない。これまでは意識を持った人が、それぞれの自治体に対して「監査請求」をして資料を手に入れて初めてその実態の一端を知ることが出来る。
 例えばここに「長野県議会議員平成8年度から平成12年度の海外視察実施状況」の資料がある。この資料、9年度までは費用の記載がない。一例として12年度の5月に行われた「欧州総合行政視察」は5名の県会議員が参加しているが、総費用は8,474,035円。一人当たり約169万円である。ひょっとしらセンセイのお土産代も含まれているのではと思うほどカネがかかっている。

 こういう場合、ほとんど例外なく「観光地」を訪れているのだが、ちゃんと言い訳も考えている。「現地の観光産業の実態を調査し、本県の観光産業育成に資する」というような決まり文句。それならちゃんと報告書は出すのかというと、そこは旅行社の方で書いていてくれるというのだから議員としては至れり尽くせり、納税者としては詐欺にあったようなものだ。そしてこれも例外なくと言っていいのだが、その「視察」が地方行政に具体的に活かされたという例を知らない。

 さすがに最近では納税者が、これらの公金による物見遊山に対して補助金の返還を要求して、勝訴するケースも出ているが、全国的にはまだまだ例外だし、国政レベルでは完全に”遊び放題”である。参考までに、2004年のお盆休暇を活用した「海外視察」の場合、衆参合わせて約100人が出かけて、経費は衆院約3億2000万円、参院約2億円の総額5億2000万円だったという。
 B市の運営するBBSにはさすがに抗議の書き込みもあるが、B市の人口からすると少数だ。「観光都市」だから、公費旅行も物見遊山で行ってもらった方が「実感ツアー」になってよろしいということなのだろうか。それにしてもA市議のように最初から泥酔状態では、何の記憶も残っていなかったはずなのだが。あっ、そうか!こういう時に旅行社で用意してくれた「報告書」を使うんですね。

チェイニー友人誤射でテレビ出演

2006-02-17 12:22:32 | 不祥事
 日本語には全く相当する単語がないのだけど、米語には"trigger-happy"という奇妙な言葉があり、結構普通に使われる。直訳すると「引き金で幸せ」ということだが、Websterの説明によると、「1.銃器の取り扱いについて無責任なこと:特に、目標をちゃんと確認せずに撃つ傾向のあること」。あっ!、それは「バカボン」のお巡りさん!いえいえ、天下のアメリカ合州国の副大統領のことです。

 ウズラと間違えて友人を散弾銃で撃ち抜いたディック・チェイニーDick Cheney副大統領。事件の起きた2月11日以来マスコミから逃げ回っていたが、16日になってようやく米Foxテレビの単独インタビューに登場した。
 しかしこのインタビューを最初に伝えた共同通信の記事には驚いた。<副大統領は、ウズラを狙ったつもりで撃ったのに友人が倒れているのに気づき「何でここにいるんだ」と声を掛けた>(2月16日)。えー?これって、「馬鹿野郎!、そんなとこにいるから撃たれるんだ」って意味でしょう。いくら"trigger-happy"のチェイニーでも・・と思って、ホワイトハウスの発表したこのインタビュー全文を読んでみた。該当箇所はこうだ。
Q What did you say?
THE VICE PRESIDENT: Well, I said, "Harry, I had no idea you were there." And --
 つまり「君がそこにいるなんて知らなかったよ」だ。先入観に基づく共同通信の誤訳だろう。

 しかし報道機関が間違うのも無理からぬ所だ。チェイニーほど"trigger-happy"という言葉が似合う人間も世界にいない。銃器業者の利権を代表するロビー団体「全米ライフル協会NRA」の集まりでは頻繁に演説して(たぶん多額の献金を受けているのだろう)、銃規制の動きを罵っている。もちろん自身も銃は大好きで、上のような狩猟に興じる写真が残っている。もちろん相手はウズラとかスズメなどの「生物的弱者」なので、弱い者イジメ好きと言ってもいい。
 弱い者イジメといえば、チェイニーの”特技”は戦争だ。国防長官だったこともあるが、そもそもイジメ戦争、いやイラク戦争の推進者だ。世間ではネオコンとも呼ばれる。しかも彼にとっては戦争は趣味でなくビジネスなのだ。
 彼が経営最高責任者だった(1995-2000の間)ハリバートンHalliburton社は、イラク戦争後の「復興」事業で大儲けしたと問題になったこともある。Websterの"trigger-happy"の説明の二番目にはこうある:「戦争を引き起こすような事態において無責任に傾きがちな、態度が過剰に好戦的な。アハハハ・・この辞書編集者はチェイニーを念頭において原稿を書いたな。

 チェイニーの身分は一応副大統領だから、大統領を助けて・・と思いがちだが、実はブッシュとは別の側近を侍らせて別のチームを組んでいるといわれている。そしてその行動も”ステルス性”を重視してマスコミを遠ざけている。日本で言えば”闇将軍”だ。その「闇」の一端が間抜けな行為で明るみに出たので、米マスコミ、特にcartoon風刺画作者はもう大喜びだ。「情報機関の能力不足だ」「なに、これはcollateral damage随伴被害に過ぎん」「自然保護論者を撃ったつもりだった」等々言い訳を考えるチェイニーを書いたマンガなど、もういくらでも描けてしまう。

 多くのボディガードや「医療関係者」を引き連れた大々的な狩猟のその獲物は何と---ウズラquailだったことも滑稽さに輪をかけた。ん?・・・副大統領、クウェールと言えばどこかで聞いたような・・・あっ!思い出した!「アホのクウェールQuayle」。そうだブッシュ(父)大統領時代の副大統領。あれは1992.6.15のことだ。この日付は2006.2.11と共にアメリカ副大統領にとって「暗黒の一日」(チェイニーは2.11を「人生最悪の日」と呼んでいる)として歴史に残るに違いない・・・

◆"potato"のスペルを知らなかった副大統領


 その日クウェールはニューヨークの託児施設を訪問した。政府の補助金が出ている、親が仕事で帰宅しない子供の世話をしている施設だ。授業はカードを見せて、その綴りを黒板に書くという極めてシンプルなものだった。「はいこれは?」、「ボク分かる」と手を上げたのが、ウィリアム・フィゲロア君12歳。日本で言えば小6だから、黒板に"potato"と書くのも馬鹿らしいほど簡単な問題だった。その瞬間の写真が上(副大統領は左端)だ。黒板の横に立って真剣に眺めるクウェール。熱心だ。感心だ。
 しかしこの写真が撮られたその瞬間、副大統領が台本にない「介入」をした。
「うん、なかなかいい線だ。でも君は何か忘れてないかい?最後の"e"を」。ウィリアム君はちょっと面食らったような表情を浮かべたが、すぐに"potato"に"e"を付け加えた。その時教室にいた校長をはじめとするお歴々も、この副大統領の”適切な指導”に拍手を送った。クウェールも満足の笑みを満面に浮かべていた。

 そう、クウェールはその時には全く事態を掌握していなかったのだ。授業が終わってマスコミが彼を取り囲んだ「副大統領"potato"ってどう書きます?」。何のことだ?なぜそんなことを聞くんだ。

 坂田利夫と聞けば日本では「ああ”アホの坂田”」と誰でも言う。その時までには、なぜかアメリカのマスコミでは「アホidiotのクウェール」という評価が定着していた。実際に会った人の話では、「そんなバカでもないよ」と言うのだが、マスコミというのはステレオタイプで報道する。クウェールの「アホネタ」ばかりを追っていた。そこへ"potato"綴り事件である。ネタのためには生みの親でも容赦しないマスコミが、クウェールに情けをかけるはずもなかった。ニュースメディアは繰り返し繰り返しこの瞬間の教室の映像を流し、通信社は「副大統領potatoが書けず」と全世界に打電した。cartoonistsは狂喜乱舞して数え切れない風刺画が量産された。

 「アホのクウェール」はいわば絶対的真理になってしまった。その数か月後親分のパパブッシュは落選した。"e"の一文字がクウェールの人生だけでなく、アメリカ史を変えたと言えるかもしれない。

 しかしここでスポットライトを、世界のアメリカ副大統領を知的に打ち負かした12歳のウイリアム君に切り替えてみよう。この滑稽なニュースが全米のみならず全世界を駆け巡っていることを知ったお父さんは、次の日散髪に出る息子にマスコミとの対応を注意した。お父さんは共和党の支持者だった。「アメリカ副大統領に失礼になるようなことを喋ってはいけないよ」。
 "potato"を正確に綴るという高度な知的能力を持つウィリアム君はもちろんこの言いつけを守った。
 「もちろん彼の方が間違っているって分かってたよ。でも副大統領だから黒板に戻ってeを付け加えたんだ。席に戻ってから辞書を引いてみたよ。やっぱりボクの綴りが正しいって確認したんだ」。自分の目で事実を確認する! これはイラク戦争前に諜報機関の情報を鵜呑みにしたチェイニーやブッシュにも見習って欲しい基本事項だ。
 ウイリアム君は「敗者」クウェールへの思いやりも忘れなかった。「もちろん副大統領がバカidiotでないことは知ってるよ」。しかし次の一言は、クウェールとアメリカ政治に対する最終兵器になる言葉であることは12歳の少年には分からなかったのだろう。「でも彼はもっと勉強する必要があるね。副大統領になるには大学に行かなきゃダメなの?」

 もちろんこの12歳のウイリアム君の方が、副大統領どころか大統領になるにも知的にはふさわしいことは言うまでもないのだが、だれでもこの”神童”がどう成長したか知りたいだろう。あの"potato"事件から5年後(1997年)の同君を取材した記事を見つけた。17歳のウイリアム君は、ハイスクールを中退して、自動車店でフリーターをしていた。そしてもう子供もいたという。

 もう25歳になっているウイリアム君は今どうしているのだろう。そう「副大統領になるには大学に行かなくていい」のだからまだまだクウェールを超えるチャンスは開けている。しかしたぶんチェイニーのような大金持ちになってクウェール猟を楽しむような身分にはなれないだろう。アメリカンドリームの時代は終わり、(日本も小泉ー竹中アメリカン路線で同じになってしまったが)、イギリスのような身分社会に移行しつつあるからだ。

銃口突きつけ「自白」迫る:警部補逮捕

2006-01-27 11:05:26 | 不祥事
 あの「天才バカボンの」お巡りさん、何かあると(何もなくても)やたらに拳銃を発砲するお巡りさん(「本官さん」)がまともに思えてくるニュース。

 長崎市で警部補が取調中に拳銃を取り出して、「自白」を迫ったというのだ。この警部補は、「特別公務員暴行陵虐と銃刀法違反の疑い」で逮捕された。
 この警部補は、<今月十七日、当時勤務していた同署高島駐在所(長崎市高島町)の門扉が何者かに外されたことについて、任意の事情聴取の名目で、同市高島行政センターの男性職員(56)を駐在所に呼び出し、拳銃と実弾数発を机上に置いて脅迫。その後、別に呼び出した同センター嘱託職員(34)の顔に銃口を向け、「うそばかりつくな」などと自白を迫った疑い。>(西日本新聞1月27日

 この脅迫された男性は以前この警部補と口論になっていたらしい。<男性職員は十三日朝、トラックの荷台にこの知人ら五人を乗せて、草刈り作業に向かう途中、入江容疑者から「荷台に乗るのは道交法違反。年末までは黙っていたが、もう許さない」と注意された。知人らが「島では慣例としてこれまでもやってきた」と反論し、口論になった。>(同上) つまりどうも恨みを晴らすために、門扉の件で「事情聴取」して、拳銃で脅迫へとエスカレートしたらしい。

 この警部補については<地元住民から大浦署に「意味不明のことをつぶやきながら歩いている」と電話があり、同署が調査。> すこしおかしな所があったらしいが、「まあ大丈夫、正常だ」ということで転勤はさせたが、異動して勤務させていたらしい。

 警察官や自衛官など武装した公務員の銃器を使った犯罪は非常に恐ろしい。特に精神疾患が絡んでいる場合大惨事になりかねない。自衛官の「クスリ」の使用が問題になっているがまだ対策は取られていない。警察官についてはそもそもチェック体制さえない。長崎県警は「職員の職務倫理教養を徹底し」と言っているが、そういう問題ではない。精神疾患の問題と「教育」は分けて考えなければならないという基本が理解されていない。

 ちなみにバカボンの「本官」さんだけど、実は公務員でないというのはご存じでした?落とし物を猫ばばするために勝手に派出所を作って、落とし物のお金で妻と息子を養っているのです。偽装警官だけど、悪徳警官や警察官の天下りよりは社会に与える害は少ない。とにもかくにも「自活」しているのだから。


先生が生徒の点数を「偽装」

2006-01-23 15:37:07 | 不祥事
 その昔とある「帝國大学」に伝説的な大先生がおられた。この先生、研究は熱心なのだが、学生の試験の採点というのにはどうも意義を感じられなかった。だからその「採点」方法は、豪快かつ超「省力化」されたものだった。学生の答案用紙の束を抱えた先生は研究室近くの階段の中ほどで立ち止まると、やにわに答案を投げ上げた。ひらひらとしばらく宙を舞ったあと、当然ながら答案用紙は階段の上に散らばる。先生は最も上の段に落ちた答案に100と朱で書き、次の段の答案をまとめるとそれらすべてに90と書き、・・・一番下の答案は0。これで「採点」は終わった。

 まあ今やれば、採点偽装だとマスコミが書き立てるだろうが、古き良き時代の話である。この宝くじ的な「採点」を非難されることもなく、この「階段教授」は定年を全うされたと聞く。学生が一生懸命書いた答案を、とお怒りの方はこの「合理性」をよく考えていただきたい。「階段教授」には再度ご登場願う。

 このエピソードを思い出したのは、公立中学で先生が生徒の点数を偽造したというニュースを聞いたとき。藤沢市で<昨年12月、2年生の理科を担当する男性教諭(39)が、後期中間試験の採点を期日内に行わず、生徒や保護者に点数を通知する「成績カード」にでたらめな点数を記載していた>(読売1月21日)。
 この教諭、<「部活動が忙しかった」として採点に取りかからず、2年生161人全員の点数を過去の試験結果などから推測し、9日に成績カードにパソコンで入力、12日に生徒に配布した。>という。もちろん帰ってきた答案用紙の点数と「成績カード」の点数が違うので発覚したというお粗末。

 このニュース、二日間に渡って各紙各局とも取り上げた。確かに点数の「偽装」は褒められたことではないし教育上よろしくない。ただ、耐震強度偽装や米牛肉偽装(前者は骨抜き、後者は骨抜かずの犯罪だ)のような命にかかわることではない。これほど大きく取り上げられるのが不思議だ。答案が返却されるテストであるから、そうでない例えば入試などの偽装と違い、バレるまでの時間稼ぎをやったに過ぎない。

 「階段教授」と「”部活動命”先生」の違いは何だろう。「罪」としては「階段教授」の方が重いと思うが、「採点」の方法は「階段教授」の方がはるかに”優れて”いる。それは、「採点」が迅速ということもあるが、もっと本質的な問題、つまり得点の分布が、「教授」の方は”実際”に近い「正規分布」(冒頭のグラフのような)を示すはずだが、「先生」のように「過去の試験結果などから推測」して人為的に点数を決めた場合は、「分布」に非常な偏りが現れる。だから照合することなしにその分布だけを見て簡単に偽装を見破られてしまう。あるいは「採点」結果がトータルとして非現実的とも言える。
 小生としては、むしろこの「理科の先生」の、統計学の初歩も忘れ去っている?その「学力」が心配だ。クラブ活動ばかりに熱中しすぎているのでないかと。

◆正規分布と偏差値ー計算方法のおさらい

 同一集団での身長や体重の分布、また平等な社会での所得の分布、50m走りの記録、学校のテストの成績などは、経験的に上に掲げたような分布、つまり「正規分布」になると言われてきた。だいたい「平均値」の周りに「人」が密集する。山の一番高いところの付近にいることで、多くの人が「自分は人並み」という安心感を得る。いわば日本人好みが「正規分布」なのだ。

 統計学でも一番基本的な分布であるこの「正規分布」の理論をいわゆる進路指導に活用したものが、日本人なら誰でも知っている「偏差値」だ。実はこの「偏差値」は日本独自のもので、東京都港区の中学校教諭であった桑田昭三先生が、1957年に進路指導を数値を使って正確にやるために開発したものだ。
 ちょうど平均点なら偏差値は50になり、科目ごとの平均点の違いなどが隠れて自分の相対的な順位が容易につかめるというメリットがあったため、この偏差値は全国の学校に拡がり、特に1965年に旺文社がコンピューターで計算した「偏差値による大学ランキング」を公表したことから瞬く間に認知された。以降、日本では受験と偏差値は「政治とカネ」のように堅く結びつくことになった。

 偏差値を計算するにはまずすべての得点のデーターから標準偏差σという値を計算する。σは直感的に言えば得点の「散らばり具合」を表す指標である。国語のように点数の散らばりの少ない科目ではこれが小さく、数学のような科目では大きくなりがちである。昨年の「大学入試センター」の結果では数学Iでσ=24.02, 国語Iでσ=17.65(100点満点換算)である。

 全体の平均点をμとすると、ある人の偏差値は次の式で計算される。偏差値=(その人の得点-μ)×10÷σ+50  例えば上のセンター試験の「数学I」では平均μが51.86点と公表されている(科目ごとのμとσはセンターから必ず公表される)ので、例えば 90点を取った人の偏差値=(90-51.86)×10÷24.02+50。つまり65.88。0点でも、28.41。100点でも70.04だから、100点満点のテストの点数よりも数字的には「幅」が小さくなる。平均点が同じでも、σが違うと偏差値は異なる。例えば上の「国語I」が偶然「数学I」と平均点が同じであったとしても、90点の人の偏差値は71.61になる。つまり国語の方が同じ90点でも「成績が良い」ことを意味している。

 この偏差値の計算法で分かるように、偏差値を絶対的な比較に使うことはできない。つまり「オレ得点55点、お前50点。オレの方が1割成績がいい」は正しいが、この得点を偏差値に置き換えて議論してもも意味がない。これは同じ考えで数値化している「知能指数」(たぶん桑田先生はこの計算方法を参考にしたのだ)についても同じことが言える。「偏差値」が平均を50としているように、「知能指数」では平均を100としている。だから「オレ知能指数150,お前100。オレの方が50%頭いい」という人の知能は高くないと言うか、全く数値の意味を誤解している(そもそも「50%頭いい」という比較が無意味だが)。

 「偏差値」から得られる数値的な情報は、実は自分の「順位」、つまり「分布」のどのあたりにいるかということだけなのだ。そしてその大前提には成績の分布が「正規分布」であることが仮定されている。つまり実際には試験によって、成績が二極化した「らくだのこぶ」型の分布になることがある。この場合にも、「偏差値」はもちろん計算できるが、「順位」はデタラメになり、つまり「偏差値」を基にした「進学指導」は崩壊するのである。
 このことを逆にとらえて、「試験の成績が正規分布をしているからいい問題だった」と主張する先生がある。大学入試センターの問題の「適切さ」を「証明」するのに、成績分布が美しく正規分布をしているグラフを示されたこともある。「階段教授」の「採点」が「合理的」と言ったのは、恐らくこの分布が「正規分布」になったであろうからだ。しかし「適切」とは言えないだろう。

◆「正規分布」社会にサヨナラ-勝ち組/負け組の「ラクダ分布」社会へ

 日本の「進学指導」に神のように君臨し、いわば「神学指導」の域にまで高めた偏差値だが、その賞味期限は終わりを迎えつつある。第一の大きな理由はもちろん少子化だ。これまでのように大学や高校が受験者を選ぶ時代にこそ、「偏差値」による生徒の”輪切り”は有効だったが、生徒の方が学校を選ぶ少子化の時代には笑止千万なただの数字だ。

 しかしもっと大きな理由は日本が急速に<「正規分布」社会>でなくなりつつあることだ。日本は長い間「同質社会」であると言われてきた。同じ程度の収入、同じような価値観、つまり「平均的」な人が圧倒的多数を占めるという、正規分布のグラフで言うと、平均μの周りに押し合い圧し合いしている、標準偏差σの小さい社会。当然子供たちの成績の分布も典型的正規分布になり、「どんぐりの背比べ」なので競争も激しかった。選択肢の少ない社会と言えるが、周りを見渡して、「まあ人並み」と正規分布の”山”の中心にいることで安心感を得ていた安定的な社会でもある。

 しかしいわゆる「小泉-竹中改革」路線は、日本社会を「勝ち組」と「負け組」に積極的に分化させ、正規分布から、「らくだのこぶ」分布社会へと変えようとしている。所得で言えば、平均値μの周りにはほとんど人がいなくて、大部分の人はそれよりもはるかに貧しい。それは「六本木ヒルズ族」のような人達がμを「右側」に移動させているためだが、圧倒的多数にとってはμさえ高根の花という明治以降の日本人が知らない社会になろうとしている。「平民社会」から「貴族社会」への移行と言ってもいい。

 親の収入格差は子供の学力格差に直結する。もはや全国学力テストでは成績が「正規分布」することなどあり得なくなるだろう。「正規分布」を前提にしてきた「偏差値」はその意味を失う。「勝ち組」の子弟は「勝ち組」学校に”自動的”に進むので、進学競争はなくなるだろう。現在の憲法が続く限り、法の下の平等は継続されるが、「身分」の違いは歴然として、例えばイギリスのような階級社会になっていくのだろう。

 そう考えると例の「階段教授」が許容されていたわけも分かる。戦前の「帝国大学」は貧しいが前途有為な子弟を”国策を担う”人材として吸収するための装置だった。その中での”民主的な”「採点」は許容の範囲内である。しかし身分社会(日本では政治の世界はすでにそうなっている)においては、自動的に「正規分布」となるような”急進的な”採点方法は御法度である。「階段教授」は今後は「シュギ者」と見なされ、、突然検察の家宅捜索を受け、ワイドショーで叩かれて、国会喚問に呼び出されるような罰を受けるに違いない。そうだ、あの時の点数は風任せだったが、これからの日本では点数もカネ任せになっていくのだ。

IT時代のガサ入れ「傾向と対策」:livedoor事件

2006-01-20 12:51:13 | 不祥事
 もちろん検察がホリエモンの首を狙っている事は言うまでもない。ガサ入れの仕方でそれは判る。
 宿敵の亀井静香はもう鬼の首を取ったようなコメント。「次なる敵はヤツを刺客に仕立てた小泉信長にあり」とボルテージを上げている。「お前らなんて買収してやる。右翼活動なんてゼニにならんことは止めろ」と言われた産経新聞などは、連日コラムでもう手の舞い足の踏むところ筆の赴くところも知らないというはしゃぎようだ。
 建前の「社会正義」とは別に、ホリエモンのこれまでのコメントが検察魂に火をつけてしまったのだ。曰く、「法と制度の不備」。本人はそう思わなくても、検察には挑発と映る。「なめるんじゃねぇ!若造!!」というのが検察の気持ち(と言うか、内部では実際そう声に出しているはずだ)。

 今回のガサ入れの「政治的」狙いや、ホリエモン的なるものについて小生も興味津々ではあるが、それはすでにA級ニュースの範疇だ。ここでは「BC級」的な別の観点から論じてみる。
 それは「IT時代のガサ入れ」についてだ。

◆「敵はサーバーの中にあり」

 「東京地検特捜部は証拠隠滅などを恐れ、通常は方針決定の翌日に行う家宅捜索を、数時間後に強行する異例の捜査態勢を取った。」(毎日1月18日)。「パソコン計約100台、電子メール約10万通などの電子データを押収した。」(共同1月20日)というから、IT企業にとっては商売道具をごっそり持っていかれたわけで、これだけでも企業に打撃を与えることが出来る。
 予兆無しに会社とりわけサーバーを急襲したことは、今後IT企業のガサ入れの手本になるだろう。これまでのように文書を「ダンボール箱数百箱」分も押収するというのは時代遅れで、これからはコンピューター、その中のデーターだ。また社内のやり取りはサーバーを介して行われるため、その記録(ログ)は必ず残る。今回の検察の捜索も、その消しにくい(と言うか通常の業務では消さない)サーバーのログを入手する事が最大の眼目だった。
 実際今回の捜索で「社内ネットワークのサーバーからデータが消去された形跡は見つかっていない」(共同1月20日)というから、急襲の意味はあったわけだ。

◆消しても「消えていない」パソコンのデーター

 急襲とは言え、ガサ入れから押収までのタイムラグを利用して、ライブドアの幹部達はヤバいメールの消去を図ったようである。ただその消し方がOS(Windowsとか)の機能を使った通常の削除の場合、それはいわば「目次」を消しただけで「本体」は残っているので、特殊なソフトを使えば復元される可能性が高い。昔からパソコンを使っている人なら、MS-DOS(Ver6以降)ではdeleteされたファイルを元に戻すundeleteなる機能があったことを覚えているだろう。だから「データが不自然に失われ、隠すために消去した痕跡が多数あることが判明」(共同1月20日)したから、「専門家などの協力を得て、データの復元も図るとみられる。」(毎日1月18日)となるわけだ。

 もちろん「IT企業の幹部」がそんな基本的なことを知らないはずはない。ただ今回の場合、ガサ入れは「想定外」だったので、メールなども通常の削除で済ませていたはずだ。ライブドアのようにヤバイことを日常的にやっている企業では、こまめなデーターの完全削除を徹底しておかねばならないが、舞い上がってしまって「光秀」特捜部の急襲を「想定外」にしていたホリエモンの未熟さがあだになった。
 逆に検察の側からすれば、これまでのようにまず事情聴取から始めていたのでは、ヤバイと思った企業側に特殊なソフトを使って完全にデーターを消滅させられてしまう。これからの検察は隠密の内偵と急襲が本質的に重要になってくる。

 ところでサーバーを押収されたのに、livedooorのWebは生きている。それどころか、今日もlivedoorのメルマガは配信されていて、<ホリエモンが泣き言「大変なことに…」>なんて記事も載っている。そしてホリエモンのBlog「livedoor 社長日記」も継続されており、この点は最低の責任は果たしている(「山崎えり子」も少しは見習ったらいい!)
 これによると、「パソコンが押収されたのですが、データを全部コピーすることは認めてくれたので、当社のスーパー何でも屋のS君が新しいノートPCに全部コピーして動くようにしてくれた」(1月17日)とホリエモン自身が書いている。「特捜部は今回の捜索でサーバー内のデータを記録媒体にコピーして持ち帰った」という朝日新聞1月19日の記述は逆だということになる。

◆独自ソフト開発と政界工作を怠る

 今回の事でホリエモンが学んだのは、データー削除作業の重要さだろう。マネーゲームに現を抜かして彼らにとって死活的に重要なソフトの開発を怠ってきたつけがまわって来た。
 そもそもライブドアというのはいわゆるM&Aで大きくなってきたので、あまりIT企業という印象もないし、それらしい商品も出していない。唯一の例外は等身大のホリエモンフィギュアが誇らしげに掲げている「弥生会計」だが、これとて最近買収したばかり、自身で開発したものではない。

 ライブドアの今後は全く不透明だ。産経とは反対に日経はホリエモンに好意的なのだが、本日のコラム「春秋」で、吉野家の例を引いて再起を促している。小生の予想では、ホリエモンがしぶとければ、「敗北」から学んだ独自開発ソフト「消しえもん」を売り出すことだろう。

 ホリエモン自身がTVCMに出演してこう呼びかけるのだ。
 「ヤバイ商売をしている企業の皆さん。ヤバイ口利き、ワイロを知られたくない政治家の皆さん。あなたのパソコンのヤバいデーターを検察官からお守りするのが”消しえもん”です。データー削除の際に”ヤバイ"ボタンをクリックするだけで、データーを完全に消し去り、検察に押収されてもどんなソフトを使っても、決して読まれることはありません。万が一検察が突然家宅捜索に来ても(横から検察官乱入)、あっ、特捜部の皆さんまあお茶でもどうです。と時間を稼いでいるこの瞬間に、”非常にヤバイ”ボタンをクリックすれば大事なデータを完全に消し去る機能もあります。塀の中に入らないためにあなたのパソコンの中に”消しえもん”。検察官諸君、君たちの家宅捜索は完全に”想定内”だ。ハーハッハッハッハ・・・」

 まっ、こんなの流せば別件逮捕確実ですけど、ライブドアの「蹉跌」の隠れた原因は実は「政界工作」を怠ったことだ。自民党の方から選挙で「工作」されたことはあったが、その「お返し」をやっていれば東京地検の対応は全く違ったものになったはずだ。
 それをやらなかったのはホリエモンがクリーンであったからでなく、日本社会の仕組み、とりわけ「ウラ社会」の存在を軽視していたからだ。話は佳境に入り、日本社会の深層に切り込む展開となったが、もうこれは「超A級」ニュースの世界に入り込むことになる。従って本Blogではここで追求を断念する。残念!

【追記 2006.1.25】

 25日の産経新聞に押収したデータが専用ソフトを使って削除されているものが5万通になるという記事が出ている
 この市販の専用ソフトはデーターの中味を乱数で置き換えてしまうため、復元は不可能になる(はずだ)。
 ただ、これは独自開発ソフト(「消しえもん」のような)でないため、かなり使いにくかったはずだ(だから「消し忘れ」がある)。ライブドアが本当の「IT企業」であったら当然独自開発したものを使っていたはずだ。やはり指摘したように「原点」を忘れ、マネーゲームにうつつを抜かしたしっぺ返しを受けているのだ。

「副検事」を強姦未遂で逮捕:仙台地検

2006-01-06 12:14:29 | 不祥事
 「事件は”現場”で起こってるんじゃない。仙台地検の中だけで起こってるんだ!」と怒ってる青島刑事の声が聞こえそうだ。 河北新報1月5日
 そうだ、事件を1センテンスでまとめると:仙台地検は4日、仙台地検の女性事務官に対する強姦未遂で仙台地検に告訴があり、仙台区検副検事を逮捕して、仙台地検で捜査を開始したと、仙台地検で発表した。

 猥褻メールを職務中に女性に送っていた判事のニュースを忘れる暇も与えず、今度は「正義の味方」検察のまたしても性的不祥事。今後日本の司法には「性器の味方」という新たな称号を授けたい。今回の方が悪質だが、この副検事・・・還暦ですよ。「人間下半身から衰える」というのがどれほど謬説であるか分かろうというものだ。

副検事は加害者の「味方」

 ところで副検事ってなんだ?偉いのか? エライかどうかはともかく、上に掲げた検察の階級表を見て欲しい。普通の検事の1ランク下になる。ただ検事以上と全く異なるのは、「副」はいわゆる法曹身分を持っていない。つまり司法試験に受かった人ではない。この副検事も「検察事務官を経て1984年に副検事に任官」ということだから叩き上げの事務官という感じ。

 この副検事の場合仙台区検(地検のまあ支部)に勤務していた。区検というのは簡易裁判所に対応するもので、「軽微」な事件、具体的には交通事故などの起訴・不起訴を決める。86年から検察庁の制度が「改革」され、多くの副検事が「交通部」に回され、通常の刑事事件は検事が、交通事故は副検事が担当する事実上の分業制になった。
 しかしこれは加害者に嬉しく被害者に悔しい改革だった。交通事故の起訴率が改革前の73%(通常の刑事事件と同じ)から、12%に激減したのだ。つまり副検事が扱った時点で不起訴内定という無茶苦茶な数字なのだ。

 なぜ副検事が起訴を嫌がるかというと面倒だからだ。裁判になると自分が法廷に立って立証しないといけない。司法試験を受けていない自分が、それにパスした弁護士と渡り合わねばならないことが起こりうる。それを避けたいから、当然のごとく不起訴処分となる。
 だから書類「審査」だけで遺族にはそもそも会わないという副検事も多く、会っても「示談にすりゃいいんだよ」てな対応で遺族の心を傷つける。副検事も検察の一員なので、「検察の独立」を楯に、とんでもない”不良品や欠陥品”があっても、外部の検査や監督から守られている。交通事故被害者は異口同音に「副検事は二次被害の元凶」と繰り返しているが、改善されていない。
 もちろん「エライさん」例えば、与党政治家の子弟が被害者になった場合はこれは全く扱いが違うというより、そもそも検事自身が出てくるはずだ。だから政治家がこの不備に気付くことがないのも改善されない原因だ。

 今回の副検事もだからこれまで多くの交通事故遺族を泣かしてきたことは間違いない。部下の女性の気持ちを一顧だにしない強姦魔が、見ず知らずの他人の心情を理解しようとするはずはないからだ。
 しかしこの副検事、あれほど嫌がっていた「司法試験合格者」との法廷での対決の可能性が高まった。ただ、どうも素直に罪を認めないような気がする。医師資格がないのに8年間も「診療」を行ってきた偽「名医」の話を覚えておられるだろう。「門前の小僧」でいつの間にかプロの技を身につけていた。この叩き上げの副検事も、法廷戦術や検察の弱みなどをつかんでいるかも知れぬ。今回の強姦未遂もここまで読んで、つまり「ふん若造、お前らに俺が起訴できるか」という不遜な気持ちでやったのかもしれない。

 とにかく極めて「内部的」な事件がこのように公になって逮捕に及ぶのは異例だろう。通常は「もみ消し」だ。被害者の心情を慮らないのが検察の習慣だから。結局不起訴ということにならないか、厳しく監視しなければならない。